放出
初めての四者面談は実にスムーズにいった。サーラは意外にもおっとり系かつしっかり者であった。
一方宮崎蘭は作家である。こちらとしてはプライドが高いインテリのイメージを抱いていたのだが、実際にはかなりさばけた人物だった。
確かに変わってはいたが話が通じないとかわけのわからない事をまくしたてるという事もなかった。
言いたいことは歯に帰せずズバズバと言うが嫌味な感じはしない。偉そうな感じもしなかった。
2人とも実に気さくな人物だった。有名人としては珍しい部類だと思う。
そのおかげか3人はすぐに意気投合した。だが実の所、俺は少しばかり気後れしてはいた。気の強い女性3人に囲まれると何か無言の圧力を感じたような気がしたのだ。
未だに手に入れにくい据え置き用ゲーム機PS5。
だが当メンバーの保有率は高い。俺を除く3人が既に所持している。
勿論ニンテンドースイッチやXBOXシリーズXも持っている。
だが委員長である俺は、、、、スイッチこそ持っているものの、PSは4、XBOXに至っては360という体たらくだ。
これではメンバー(3人だけだけど)に示しがつかない。
でも言わせて、、、、購入する金がない。金がないのよ。
ここは資本主義が横行する美しい国、日本。
金が無ければどうしようもない。
かといって体を売るつもりもない。いくら俺が美青年でも(ウソ)男に尻を奪われるのだけはゴメンだ。
だからこのアジト兼職場兼趣味場である委員会事務所に最新ゲーム機を備えるという議案を会議にて提出したのだ。当然受け入れられると思っていたのだが、、、、
公私混同と受け取られ、俺は責められた。
おっと、責められたといっても委員会内でSMショーが開催され俺がM役を一身に引き受け、女たちに責められまくられたってんじゃない。
そこのところだけはハッキリさせとかないとな!
結局事務所内で携帯ゲームに耽るわけにもいかず(なにせここは据え置きゲーム推進委員会なので)
据え置きゲーム機を何台か購入する事になった。
バンザーイ!でもさ、、、、ハッキリ言って責められ損じゃねえか?チクショー!
メンバーミーティングと称した購入検討会議が始まった。
「転売屋並びに転売ヤーからはずぇったいに買わない!」
これはメンバー全員の総意だった。清く正しく美しくが俺達のモットーだ。
珍しく意見が統一されたのはよいが、そうなると購入するには抽選しか方法がない。
「どうせなら最新ゲーム機を揃えよう!」
凛音の気合の入った掛け声に2人のヘビーゲーマーが声を揃える。俺?俺は2人に入ってない。だっておれヌルゲーマーだもの。
・新型スイッチ(有機ELモデル)
・PS5
・XBOXシリーズX
これら3機種を購入し委員会室に備え付け24時間ゲーム三昧!
それが俺の描いたプランだ。委員会室兼アジトは俺にとっては住居でもある。上手くいけばゲーム漬けの日々が!ヒッヒッヒ!
まるで源平討魔伝のイメージキャラクター安駄婆が言いそうなテイストだ。
ありがたや。
問題は入手経路だが、、、、どの機種も未だに入手困難な状況が続いている。世界的な半導体不足がその理由だ。
しかも日本はゲーム先進国なのに据え置き型ゲーム機の割り当てが少ない。由々しき事だ、まったく。
結局地道に抽選に応募し続けるしか手はなさそうだ。家電量販店に一日中張り付くという手もあるが時間がかかり過ぎる。
「まかしといて。私、くじ運は抜群にいいんだから!PS5もXBOXエックスも一発で当たったんだよ!」
そう吠える璃音。だがそうなると、もう運を使い果たしたのではないか?と思わざるを得ない。実際そうなったのだから。
それから数日後、俺が委員会本部に入ると、新たに購入したゲーム機で遊んでいる二人のうら若き女性の姿が目に入った。
だが彼女たちがプレイしているゲームは日本では発売されていない格闘ゲームである。
モータルコンバット。
残虐描写がえげつないアメリカ産格闘ゲームだ。どれくらいえげつないかというと、親族の前ではずえったいにプレイ出来ない程だ。
当然、規制にうるさい日本では発売すらされていない。初期の頃の作品が数作ひっそりと出たぐらいだ。哀しいなぁ。
ちなみにシリーズは11作を数える。今彼女たちがプレイしているのは最新作の11である。
「なんでモータルコンバットなんだ?」
多分サーラの希望だろう。俺は直感的にそう感じた。
璃音が必死になってサーラと戦っている。その様は痛々しくて見ていられない程のものだ。
だって全く歯が立たないんだもの。涙目でコントローラーを動かす凛音の姿はある意味見ものだった。
でもそうなるよなぁ。だってサーラは超絶上手い。プロゲーマーでもあるからね。
ちなみにサーラの使用キャラはゴロー。手が4本もある化け物。
こいつはスト2でいえばザンギエフに該当するキャラだ(間違った知識)。
結局新型スイッチ、PS5、XBOXシリーズX、全ての据え置きゲーム機が手に入った。誰が抽選で当たったのか?誰も当たりゃしなかった。
これらのゲーム機は全て家電量販店で並んで購入したものだ。並んだのは誰って?そりゃ俺さ、俺しかいないだろうが!
「私たちは顔を知られているもん。それに女の子だし。だからあんたが行ってきてよ」
つまりそういう事だ。
クソっ!都合のいい時だけ女というジャンルを持ち出すんじゃない!そう言いたかったが多勢に無勢。言えるわけが無い。
それにバイト代を出されたら、、、、断れないっしょ?俺は基本的に金欠野郎!なので目の前に現金をちらつかされると弱いのだ。
せっかくだから入手までの手順を教えてやる。
朝の4:00にイヤイヤ起きた俺は一連のタスク(放尿、洗顔、着衣)をさっさとすまし、アジトを出る。
ふらつく頭を振り振りヨドバシカメラ新宿西店に向かう。辺りはまだ暗い。
え?秋葉原店には行かないのかって?確かに委員会からは近いし放出量も多いのだが、なんせ放出日が少ない!
ちなみに新宿西店は台数こそ秋葉原より少ないが放出日が多い。ていうか、本当の事言うよ。ええ、秋葉原店にも行っておりますわよ。
昔は体を張れたが、年を取った今となってはただ棒立ちになる事しか出来ない元人気アクション俳優のようにただただ列に並ぶ。
辛い、辛いよ。真冬でないのが幸いだったがな。
それに俺意外にも獲物を求める狩人たちが何人かいたからね。
話しかけたかって?とんでもない!自分、基本陰キャでありますから。
で、そんな負のループを繰り返し繰り返し、ようやく、、、ようやく全機種手に入れたのであります!
ちゃんとバイト代も入ったしな。しかもご苦労様です価格。いやぁありがたい!俺の苦労は報われたのだ。
ちなみに彼女たちの懐具合はだって?そりゃもお景気の良い事この上ない!
3人とも同年代のOLの平均年収を遥かに超える額を稼いでいる。
かといって派手な生活をしているわけでもない。なんというか、金に支配されていないんだよ。立派だねぇ。
金に執着しない所は3人に共通している。
結局金欲しい~って強く思い込んでる奴ほど金は入ってこない。金は逃げていくのだ。
俺?勿論早々にトンずらされておりますです、はい。
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