第6話

翌朝、開店前にクマタンは、一仕事だ。コウガより早く起きた。


クマタンは、エプロンを付けた。エプロンには文字で“闘魂”と記されていた。


アパートの裏側の空き地で、クマタンは「よっしゃー!」と気合を入れた!


まず、たらいに水を張り、洗濯板で、洗濯物をゴシゴシと洗い、軽く絞ると、たらいの水を捨て、きれいな水を入れ替えた。今度は、すすぎだ。すすいだ洗濯物をきつく絞り、バケツに次々と投入した。


次は、絞りだ。洗濯物を薄く伸ばして、隙間の空いたローラーに入れて、クルクルとハンドルを回すと、脱水した状態の洗濯物が出てくる。


この簡易脱水機は、フェリックス博士70歳に作ってもらった。同じバージルアパートの住人で、バージルモール内で時計屋を営む。


クマタンは、ロープに洗濯物を手際よく、次々と干していった。


コウガが起きてきた。


少しして、コウガとクマタンは、野原に出かけた。


クマタンは、ラズベリー、いちご、ブルーベリー、クランベリーを見付けて、摘んだ。コウガも手伝った。次に、落ちていた木の実を拾った。


クマタンは「ありがとう!上出来!上出来!」と大満足だった。


明るい日差しに照らされて、コウガとクマタンは、幸せな気分に包まれていた。コウガは異世界のスローライフを堪能していた。


2人は帰宅した。


朝食の支度だ。クマタンは、エプロンをチェンジした。いつも料理の時に使用している“料理命”と書かれているエプロンだ。


今日の朝食は、ハムエッグのほうれん草添えとトーストだった。


クマタンは、手際よく、ハムエッグを焼いた。ほうれん草もきれいに洗い、軽くゆでると、ほうれん草ソテーにした。そして、トーストは焼くと、バターとマーマレードジャムを添えた。


クマタンは、摘んできた果物を手早く洗い、それをガラスボウルに入れると、木の棒でつぶし、ミルクとあえて、スムージーを作った。木の実は、軽くつぶし、ほうれん草にトッピングした。


ちょうどいい頃合いにフローラとエレノアがやってきた。


そして、朝食を食べることになった。


この時も、いつも通り、コウガとクマタンは横並びに座った。


コウガは「ハムエッグやほうれん草、めっちゃうまいねー!塩加減がいい頃合いだよ!ナッツもいい感じ!スムージーも、新鮮でうまいね!トーストもサクッとふわふわで、バターやジャムが甘辛で、後を引くよ!ねえ!フローラ!エレノア!」


この時も、コウガは、対面で座っている2人に声掛けをしたが、2人は、食べることに夢中で、聞く耳を持っていなかった。


コウガは「クマタン、それにしても、このほうれん草のソテー、マジでうまいね!日本では、以前、ほうれん草が、固いことが多かったけど、苦も無く食べれるよ!これも、クマタンのおかげだよ!」


クマタンは「喜んでくれて、うれしいよ!いつも、ほうれん草は、土が付いているので、気を付けて洗っているよ!知り合いのおじいさんがよくぼやいていたよ。“嫁がほうれん草のお浸しを作ってくれるんだが、土がほうれん草に付いていて、口の中で、じゃりじゃりと、いうんだよ。”と言うのをよく聞かされたので、気を付けているよ!」


クマタンは、それで、ほうれん草の洗い方、調理方法にはこだわりがあった。


コウガは「さすが!クマタンだね!」


クマタンは、褒められて、謙遜気味に「いやぁ~、それほどでも~!」と片手を自分の頭に回して撫でた。

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