帰宅途中で知らない人に襲われた! もう絶体絶命! と思っていたら、また別の人に助けたもらったんですけど、なぜか猫の格好をしている
!~よたみてい書
脅威
「コハルさん、ちょっと話したいことがあるんですけど、いいですか?」
コハルと呼ばれた二十代前半に見える女性は手に持っていたジョッキを口に近づけながら視線を横に向けた。
「ん、どうかしました?」
コハルと茶髪女性は居酒屋の席で隣り合わせで座っていた。
店内は客席が20席ほどの広さで、半分は来客で埋まっている。
なので様々な客の喋り声が店の各所から聞こえていた。
店内の照明は決して明るいとは言えず、少し薄暗い状態だ。
だけど飲食やコミュニケーションをとるには全く問題ない光量で、むしろ人によっては心地よく感じる雰囲気を作り上げていた。
現に居酒屋で飲食を楽しんでいる来客全員は不満を現した様子は一切ない。
茶髪の女性は上目遣い気味で尋ねる。
「コハルさんって、よく会社で飲み物を飲んでいますよね?」
コハルは量が減ったビールが入ったジョッキをテーブルの上にゆっくり置く。
そして肩をすくめながら苦笑いを浮かべた。
「そりゃあ私だって人間ですからね、飲み物くらい飲みますよ。水分補給なしで生きられる超人的な存在ではなく、みんなと同じなにも特徴がないただの一般人ですよ」
茶髪女性は目の前のテーブルの上に置いてある五個の茶色い衣を
それから皿の端に目立つように置かれている小さく切られたレモンをつまみ上げた。
そしてレモンの皮の両端を指で圧していき、あふれ出る果汁を均等にかかるように唐揚げの上空から降り注いでいく。
少し濁った雨を浴びた五つの唐揚げは表面を湿らしていった。
茶髪女性は眉尻を下げながら硬い笑みを浮かべる。
「いえいえ、そんなに
コハルはテーブルの上に置かれていた
「うーん、私はそんなに立派な人間ではないと思うんだけど」
箸で茶色く染まった鶏肉を挟み込み、口の中に放り込んでいった。
茶髪女性は片手をコハルに向けながら宙を軽く何度も叩いていき、
「まぁまぁ、そんなこと言わずに。で、本題に戻りますれど、コハルさんがデスクを離れてる時なんですけど」
コハルは白い泡に覆われたビールを持ち上げた。
「えっなになに? 私が離れてる時に?」
「カオルさんがね……」
「え、カオルさん?」
「コハルさんがデスクの上に置きっぱなしにしてたコーヒーに――」
「あらら、勝手に飲まれてしまってたのね。もう、カオルさんったらしょうがないですねぇ」
「いえ、違うんです!」
「えっ、どうしたんですか? そんな神妙な顔して」
「勝手に入れてたんですよっ」
「ん、砂糖とかミルクを代わりに入れてくれてたってですか? カオルさんの方が私なんかより優秀だから、気を遣ってくれたんですね」
「遠くからだったのではっきりした情報じゃないんですけど、なんだか見慣れない包みを取り出してて、中身をコーヒーに投入していました……」
「うーん、でもその見慣れない包みってのがなにか分からない状態じゃ何とも言えないですね」
「そうですけど、怪しすぎます」
「カオルさんが変な事するようには私には思えないけど、それでもわざわざ教えてくれてありがとう」
「気を付けてくださいね?」
「そうですね、今後はデスクの上に放置しないようにしようかな」
「ちなみになんですけど、コーヒーを飲んだ後になにか体調に変化があったりはしませんでしたか?」
「あー、コーヒー飲んだはずなのに、逆に眠くなることが最近よく起こる気がしますね」
「えっ!? それってやっぱり……」
「カフェインに耐性ができたんですよ。あとコーヒーの効果を上回る寝不足の影響か」
「コハルさんやっぱりカオルさんの――」
「もう、同僚のことをすぐに疑っちゃダメですよ?」
「ですけど……」
コハルは明るい笑顔を作りながら皿の上に乗っかった唐揚げを箸で持ち上げ、口の中に運んでいく。
茶髪女性も不安そうな表情を浮かべながら唐揚げを口に運搬していった。
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