第7章 第1話 エリア003 これからの鼎と桃香
鼎と桃香がエリア003に戻ってすぐに、エンシャント財団の調査が打ち切られる事になった。財団側は“lunar eclipse project”のデータを得る事が出来たので、何の進展も無かった訳ではないが…
「はぁ〜あ…進展無かったね」
(あの孤児院の子供達は、015と他のエリアについてどう思うのかな…)
桃香は露骨にガッカリした様子になっていたが、鼎はまだエリア015について考えていた。旧時代の面影が残りつつも発展している街並みが、それ程刺激的だったのだ。
「で、ペルタちゃんの事はどうするの?」
「巴に頼む…私も探偵としての仕事を再開しなきゃ駄目だから…」
普段の鼎は仮想現実で活動する探偵として、持ち込まれた依頼をこなして報酬を得ている。この日も幾つかの依頼を受ける事になっている。
「桃香はどうするの?復学はしないの?」
「新しいMMORPGをやりたくなったんだよね」
ブラックエリアの賭場を仕切っている桃香は、現在は不登校になっている。鼎は一度理由を聞こうとした事があるが、桃香は答えなかったのでそれ以来聞き出そうとはしていない。
ーー
「それじゃあ、依頼人が待ってるから」
「鼎サンも大変だねぇ…」
ブラックエリアの賭場を管理して利益を得ている桃香は、実はかなりの金持ちである。ただの学生である彼女が、エリア003の郊外に大きい家を持っているのもそれが理由である。
賭場でトラブルを起こすユーザーがいないか監視していない時は、大抵の場合はゲームをやっている。明らかにアナザーアースのルールに反する仕事である分手元に来る金も多く、自由に出来る時間も多い。
(ペルタチャンは気の毒だけど…ボクも休みたいからねぇ)
ーー
(この依頼は…学校の先生か)
鼎は待ち合わせ場所のカフェで、依頼人の情報をチェックしていた。信用にも関わるので、これからはブラックエリアに関わる依頼は出来るだけ断るつもりだった。
(学校関係者なら、そんなにおかしな依頼はして来ないかな)
学校関係でのトラブルが探偵に持ち込まれる事も少なくない。本来は保護者が解決すべき依頼が、探偵の元に持ち込まれる事もよくある。
(そういえば桃香が通っている高校の名前も知らないんだな)
鼎はそんな事を考えながら、依頼人が来るのを待っていた。少し遅れているみたいだが、依頼人からの連絡は来ていない。
(もう少し待とう。イタズラだったら学校側に報告すれば良いし)
ーー
鼎がカフェで依頼人を待っている間、桃香は自分がやりたいゲームを探していた。FPSもいいと思っていたが、今の彼女のトレンドはMMORPGだった。
(unreal survival…これ良さそう)
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