第10話
歓迎会の帰りのことだった。
バージルアパートの住人たちは、それぞれ、買い物や用事があるので、歓迎会をした中華飯店で、解散した。コウガ、クマタン、フローラ、エレノアの4人は、バージルアパートに戻ろうとして、歩いていた。この時に限って、クマタンがわがままを言って、コウガの肩に乗るのをせがんだ。コウガは仕方なくそうした。クマタンは、うれしそうだった。
その時だった。急に物陰から、盗賊らしき5人が現れた!手には、斧、槍、ソードをてんでに持って、構えている!恐ろしい面構えの面々だった!
コウガは「ヒエェェェェェ!!!」
クマタンは「ギャーーーーー!!!」
フローラは「キャーーーーー!!!」
同じくエレノアは「キエェェェェェ!!!」
4人一斉に叫んだ!
フローラとエレノアは素早くコウガの後ろに回って隠れた。
コウガは「僕に人柱になれって言うのかよ!どこにも武器が無い!僕こそ誰か助けてくれぇぇぇぇぇ!!!」
コウガはその辺を見回したが、武器に代わるような代物は、どこにも見当たらなかった。
絶体絶命の大ピンチだった!
木の陰で、この様子を伺っている人物がいた。リュウジンバーガーの常連客のクラインだった。
なんと、クラインは、棒切れを持って、コウガたちの傍に走り寄った。
クラインは、勇敢にも、その棒切れを振り回して、弱そうな盗賊の子分の男1人を狙って、向かっていくと、棒切れで、子分の頭部を打ちつけた!
クラインは、一応、弱そうな子分を選定した。
ひるんだ男の槍を奪い取ると自分の膝で折った。そしてクラインは「暴力反対!!!」と叫ぶと、どこかに走って逃げて行った。
子分は「畜生!やりやがったなー!」
コウガは「クラインさん!どこに行くのー?中途半端にこの人たちを怒らせてるよぉぉぉぉぉ!」続けて「クラインさん、なんでそんなとこにいたんだよ!?仕事はー?」
コウガは、気が動転して、どうでもいいことを尋ねていた。
クラインの思わぬ攻撃に面を食らった
またしても、今度こそ、最大の絶体絶命の大ピンチだった!
この時だった。リュウジンバーガーの上得意客のマサムネが、無言で、おまけに、涼しい顔で、スタスタと歩いて、かっこよく現れた!キマっていた!手には刀をかざしている!まるで、時代劇の主役のようだった。
この時とばかりに、コウガの肩に乗っているクマタンがピューピューと指笛を吹いて「いいぞー!!!」と応援した。
マサムネは「ありがとう!!!」とクマタンに礼を言って、運転中に道をゆずってもらったりした時のように、片手を上げた。
盗賊の頭は「お取込み中のところ、失礼します!ついでに、かっこよく登場したあんたにも、死んでもらいます!」
マサムネは「問答無用じゃ!」と言い終わるのと同時に、バッサバッサと盗賊の頭はじめ、盗賊5人を瞬く間に、成敗した!
クマタンは「RIPだー!瞬殺だー!スゲー!」
盗賊たちは「うううううう・・・。苦しい!」
マサムネは「安心しろ!
峰打ちとは、刀の背面の部分で相手を叩くことだった。相手を殺さずに倒す手段である。
クマタンは「マサムネ屋!男の花道!かっこいいぞー!決まってるぞー!」
盗賊たちは、頭はじめ、風のごとく逃げ去った。
コウガは「マサムネさん、おかげさまで助かりました。ありがとうございました!!!地獄に神様です!ありがとうございました!!!」
コウガは深くマサムネに感謝した。フローラもエレノアもありがとうございますを何度も繰り返していた。
クマタンは「さすが、マサムネ屋!」
歌舞伎の観劇における合いの手(掛け声)のようだった。
マサムネはまんざらでもなさそうに、無言で、うなずいていた。
マサムネは「では、これで、御免!」と軽く手を振った。
マサムネは寡黙だった。そして、ゆっくりと歩いて、どこかに行った。
コウガは「正義のヒーローだったな!命の恩人だ!」
クマタンは「急に盗賊が現れたので、ビビったなあ!僕は、コウガを守ることしかできなかったよ!出る幕はなかったなあ。」
フローラは「あんた、肩車されてただけじゃないの!」
クマタンは「うるさい!役立たず!」
フローラは「あんたこそ!」
クマタンは「お前こそだ!」
またしても、いつもの小競り合いが始まった。
コウガはマサムネのことを正義のヒーローだと思っていた。
しかし、マサムネは心の中で、“貸しを作ったから、今度、リュウジンバーガーに行ったら、タダでチーズバーガーセットぐらいはゲットできたようだな。”と、ほくそ笑んでいた。
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