ハズレ属性「光魔法」を鍛えたらレーザーが出ました

LA軍@多数書籍化(呪具師200万部!)

第1話「騙されたハズレ属性(プロローグ)」

「ははは! 馬鹿なやつだ。まんまと騙されやがって!」


 ニヤリと笑う大賢者アグニール。

 手に入れたばかりの「死霊王の杖」をこれ見よがしに掲げ持つ。


「言ったでしょーコイツならチョロいって、キャーハハハハ!」


 そう言ってアグニにしなだれかかるのは孤児院仲間で幼馴染のサーヤ。

 火魔術師らしく、放熱用の露出多めの魔導服でケラケラと笑っている。


「では……あとはよろしく頼みますよ──ライト君!」


 あーっはっはっはっはっは!!


 そう言って大笑いしているのは、孤児院の神父で僧侶のジョブをもつ、ライトやサーヤにとっては先生であり、親代わりでもあった人──ネトーリ神父だ。

 もっとも、ちっとも好意を感じたことはなかったけど──。


「お、お前ら……! お前ら──このために俺をぉぉお!!」


 そして、くだんの青年ライトは、トラップにはまり身動きができなくなっていた。

 なんとか唯一の魔法『光魔法』だけを頼りに、群なすアンデッドに立ち向かっているも、押し切られるのは時間の問題だ。


「そうとも、サーヤとネトーリからお前のことを聞いた時、コイツしかいねぇなと思ったのさ」

「うふふ。無駄に魔法Lvだけは高いのよねーライトって。──……だから、ここ、『死霊王の寝所』をクリアするために誘ったんだよー」


 キャハハと笑うサーヤはアグニ抱き着きながら、「魔力が高いやつが必要だったのよー」と付け加える。そこには、かつて好意を寄せていた少女サーヤの面影はない。孤児院を出てから数年──音沙汰がなかったから、怪我でもしてないかと心配していたのに……。


 どうやら、最初からライトをアンデッドの囮にするためパーティに加入させたのだろう。

 恩返しだとか、幼馴染のよしみだとか色々言っていたが結局こういうことか……。


「その点、あなたはついてますよー! 外れ属性『光』であるおかげで、こうして最強の属性『全』属性を得たアグニ様の役に立てるんですからねー!」


 ぎゃーっはっはっはっは! と下品に笑うネトーリ神父。


「「「じゃーなー外れ属性『光』魔法のライトー」」」


 せいぜい魔力を温存するんだな~♪ と、嫌味つき。


「待て! 待てよ、お前らぁぁぁあああ!!」


 だが、ライトの懇願など無視して、大笑いする奴等が去っていく。

 それを歯噛みして見送るしかできないライトは、今も『光』魔法を絶やすことができない。


『『グルァァァァアアアア!!』』


 魔力と死肉と食らうマナグールにファントムたち。

 そして、それらを統べるアンデッドの王、リッチ。 


『カカカカカカカカカカカカカッ!』


 その耳障りな笑い声が癇にさわってしょうがない。


「畜生……! 畜生ッ!! ホーリーライトぉおお!」


 ホーリーライトは、光魔法Lv6の中級魔法だ。

 一時的にアンデッドを遠ざけることはできるが倒すことはおろか、ダメージすら与えられない光魔法のひとつ。


 それでも、アンデッドに対抗する唯一の手段だ。


 奴らに騙され、「死霊王リッチ」が安置されている棺から『杖』を回収したが最後──アグニールにそれを預けたとたんに無数のアンデッドに取り囲まれてしまったのだ。

 どうやら、ここはボス部屋で、「死霊王の杖」を回収すると、アンデッドが無数に出現する仕組みだったらしい。


 しかも、魔術に長ける「死霊王リッチ」の配下らしく、奴等すべてが魔力を好んで襲ってくる『マナ・・グール』や『ファントム』ばかりだった。


(くそ……あいつら初めからそれを知っていて!)


 変だとは思っていた。なんでしがない下級冒険者でしかない自分を新進気鋭のAランクのパーティ『銀の意志ズィルバー』が勧誘してくれたのか──。

 そして、このダンジョンの最奥まで魔力を温存しつつ、無傷で連れてこられのか……。

 なぜ。無音で動きのない「死霊王リッチ」の杖を取ってきてくれなんていったのか──。


 ああああああああ……!


 畜生ぉぉぉお! 奴等、知ってやがったんだ。

 このダンジョンの罠を。ボスの特性を。雑魚モンスターの好物・・を!


 だから、攻撃力のない『光』属性のライトが魔力が高いことを知り、

 そして、こんな怪しげな勧誘にホイホイとついてきそうな間抜けな冒険者を探していたのだ。


 あのSS級アイテム「死霊王の杖」を手に入れるためだけに……!


 連中はと言えば、魔力を遮断する魔導服を纏って、この場を離れる気でいるのだ。

 魔導服でも遮断しきれない魔力を隠すため、ライトを囮にして──!!


「畜生……。畜生──」


 畜生ぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおお!

 奴等・・の笑い声が遠ざかるのを聞きながらライトは慟哭するのだった。


(死ぬ……。死ぬ……)


 グルァァァアアアアアアアアアアア!!

  ロォォォオオオオオオオオオオオオ!!


聖光ホーリーライト!!」


 それでも、迫りくる死の瞬間を少しでも先延ばしするため、群がるアンデッドを光魔法で遠ざける。

 アンデッドは基本的に光を嫌うから──。


 だけど、

  だけど、

   だけどぉぉおおお!


    『『『じゃーなー外れ属性『光』魔法のライト~』』』


  ギャハハハハハハハハハハハハハ!


 ──……奴らの声が頭の中でリフレインする。

 そうだ、悔しいけど、そうなんだ。……『光』は外ハズレ属性と決まっている。






 なぜなら……。

 いくら鍛えたって光属性魔法には攻撃力がない・・・・・・のだから!!


『『『グルァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』』』






 う、う、う、

「……うわぁぁぁぁあああああああああああああああああ──!!」



 ホーリーライトの防壁が打ち破られようとするその瞬間、ライトは過去を思い出していた。


 まるで走馬灯のように………………。

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