8:行き当たりばったり
「どうしよう、急に散歩行った?」
リナが我を忘れている。隠していたシリウスが消えたのだから、無理もない。
「落ち着け。そんなはずない」
「だってさぁ……!」
リナはその場に泣き崩れた。俺は辺りを探すが、どこにもシリウスの身体はない。
「あのおじさんの
リナが言っているのはセバスチャンのことだ。
「もしそうだったら、何か言われるだろ」
「私の肩の髪の毛に気づいてたじゃん!」
もし気づかれていれば、魔王城の方が騒がしくなるはずだが、そんな気配は一切ない。
「私、もう一回探してみる!」
走り出そうとする彼女を引き留める。こうなりゃ力ずくで今の状況を打破するしかない。
「待て、シリウスの身体は魂が入らなきゃ意味がない。もう一度奴の身体を作って、最果ての火山に行けばいい。シリウスの身体を探すより、そっちの方が手っ取り早いだろ」
リナは目をパチクリさせる。
「あんた意外と頭の回転速いわね。私がいた世界の会社でもきっとやっていけたわよ」
「それに、お前のその服装は目立つから、街で色々と揃えるといい」
***
世界の半分を知る旅に出るはずなのに、俺はシルディアと魔王城を往復してばかりだ。
「どう? 似合ってる?♡」
「もともとこの世界にいたんだから確認する必要ないだろ。で、必要な物も買って来たんだろうな?」
リナは口を尖らせる。
「ちぇっ。まあいいわ。世界の四分の一は私のものなんだし。頼まれてたやつ買ってきたよ」
リナは台車に
「そういえば、私がいた世界でも人間を作る材料がなんとかかんとか~っていう漫画があったわね」
「そっちでも魔法を使ってたのか?」
「魔法使ってる人はいなかったけど、この世界みたいな所を舞台にしたアニメがあった」
「よく分からんが、今からシリウスの身体を作る。出来上がったらすぐに最果ての火山に向けて出発だから、少しでも寝ておけよ」
「こんな不気味な場所で寝るの?」
「別にお前は宿屋で寝てもいいんだぞ」
「ふ~ん。でもまあ、あんた独りぼっちみたいだし、このリナちゃんが一緒に居てあげてもいいわよ」
「うるさい。早く寝ろ」
「エッチなことしないでよ?」
「早く寝ろ!」
***
翌日、出来上がったシリウスの身体を布に
「最果ての火山なら北の山を抜けた方が早い。行くぞ」
「えっ? 街の人が北の山は黒竜がいるからやばいって言ってたわよ」
「黒竜は俺がボコボコにしたからいいんだ」
渋るリナを引き連れて北の山に差し掛かると、何やら騒がしい。無数の黒竜が空を覆い尽くしていた。見慣れた紋章をつけた軍隊が地上で応戦しているのが見えた。
「ねえ、あれシルディアの紋章じゃない?」
あの兵力じゃここまで来るのは難しいと思っていたが、見くびっていたようだ。とはいうものの、黒竜の群れに軍隊は苦戦を強いられていて、犠牲者も多数出ていた。
「ねえ、早く助けないと!」
だが、俺が生きているとバレる危険性もある。躊躇していると、向こうで雄たけびが上がった。ひとりの男が孤軍奮闘していた。金髪
「あいつ、なんでこんな所にいるんだ!?」
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