第23話 掴む

 空は快晴だ。


 けど、俺の心は、若干のくもり模様。


「ねえねえ、ショータ。あのアイス屋さん、行きたい♪」


 となりに、最高に可愛いギャル彼女(Gカップ巨乳)がいるのに。


 どうしたって、意識をしてしまう。


「うふふ、確かに美味しそうね。私も食べたいわ」


 この微笑みを浮かべる、無敵感満載の美少女こと、佐伯さんが一緒だから。


 この前の、からパでの一件。


 あの光景が、今でも鮮烈に網膜に焼き付いて離れない。


 愛しの彼女が自分以外に、ケモノのごとく絶頂させられていた。


 男にNTRされた訳じゃないから、まだ良いかもしれないけど……


 ていうか、リナちゃんは、何でいつも通り、ニコニコしていられるんだろう?


 やっぱり、ギャルって頭がから……前向きなんだな(本当に申し訳ない)。


 そして、そのからパの風景を動画撮影して、隼士にも見せてやった。


 もちろん、そのエロシーンはカットして。


 だって、俺のリナちゃんのそんなあられもない姿、見せたくないし。


 隼士だって、自分の彼女のそんな卑猥ひわいな行い……見たくないだろう。


「女ってのは、どうして甘い物に目がないんだろうな~?」


「えっ? ああ、そうだね……」


「どした、ショータ? 寝不足か? シ◯り過ぎで」


 確かに、ぶっちゃけ、そのエロ動画で何度かシ◯っちゃったけど……


「……か、彼女がいるんだから、もうあまりシないし」


「いやいや、本番とオ◯ニーはまた別物、別腹だろ?」


「まあ、確かに……って、何を言わせるんだよ」


「アハハ」


 からかわれて少しムカつくけど、隼士のおかげでちょっと気持ちが楽になったかも。


「ショータ、どうしたの~? 早く行こうよ~♪」


「あ、うん」


 そして、俺たち4人はそのアイス屋に行く。


「いらっしゃいませ~♪」


 明るく可愛い女性店員が迎えてくれる。


「えっと、どれにしようかな~?……あっ、これ良いじゃん!」


「どれどれ……カ、カップルアイス?」


 それは、コーンではなく、少し大きめのカップにアイスが盛られていて。


 てっぺんにハート型の、恐らくイチゴアイスが乗っている。


 周りにも、派手なデコレーションがされていて……何てパリピなんだ。


「ショータ、あたちこれ食べたい♡」


「いや、まあ、美味しそうだけど……ちょっと、恥ずかしいな」


「大丈夫だよ。あたしたち、ラブラブだし♡」


 全くもって、ちゃんとしたフォローになっていないけど。


 まあ、可愛いから許してしまう。


「じゃあ、芽衣。オレたちも、それにするか?」


「う~ん……ごめんなさい、私って知覚過敏だから。もう少し、量が少ない物にするわ」


「そ、そうか」


「ぷぷ~、大貫ってば、フラれてやんの、ざまぁ~!」


「あぁ?」


「これはもう、別れるのも秒読みかな~、なんつって!」


「ちょっと、リナちゃん。さすがに言い過ぎだって」


「……ちっ」


 いつもなら言い返す隼士だけど、どことなく不機嫌そうに舌打ちをするだけ。


 結局、俺とリナちゃんはバカップルみたいなアイスをオーダー。


 そして、俺たちよりも大人な(?)2人は、チョコアイスをオーダー。


「ありがとうございま~す♪」


 外に用意されている飲食スペースにて、俺たちはそのアイスを食べる。


「はい、ショータ。あ~ん♡」


「えぇ? ちょっと、周りの目が……」


「もう、チ◯コはデカいのに、気は小さいんだから♡」


「リ、リナちゃ~ん!?」


「えへへ~♡」


「ちっ、これだからIQ3のバカップルと一緒は嫌なんだよ」


「ていうか、何で大貫がいんの? あたし、芽衣ちゃんしか呼んでいないけど?」


「ダブルデートしようって言ったのはオメェだろうが」


「あれ、そうだっけ? でも、やっぱりあんたウザいから。もう帰っても良いよ?」


「何でだよ。そしたら、芽衣はどうなるんだよ?」


「ショータが両手に花になれば良いよ。ねぇ~?」


「えぇ~?」


「……お前、そんなことばかり言っていると、後悔するぞ?」


「何それ、脅し? 夜道に気を付けろ的な? 大貫、サイテーなんだけど~」


「ちげーよ、バカ」


 隼士は額に手を置いてため息をこぼす。


 うなだれる彼氏のとなりで、彼女の佐伯さんは微笑みを絶やさない。


 その笑顔が、何となく怖い気が……


「「あれ、奇遇じゃーん!」」


 高いトーンの声に、俺たちはピクッと反応する。


「って、トモにエツ? あんたら、どうしたの?」


「てか、あんたらダブルデート中?」


「実は、うちらもなんだ~♪」


 言われて見ると、確かに。


 ギャル2人のそばに、イケメンが2人いた。


 もしかして、この人たちが……


「おっ、芽衣ちゃんじゃん」


「どうも、こんにちは。本当に奇遇ですね」


「ああ、そうだな。ていうか……そっちのギャル子ちゃんって」


 イケメンの目が、リナちゃんに向く。


「うおっ、話に聞いた通り。マジでおっぱいデカいじゃん」


「ようやく、巨乳ギャルをはっけ~ん」


 彼らのテンションが上がる一方で、


「……はぁ?」


 先ほどまで、アホみたいにテンションが高かったリナちゃん。


 けど、急に不機嫌になって、ドスの利いた声を出す。


「トモ、エツ。こいつら、何なん?」


「うわ、こえっ」


「でも、そそるなぁ~」


 年上の余裕なのか。


 イケメン大学生たちは、ニヤニヤしたまま、リナちゃんを見ている。


「えっと、里菜ちゃんでしょ? 俺たちと遊ばね?」


「は? 嫌だけど? 彼氏と一緒だし」


「彼氏って、そいつ? 何か、冴えない見た目だね」


「はぁ? あんたら、死にたいの?」


 リナちゃんが睨みを利かせる。


「おいおい、年上には口の利き方を気を付けろよ?」


「泣かすぞ……ベッドの上で」


「はんッ、うるさいよ。どうせ、大したチ◯ポもテクもないくせに。ショータの方が、よっぽど気持ち良いもん」


「……んだとぉ?」


 それまでニヤけていたイケメンが、途端に眉根を寄せる。


 これは、まずい……


「ご、ごめんなさい。リナちゃん、ちょっとご機嫌がナナメで……」


「ショータ、謝ることないよ。こんなチ◯カス野郎どもに」


「テメッ、クソギャルが!」


「そのデカ乳ひきちぎんぞ!」


 イケメン2人の手がリナちゃんに伸びる。


 気丈なリナちゃんは、睨みを利かせたまま。


 でも、少し、怯えたように肩が震える。


 瞬間、俺は――


 ガシッ、と掴む。


「「……あっ?」」


 俺は両手で、イケメン2人の腕を掴んでいた。


「ショ、ショータ?」


 リナちゃんは、そばで少し困惑した声を出す。


「おい、ガキ。テメェ、何のつもりだ?」


「殺すぞ、コラ」


 イケメン2人は、手を振りほどこうとする。


 しかし、俺はがっちりホールドしていた。


「テメっ、離せコラっ!」


「無理です。この手を放したら、リナちゃんにひどいことをするでしょ?」


「そっちが悪いんだろうが。年下の分際で調子こきやがって!」


「大人の余裕を持ちましょうよ。佐伯さんの知り合いなんでしょ?」


「ガキ……テメェの目の前で、このクソ女めちゃくちゃに犯す……」


 ギュウウウゥ……


「「……ぐああああぁ!?」」


 イケメン共が悲鳴を上げる。


「……冗談でも、言うな」


 俺は自分でもびっくりするくらい、低い声が出ていた。


 そして、手には力がみなぎる。


「わ、分かったから、離せ!」


「痛い、痛い、痛い!」


 パッ、と。


 奴らを解放してやる。


「……ガキが」


「……覚えていろよ」


 野郎たちは、捨てセリフを吐いて去って行く。


 デート中だった、ギャル2人を置いて……


 しばし、その姿を睨みつけていた俺は、途端に肩の力が抜けた。


「はぁ~……怖かった」


「ショ、ショータ……」


「あ、リナちゃん。ごめんね、怖い思いをさせちゃった?」


「ううん、そんなこと……むしろ、惚れ直しちゃった。ショータ、いつの間にこんな……」


「ま、まあ、リナちゃんを守りたいから、少しずつ体を鍛えていたんだ。あと、リナちゃんに教わった唐揚げ、家でも作っていたからさ。弾力のあるトリニクをいっぱい揉んでいたら、自然と握力もついて……」


「……ねぇ、ショータ。ぎゅってして?」


「あ、まだ怖さが抜けていない? でも、人前だと……」


「大丈夫、ハグじゃなくて、乳を鷲掴みにして欲しいの♡」


「それ、もっとダメな行為だよ!?」


 俺が驚いて叫ぶと、リナちゃんは白い歯を光らせて、得意げに笑う。


「昇太、お前……」


「隼士? どうしたの?」


「……いや、何でもない」


 ふと、隼士はとなりの佐伯さんに目を向ける。


 俺もつられて彼女に目を向けて、わずかに目が合う。


 けど、すぐにサッと逸らされてしまう。


 あれ、どうしたんだろう?


 佐伯さんのこんな反応、少し珍しいような……


「……ごめん、佐伯さん。知り合いに、ひどいことしちゃって」


「いえ、そんな……私の方こそ、ごめんなさい。朋子ともこちゃんと悦子えつこちゃんも、ごめんなさい。私、彼らがあんな人間性だとは思わなくて……」


「あ……へ、へーき、へーき」


「う、うん。そうそう……」


 そう言うギャル2人とも、俺は目線が合う。


 けど、こちらもサッと逸らされてしまう。


 相手のイケメン大学生、中身はクズ野郎だったけど。


 でも、何だかんだ、デートするほどの仲だったから。


 俺に対して、ちょっと腹が立っているのかもしれない。


 ていうか、あいつら、覚えていろとか言っていたし。


 何か、仕返しとかされたら、嫌だなぁ。


 けれども……


「ショータ、しゅき♡」


 何よりも大切な彼女を守ることが出来たし。


 これからも、ちゃんと守って行くから。


 後悔は一切ない。







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