第10話 好きだ

 舞浜さんのお宅にお邪魔するのはこれで2度目。


 だから、初回ほど緊張しないはずなのに……


「……はぁ~」


「はぁ? 何でため息?」


「あ、いや……緊張しちゃって」


「だから、今日は本番ナシだって。おっぱい揉むだけでしょ?」


「でも、それだって、俺には重いんですよ……」


「こら、誰のおっぱいが重いですって~?」


「ま、まあ、確かに重そうだけど……」


 デコピンッ。


「あいてっ」


「このエロ助め」


「ま、舞浜さんだって……スケベじゃないか」


「ふふん、言うようになったね~。こうやって、育てる楽しみがあるのも、童貞カレシの魅力だよね~」


 クソ、好き勝手に楽しんでくれちゃって。


 まあ、そんな風に扱われて、喜んでいる俺は……ドMなのか?


「さてと……」


 ドカッ、とソファーに腰を下ろす舞浜さん。


 ちなみにだけど、胸だけじゃなくて、尻もデカくて重そうだ。


 おい、ソファーよ、お前はいつも……


「ショータ」


「は、はひッ?」


「じゃあ、今度こそ……本当に揉んじゃう?」


 舞浜さんは両手で豊満な乳を持ち上げながら言う。


 何て嫌らしい女なんだ……


「……な、何か、胃がちょっと」


「おい」


「すみません……」


 おっかねぇ、ギャル彼女。


 やっぱり、俺なんかの手には……


「……早く、揉んでよ。もう、ずっと寂しかったんだよ?」


 ……持て余すほど大きなおっぱい。


 それを、タダで揉ませてあげると、彼女は言う。


 いやいや、そもそも、お金が発生する前提とか、エ◯コーじゃあるまいし。


 ギャルと言えば、そっちのイメージも無きにしもあらずだけど……


「ショータ、はやくぅ~」


 せがむ彼女の猫撫で声に引かれて、俺はとなりにストンと腰を下ろす。


 間近で見ると、本当にエロいギャルパイだ。


 制服のブラウスから、谷間がこんにちはしている。


 思えば、いつも学校でもこんな風にエロ谷間を晒して、何てビッチなんだ。


 そう、この子はビッチ。


 所詮、俺と付き合っているのも、単なる気まぐれ、お遊び。


 童貞喰いをされたら、俺はソッコーでポイされるだろう。


 ああ、そうか。


 それが嫌だから、俺は……


「……し、失礼します」


 俺は非常に恐縮しながらも、鼻息が荒い。


 それを自覚しながら、とうとう……


 もにゅッ。


 ……や、やわらけ~!


 えっ、何だ、コレ?


 むにゅッ、ほにゅッ。


「んッ、ショータ、くすぐったい」


「い、痛くはない?」


「うん、ちょうど良い……ていうか、気持ち良い」


「ほ、本当に? 俺、童貞なのに、ちゃんと出来ている?」


「大丈夫だよ。自信を持って」


 これが、アメとムチ。


 普段、ちょっと厳しめといういか、俺のことをイジり倒しておきながら。


 こういう時は、ちゃんと男としての尊厳を尊重してくれる。


 何だ、このギャル。


 マジで出来る彼女かよ。


「ショータ、もう少し強く揉んでみて?」


「い、良いの?」


「うん……もっと、ショータを感じたいから……」


 ……何よりも、クソほどエロい。


 しかも、エグみのないエロさだ。


 ギャルビッチのくせに、どうしてもこうも、可愛いんだ。


 ああ、そうか。


 これが百戦錬磨の鬼モテギャルのテクニックか。


 おみそれしたよ。


 俺はもう、観念した。


 遊ばれて、捨てられるとしても。


 今だけでも、この至極の柔らかみ、幸福を味わえるのなら……


「……こ、こんな感じ?」


 もぎゅッ。


「んあッ……く、食い込む……ショータの指が」


 本当に、エロい女だ。


 今まで、どんな男たちに仕込まれて来たんだろうか?


 やっぱり、イケているヤンキーとか?


 あるいは、マジでエ◯コーでおっさん達に……


 いやいや、それは無いと信じたい。


 だって、俺はもう、舞浜さんのことが……


「はぁ、はぁ……ショータ、思った以上に上手で……あたし、興奮しちゃう」


「そ、そうかな? 経験豊富な舞浜さんに褒められると、自信が持てるよ」


「…………」


「舞浜さん?」


 ふいに無言になった彼女は、ふと飾りとして置かれていたブツに目を向ける。


「ショータって、これ1度も着けたことない?」


「えっ? な、ないよ。だって、童貞だし……」


「童貞でも、遊びで着けたりしないの?」


「し、しないよ……そんな……」


「そっか……じゃあ、遊びで良いから、装着しちゃう?」


「いや、それは……」


 俺はその飾りと舞浜さんを見比べる。


「……俺、やっぱり、遊びは嫌だ」


「ショータ?」


「こんなこと言ったら、マジでキモいかもしれないけど……」


 ぎゅッ、と拳を握り締める。


「舞浜さんのこと……本気で好きになっているんだ」


「……マジで?」


 ああ、こんなこと、言うつもりなんて無かったのに……


「分かっている。俺は所詮、君にとって、お遊び、興味本位のプレイ相手だって。俺だって、最初は、お遊びでも、こんな可愛くて巨乳のギャルと付き合って、童貞を卒業できるならって、思っていた……」


 かすかに、声が震えてしまう。


「……でも、もう無理だ。これ以上、遊びだなんて、耐えられない。例え君にフラれて、千載一遇のチャンスを逃したとしても……構わない」


 彼女は黙って、俺のことを見つめている。


「舞浜さん……好きだ」


 俺は告白をした。


 こんな魅力の欠片もない、ダサ男の分際で。


 最高にイケている、巨乳ギャルに告白をしてしまった。


 遊びなら、全然オーケー。


 でも、本気となると、当然……


「……あーあ、もう少し、今の関係性を楽しみたかったのに」


 ズキリ、と胸が痛む。


 分かっていた、分かっていたけども……


 ヤバい、油断すると、涙がこぼれそうだ。


 ああ、俺って本当に、女々しい……


「……まあでも、それ以上に、もう我慢できないんだ」


 少しおどけたように言いつつも、ふと見た彼女の表情は、真剣味を帯びていた。


「ねえ、ショータ。もう1回、言って?」


「えっ?」


「さっき言ったこと」


 俺は戸惑いつつも、


「舞浜さん、好きだ」


 ちゃんと目を見て、ハッキリと伝えた。


 もちろん、その答えは……


「……うん、良いよ」


「あぁ、ちくしょう! やっぱり、せめて童貞を卒業してから告れば……って、はい?」


「あたしも、ショータのこと好きだし。お試しは卒業して、本気カップルになろうか」


「……冗談でしょ?」


「冗談なの? さっきのカッコイイ告白」


「カ、カッコイイ? 俺が?」


「うん。今まで見て来たどの男よりも……ショータがカッコよくて、大好き」


 頭を巨大なハンマーで打ちつけられたかのように、視界がぐわん、ぐわんと揺れる。


「えいっ」


 むぎゅっ、と。


 そんな俺の目の前が、肉に覆われる。


 いや、これは……まさかのパイ抱き。


 手で触れてもそうだけど、顔でも……


「……や、柔らかい」


「もう、あたしのおっぱい無しじゃ、生きていけない?」


「う、うん……」


「よしよし、可愛いバブちゃんでちゅね~」


「えっ、そういうプレイなの?」


「お望みなら、してあげるよ?」


「い、いくらですか?」


「こらっ」


 ぺちっ、と頬を叩かれる。


「……痛い。夢じゃない」


「良かったね」


「はは……」


「で、結局どうする? 卒業式は?」


「あ、えっと……何だか、今の告白で気が抜けちゃって」


「このヘタレめ♡」







次回予告


 とうとう、お試しではなく、本気カップルになった昇太と里菜。


 教室で、校舎裏で、人知れず、イチャラブる。


 休日は、ちゃんとデート重ねて。


 そして、迎える卒業式。


 しかし――全くもって、予想外の障害が立ちはだかる。


「決めた。これから1週間以内に、エッチ出来なかったら……あたし、ショータと別れる」


 せっかく可愛い巨乳ギャル彼女と結ばれたのに、いきなりまさかのピンチ!?




*予告はノリな部分もあり、実際の内容は異なることもままあります。


 ご了承ください。




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