淫魔になったから夢に潜って好き勝手に人生相談する!
みょん
プロローグ
物語に転生という要素が使われることが最近は増えてきた。
現実世界で何かしらの理由があって死んだ際に、神様や女神と言った超常的な存在に出会うことで異世界へと生まれ変わる……それが最近のトレンドである。
(一次創作もそうだけど二次創作も好きだったからなぁ……そりゃもう平日も休日もスマホを片手に読み込んだもんだぜ)
そう、俺はそういう転生モノが大好きだった。
能力のない主人公物でも、チート無双物でもとにかく読み耽った。一つのサイトに限らず色んなサイトの小説を読み漁るほどに、俺はとにかくそういった物が大好きだったのだ。
さて、どうしていきなりこんなことを突拍子もなく考えたのか――それは俺が今、その転生を経験しているからだ。
「あ~う~」
自分のモノとは思えないほどに可愛らしい声だ。
満足に体を動かせず、この上手く喋れない感覚……ただ、ご丁寧に少し視線を横に向ければ手鏡が置かれている。
そこに映るのは幼い男の子――赤ん坊の俺だった。
(……なんでこうなったんだ?)
鏡に映る俺と目が合う。
体を満足に動かせなくても、目の動きはしっかり鏡の中の男の子とリンクしているので、この赤ん坊は間違いなく俺だと分かる。
赤ん坊は取り敢えず俺ということが判明したけど、どうしてこうなったのかが全く思い出せない。
前世のことが昨日のことのように思い出せるのだが、こうして生まれ変わる原因となった出来事に関しては全く記憶がないのである。
「あ~」
(ははっ、全然喋れねえわ)
あ~う~しか喋れない俺ってば可愛いな……なんて、それはちょっと違うか。
というかこの微妙にお腹の辺りに感じる温かいものと、腰の辺りに何かがくっ付いている変化な感覚はなんだ?
ムズムズするわけでもなく、何か異物が引っ付いているような感じだ。
「う~!」
(あ、お股が……)
股の辺りがじんわりと温かくなり、急激に気持ち悪さが襲い掛かってきた。
そうなってくると耐えがたい何かが体を侵食してくるようで、俺はみっともなく大声を上げるようにして泣き始めてしまった。
溢れ出る涙と声を全く我慢出来ず、心の中では完全に落ち着いているのに体の方が年齢に引っ張られているかのようだ。
「あ~う~!!」
泣き声まであ~う~でなくて良いだろ!
なんてツッコミを一人でしていると、ガチャッと部屋の扉が開き――俺は瞬時に抱き上げられた。
「あらあら、おしっこが出ちゃったのね。オムツを換えるわね」
それはとてつもなく安心を齎してくれる声だった。
俺を抱き上げたのは女性なのだが、彼女に触れた瞬間に脳内が一つの答えを出した――この人が母親なのだと。
トントンと優しく背中を撫でられた後、再び寝かされて履いていたオムツを脱がされた。
(恥ずかしい……恥ずかしいけど……ええええええええっ!?)
恥ずかしさはあった……そんなもんは当然だ。
でもそれ以上に俺は目の前の女性に対しての驚きが勝った――優しい表情で俺を見つめる母親はとてもエロい恰好をしていた。
上下の大事な部分しか隠していない際どすぎる服……いいや、これはもう服ではなく布だ。
少し動くだけでぽよんぽよんと揺れ動く特大のバスト、それだけでも凄まじいほどの破壊力だった。
(こ、これが俺のママンだと!?)
目の前の女性に対して母親だと脳は認識しているが、それを僅かにでも打ち消すほどのエロティックな姿に俺は視線を釘付けにさせられている。
相変わらず涙を流し嗚咽を上げてはいるものの、俺の視線は母の特大バストから全く逸れてくれない。
(……あれ?)
っと、そんな風に二つのお山を見つめていた俺だが……更にもう二つ俺は驚くべきものを見てしまった。
まず、母の頭には角が生えていた。そして角だけでなく、ゆらゆらと動いているのはどうやら尻尾のようだった。
(ママン……人間じゃないの?)
コスプレ? それとも新手のファッション? 多くの予想が俺の中に降って出てきたが、母の言葉に俺は全てを理解してしまった。
「それにしても……まさか男の子が産まれるなんて思わなかったわね。サキュバスは女性しか産まれないのに……この場合、この子はサキュバスになるのかしらね? また少し違う呼び方になるのかしら」
サキュバス……サキュバス!?
サキュバスっていうと色んな漫画やアニメ、それこそ18禁モノの作品においてはレギュラー種族と言っても過言ではないドスケベ種族じゃないか!
俺も何度かお世話になったことがあるけど……え? 俺ってサキュバスの母親から生まれたってこと? つまり異世界ファンタジー転生ってやつなのか!?
(おーまいがー……)
……って、一瞬で興奮が冷めた気がした。
俺がどういう形でこの異世界に転生したのかは分からないが、普通の現代日本と違い異世界って常に命の危険に晒されるやつではという不安があったからだ。
(サキュバスってことは魔族……? みたいなのが居るってことだもんな。人間と争ってたりするのかな……?)
そんなことを考えていると、オムツを換え終えた母に抱かれた。
ぷにぷにの胸の感触に全身が包まれるかのような錯覚さえある……それほどに母の胸は柔らかく温かった。
「リリス様、失礼します」
「あら、いらっしゃいナナリー」
母とは別に誰かが現れた。
チラッと見ると優し気な母とは違い、どこか冷たそうな印象を思わせる鋭い瞳をした女性だった。
着ている服は母と違ってキッチリとした……執事服?
女性なのに執事服とはこれ如何に……とはいえ、母と同じで角と尻尾が生えているので彼女ももしかしたらサキュバスなのかもしれない。
(おっぺえでけえもんなこの人も)
ただ、どうも幼い俺の体は彼女の放つ冷たい雰囲気が怖かったらしい。
母の温もりに安心していた俺だが、再び彼女を見て泣き始めてしまうのだった。
「ナナリーが怖い顔をしていたからよ?」
「そ、それは生まれつきです!」
あ、慌てる姿は凄く可愛かった。
さて……改めて人外である二人にこうして見つめられると、俺は本当に異世界に生まれ変わったんだなと実感する。
思い出せないことは大したものではないのか、それともあまりに悲惨過ぎて記憶に蓋がされたのかは分からん――まあでも、この世界の母は前世の母と違って優しそうだしちょっと安心だ。
(めっちゃエロいしな! サキュバスみたいだし!)
テンションぶち上がり状態の俺だったが、そっと手が母の胸に触れた。
僅かに触れただけなのに沈み込んでいきそうな柔らかさが凄まじく、母は嬉しそうに笑い、ナナリーさんもおやおやと笑みを零す。
「やっぱり男の子なのかしらねぇ?」
「みたいですね。どんな風に成長するのか楽しみですよ」
「私もだわ……それにしても――」
そこで少し空気が変わった。
ナナリーさんに変化はないが、俺を見つめる母の様子が妖しいモノへと変わり、ジッと俺を見つめながらこう言葉を続けた。
「息子が出来るとは思わなかったから……どんな味がするのかしら?」
(ひえっ!?)
おかしい、凄くエロい雰囲気を感じるのにとてつもなく恐怖を感じたぞ。
どうやらそれでまた泣き出しそうになったらしく、母がごめんなさいと言ってすぐに謝ってきた。
(……俺、どうなるんだろうか)
取り敢えず、色々と知らないといけないことがたくさんのようだ。
▼▽
その世界には淫魔と呼ばれる存在が生息している。
彼女たちはサキュバスと呼ばれており、そこには決して男が産まれることなど歴史上はあり得なかった。
そんな中で唯一、男児が産まれたことにより事態は僅かに一変する。
これは一人の少年の物語――本来であれば産まれるはずのない淫魔の男として生を受けた少年の生き様だ。
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