今日はチートデイ。

@ramu1641

今日はチートデイ。

 _「今日も、一杯どうかな?」 「はい、お言葉に甘えさせていただきます。」_

 私は平均的な生活を送る平凡な人間である。朝6時30分に起床し朝食を食べ、歯を磨いて上司に振り回される日々を過ごす凡人である。そんな風に人々は私を見ているのかもしれない。だが私には一つ、非凡な趣味がある。チートデイだ。チートデイというと好きなものを好きなだけ食べていい日という風に思うかもしれないが。だが違う。私にとってチートデイとは、「自分の普段抑制されている感情を出し、思うが儘に行動する日」ととらえている。今回はそんなチートデイを紹介しよう。

 給料日の21日、この日は決まって毎月例のあれが届く。それをまな板において出刃包丁で冊に切り、柳刃で薄く切って皿に盛りつけテッサを作る。テッサはあっさりしてコリコリした歯ごたえがあって旨い。白飯がなくとも満腹だ。そして、テッサをつまみに旭川のビールを嗜む。酒を飲むと脳が惚け、脳みそのコリが見事に取れる。そして少々ハイになったところで酒を溶媒に薬を溶かし、のどに流し込む。薬を飲んでしばらくすると心がだんだん変化していく。普段上司に媚びへつらい出世したがる自分とは違い、荒野を開け抜ける一匹の獣に生まれ変わる。自分一人で何でもできそうだという全能感と現実離れした原始的な倫理観だけになる。そしてその心に身を委ね、そのまま外に出る。

 夜風は気分がいい。熱くなった体をちょうどいい具合に冷やしてくれる。夜道を歩くとき私は入る家を見る。探すポイントは三つある。

・明かりはついていないか。

・人間の声が一人だけか

・影の動きはゆったりとしたものか

これらの条件がなければ私は家には入れない。仮にこの条件を一つでも外した場合、騒ぎが起こる。普段平凡な生活を営む私としてはこのことはプライドとして許さない。入る家が見つかったら静かに勝手口から侵入し人間を探索する。人間が見つかったら素早く首をかむ。この時のコツは太い血管を狙ってかむことだ。あまりの痛みに対象は騒がなくなる。こうして噛み、血を流して〆た後、私は静かに四肢から順に歯でちぎって食べていく。人体を食するうえで美味なのは四肢、頬、腹の順だ。四肢はある程度筋肉と脂肪の割合がちょうどよいので食べやすく美味である。逆に腹は脂肪分の割合が高いので胸やけを引き起こす。そうして人肉を愉しんだ後、あまりを引きずって家路につく。その前に血は飲み干すのだから血痕は残らない。そうして帰宅した後は二本足で立ち上がり湯を沸かして入浴する。そうして温まった体で熟睡する。

 朝を迎え、また平凡な日々を送る。今度は余った革や骨で小物を作ろうか考えながら会社へ赴き、今日も上司に振り回される。

 _「今日も一杯どうかな?」_         

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

今日はチートデイ。 @ramu1641

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ