凶星(マガツボシ):Exorcist in the Metropolis

ケン・シュナウザー

序章

 時は1920年代、所は米国アメリカ紐育ニューヨーク

 「狂騒の時代」と呼ばれる程活気に満ち、現代文明渦巻くこの巨大都市メトロポリスでは時々怪異が跳梁跋扈し、人々は恐怖に慄いていた。今日も奇怪な事件が起こる。

 

「暴走車だ!」

 ある時周囲が騒然となった。一台の車がまるで狂ったかのように縦横無尽に走り回る。人や他の車は暴走車から逃げようと慌てふためいていた。

 その時である。


「止まれ!」

 暴走車に向かって一人の男が立ち塞がった。全身黒ずくめの若い日本人だ。

 一人の若い命が暴走車に奪われそうになる。誰もがそう思っていた。ところが、青年が手を前に突き出すと、不思議なことに車が前に進もうとしなくなった。

 それからして、車を運転していた男が現れた。男は羅刹のような形相で、青年に掴み掛ろうと迫ってきた。

「この男に取りついた悪しき魂よ、その姿を現せ!」

 青年はそう叫んで呪文を唱えると、男の体から不気味な化物が現れた。

「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前!

悪魔よ、朽ちて滅べ!」

 青年はそう言いながら両手で印を結んだ後、化物に向かって指を突き出した。すると化物は真っ二つに切り裂かれ、醜い断末魔をあげながら消滅した。


 一連の騒動の後、悪魔に憑かれた男は警察に取り押さえられ、野次馬たちは悪魔を倒した日本人青年についてのひそひそ話をし始めた。

「なあ、アイツが噂の・・・」

「そう、日本から来たという若き祓魔師エクソシストだぜ・・・」


 青年の名は土御門航つちみかどわたる、18歳。

 彼はある事情でこの紐育に来た、若き陰陽師である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る