第10話 熟練度が正確に上がる
「娘には手を出さないで!」
「出してませんよ? 触れてませんし⋯⋯何より、そんな約束した覚えないですよ?」
振り返りながらあっけらかんとした様子で私は呟いた。
《一定の熟練度に達しました。スキル【脅迫】が獲得可能になりました》
《一定の熟練度に達しました。スキル【交渉】が獲得可能になりました》
きょ、脅迫って。
まぁ間違ってはないかもしれない。
なんとも言えない感情に苛まれる。まぁきっと感謝されるから。
「さぁお嬢ちゃん。このナイフであのゴブリンを殺せ」
「で、できないよ。そんなのできない!」
顔を横に振りながら無理だと答える娘さん。
まぁ子供だし、命を奪うと言う行為は出来ないのだろう。私達が別なだけだ。
命を奪わないと生きれないと言う環境を少しばかり知っている私達だから。
私だって心苦しいさ。子供は好きだしね。
だからこそ、心を悪魔にしてでもやらないといけないんだ。
「出来ない出来るじゃない。やるんだよ。殺れよ!」
「わ、私がやります。やりますから娘には⋯⋯」
アオさんはまだ体を伸ばす事が可能であり、母親も縛り上げる。
私が視線で合図すると口の部分を開けて体を強く締める。
当然、痛みに悶え始める両親二人。
その二人が出す絶叫が彼女の恐怖心を煽り、過呼吸にして涙を流す。
「殺れ」
短い言葉でも何をしたらいいのか分かっている事だろう。
今の言葉には凄さばかりドスが効いていた気がする。猫被って学校生活していた時には考えられない低い声。
震える手でナイフを受け取り玄関で踏まれているゴブリンを見る。
震える瞳を見ていると⋯⋯心がグサッと痛む。
《一定の熟練度に達しました。スキル【嘘つき】が獲得可能になりました》
《一定の熟練度に達しました。スキル【演技】が獲得可能になりました》
ゆっくりとゴブリンに歩いて行く。
スズちゃんが足からゴブリンを解放して、ゴブリンは女の子に向かって突き進む。弱いから倒せると判断しての行動だと、その目を見れば分かる。
その眼光に怯えた女の子は尻もちを付いてただ泣く事しか出来なかった。
私は手を伸ばしてゴブリンを止めて女の子を背後から包み込む。
そして小さな手に手を重ねて力強くナイフを握らせる。
そして私が無理やりにゴブリンまでナイフを進めて行く。
そして柔らかい感触がナイフから伝わりって来て、ゴブランからは血が流れ始める。
女の子は手を話そうとするが私がそれを許さない。ただ無言で泣き嘔吐するだけ。
ゴブリンが魔石に変わったのでナイフを回収する。
各々泣き叫ぶ一家に私は順番に視線を送って、手を強く合わせる。
パチンっと。
別に大人はどうでも良いが、この子はこの二人が居ないと生きられないのでゴブリンを三体とも連れて来た。
「さて、冷静に頭の中に流れたアナウンスがあると思います。脳内で適当に『ステータス』を開くイメージをしてください。するとステータスプレートが開きます。それがこのさい⋯⋯狂った世界で生き残れる力です。私達が詳細を教えます。なので、少しだけ家を貸してください」
まだ冷静になっていない三人。
スズちゃんはグローブを脱いで懐にしまっていた。そして靴を脱ぐ。
靴は私のアイテムボックスに収納する。
そしてチョコのお菓子を取り出して娘さんに渡す。
私もグローブをアイテムボックスに仕舞っている。
女の子の頭を撫でながら取り敢えず皆が落ち着くのを待つ事にする。
もう脅迫的な演技をする必要は無いのである。
それから数十分の時間を要した。
ジュースとチョコで女の子はすぐに冷静になって、私の膝の上に座っている。
静かなスズちゃんの殺気に怯えているが。
全くシスコンめ。
「冷静になったようですね。アオさん。戻って来て良いよ」
通常サイズとなりアオさんは私のスカートの中に入って来る。
そして足に絡まり腰まで登ってくるまっている。
「変態さん?」
「そうだよ。アオさんは変態さんだよ」
少しだけアオさんの『は?』って言う感じの意志を感じたが無視した。
子供は寄り添う事によって信頼関係が構築されて仲良くなれるのだ。
冷静になった両親と共にリビングに向かった。
ソファーにスズちゃんがすぐにダイブした。アオさんも私から離れてソファーの上に乗った。
流石はあの二人だ。すぐさま順応したよ。
非常識過ぎる行為だが、今更なので気にしないでおいた。
「それでは、先程の続きです。ステータスプレートを出してください」
その後、私は職業やスキルについて説明をして。
各々獲得出来るモノを聞いて、紙に詳細を書き写して行った。
まじで詮索さんは便利だ。
長らく語るのが本当に傷なのだけどね。
「それがこの世界で生き残れる力です。戦闘職なら殺す。生産職ならスキルを使いまくる。この世界で『経験』には『経験値』と『熟練度』の両方を得られる。努力すればするだけ強くなれる。努力が必ず報われる⋯⋯それが今の世界です」
そして親子は自分たちの部屋に行った。家族会議で相談するのだろう。
私達はリビングを使う権利を獲得した。
しかし、絶望はこの後に待っていた。
流石に汗もかいたので風呂に入りたい。
スズちゃんと一緒に風呂場に向かった。電気が使えないのである。
「にしても、詮索さんの言ったモノをひたすら紙に書いたんだからスキル獲得出来ても良いと思うのに⋯⋯獲得段階にもならなかった」
「ははは。残念だったね」
「ほんとだよ」
風呂場に入り直接お湯を入れようとした。
だが、いくら直接やろうとかてもお湯が出なかった。シャワーも出なかった。
私達は急いでキッチンに向かって水道を使うとした。
「うそ、だろ」
しかし、お湯は疎か、水すら出なかった。
風呂に入れないのは死活問題だ。詮索さん。何か、何かないか!
《回答。職業の整備士や建築家などで得られるスキルで使用可能になります》
「他!」
《マジックアイテム『マイホーム』です。それは魔石を消費する事で様々なオプションを付け加える事が可能です。お風呂があります。これは錬金術師が⋯⋯》
「そこはどうでも良い。おっけー。明日からそのアイテムを手に入れる為に動く。風呂に入れないのは辛い」
「だね」
この世界では文明の利器は使えないらしい。私、制服が血でベトベトなのに洗濯も出来ないのだ。
あーそう言えば私、自分のカバン回収してないから変えの下着もないじゃん!
いや、使えるのはある。
圏外なのでスマホの機能は不便だが、ライトは使える。
ソーラーパネル式モバイルバッテリーが一つあるので充電も大丈夫。スズちゃんのカバンの中にあった。
「さて、スズちゃん」
「うん」
そろそろステータスを弄る事にした。
先の戦いで私はレベル7、スズちゃんはレベル10となっていた。
ここで不思議に思うのがスズちゃんのレベルの高さだ。
理由は詮索さんに聞いたら憶測混じりでも答えてくれた。
一つ、私よりも純粋なステータスが低いのなホブゴブリンと戦って多くの経験値を獲得した。
二つ、私よりも優先的に率先的に最速でモンスターを狩っていたので上がりが速い。
三つ、亜種であるレッドゴブリンを単騎で討伐したから。
亜種は倒した時に得られる経験値が豊富らしい。
そしてアオさんはレベル5となっている。
で、私の現在のステータスはこのような形になっている。
名前:水川百合
レベル:7
職P:30
能P:61
HP150/150
MP31/31
筋力:153
敏捷:123
防御:22
知力:23
器用:22
職業:狂戦士Lv9
固有スキル:【詮索】【亢進】
技能スキル:【武芸Lv5】【隠密Lv1】【遠見Lv1】【暗視Lv1】【自己再生Lv5】【気配感知Lv1】【熱源感知Lv1】【アイテムボックスLv5】【悪食Lv2】【立体移動Lv1】
耐性スキル:【打撃耐性Lv5】【斬撃耐性Lv1】【精神苦痛耐性Lv4】【精神攻撃耐性Lv5】【熱耐性Lv1】【ウイルス耐性Lv1】【痛覚耐性Lv3】【火耐性Lv1】【水耐性Lv1】【毒耐性Lv1】【電気耐性Lv1】【落下耐性Lv1】
魔法スキル:無し
強化スキル:【怒りLv3】【狂化Lv5】【斬攻撃強化Lv3】【攻撃力強化Lv3】【HP強化Lv1】【MP強化Lv3】【筋力強化Lv6】【敏捷強化Lv2】【防御強化Lv1】【知力強化Lv1】【器用強化Lv1】【胃酸強化Lv2】
そろそろ他の初期耐性スキルを獲得して良いかもしれない。
後、まだかな【空腹耐性】?
獲得可能段階にも入らない。
⋯⋯さて、地味に職業のレベルが10に入る。
「じゃ、ちょっくら集中してやりますか」
「だね」
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