第6話 夜のお仕事を始めたってほんとうですか?
「がっつり取られたねぇ……」
軽くなった財布を
『
「半年分の
『どんぶり
「わたし、そんなに大食いじゃないよう!」
『ひゃははッ! そう怒んなって。残りの金じゃあ、宿は一週間も取れやしないな。よしソーニャ、あたしが飲み食いに困らない
『
「まあねぇ。
わずかな時間で教会を
『ソーニャのくせにいらん空気読みやがって。だけどあのエロ
「わたしのくせには余計だよ。はぁ、シリルが怒ってたのはこういうことか」
『でもまあ、貰うもんはもらったしな!』
フテネルはソーニャの豊かな胸元に収められた、3日分の
『苦境に立つ聖女を見捨てるのですか?』
そうフテネルが司教の耳元に
「ひとの善意につけ込むのは良くないよ」
『神の使いの言葉に従うのが聖職者ってもんだ』
「
『誰が
実体のないフテネルにとっては、野宿が続いても何の
口は悪くやり方に引っ掛かるものはあるが、ソーニャのためにしてくれたことだ。それを察したソーニャには、重ねて文句を付けるのもためらわれた。
その夜は素直に食堂付きの宿に泊まったものの、ふかふかのベッドになんだか寝心地の悪さを感じ、ソーニャは遅くまで寝付けぬ夜を過ごした。
§
「へえ。食堂の手伝いねえ」
翌朝、ソーニャの突然の申し出を受けた宿の
「なんだい、
「いや、手持ちはまだあるけど、ちょっと心もとないかなって感じで」
「あんた
「てへへ」
『てへへじゃないだろ! 何考えてるんだ?』
耳元でフテネルが
どうやら司教とは違い、
「まあいい、
「任されました!」
『金ならまだあるだろ。バイトしてる
「だってほら、酒場には情報が集まるって聞いたよ。まだ何の手掛かりもつかめてないし、町の人が何に困ってるかも、聞いて回る手間も省けるなって」
シリルに貸して貰った物語の本の受け売りだ。物語の導入は、いつも酒場のシーンから描かれていたはず。傭兵崩れたちも、仕事のないときは酒場にたむろすると話していた。
それに、形だけは教団の任務ではあるが、これはソーニャの始めた旅だ。自分で稼いだ
『そーかい。勝手にしろ!』
「ソーニャって言ったかい。これに着替えな!」
§
たっぷりのリボンとフリルをあしらった、パステルブルーの
「
「
「
足首まで隠れる
胸元も下から持ち上げられるデザインで、
「
「
「えぇー……」
弱々しいソーニャの
腕はいいが
朝に出立する予定の泊り客も、ソーニャの
普段は一番安いメニューを
「食堂ってずいぶん忙しいお仕事なんですねぇ」
「忙しいのは今日になってからだよ」
「うん?」
ほくほく顔の
体力には自信のあるソーニャだったが、慣れない作業もあって急速に腹が減る。
まかないを食べながらのわずかな休息の後、続けて夜のメニューを提供する酒場の時間となる。
本来の目的を忘れ、
§
疲れが見え始め、ソーニャの隙が多くなる夜には、チラリやポロリを期待する
男たちのそういう視線には
「シリルが『はしたないから
給仕の合間に、こそこそカウンターの裏でスカートの
「いらっしゃいませ! ご注文は――」
「って、アリーセ!! なんでここに!?」
「うぐぅ……ママ、ちょっとあわない間に、夜のお仕事するようになったんだね」
「チクショウ! あんな若いのに子持ちだったのか!?」
「残念だが、あの胸で子供がいないわけないだろ」
ざわつく店内を
「え? ちょ、なんでアリーセがここにいるの? ひとりで出歩いちゃ危ないでしょ!?」
「なんでも危ないもわたしの
「えぇー、わたしが怒られるの?」
騒ぎを聞きつけ、調理の手を止め
「なんだい、あんた子持ちかい?」
「違います! ママじゃないですけど!」
「分かってるよ。軽口だよ。そうじゃなくて」
腰を手に、しかめっ面でため息を吐く
「はぁ。何か面倒な訳ありだろうとは思ってたけど、商売の邪魔になるなら、放り出すからね!」
「わ、わたし、お客なんですけど!」
反論の
「客なら文句はない。ソーニャ、オーダーを取りな!」
「えぇー……」
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