第6章 第4話 ミレイの大ファン 現れる
日笠美玲はデビュー直後から、精力的にアナザーアースでライブを行っていた。足を止めてくれる人はまだ少ないが、それでも少しずつ話題になることが増えていた。
『一見可愛らしい感じなんだけど、結構歌声カッコいいよね』
『あんまり話題になってないけど、もっと人気出て欲しい』
エンシャント財団は、基本的にインターネット上の意見はポジティブなものだけを拾っていた。駄目だったところは、財団側で指摘すればいいからだ。
「今日のライブも良かったですわね」
「はい。もっと沢山の人に観てもらいたいです…」
少しのファンを得た美玲は、もっと大勢のファンが欲しいと思っていた。まだまだ、ファンの熱量が足りないと感じているのだ。
ーー
「ミレイちゃんサイコーッ!」
少ないファンの中でも、凄まじい熱量の人物が現れる事はある。黄色い髪の少女、風間メルは数曲聴いただけで美玲の可能性を感じて、彼女の熱狂的なファンになってしまった。
(次のライブ情報は…っと)
メルはミレイのライブを何度も繰り返し観に行っていた。もはやメルの生活の一部になっていたので、親からは心配されていた。
ーー
(ネット掲示板にミレイちゃんのスレが立ってる…アンチスレだったらぶっ潰してやる)
メルは偶々、ネット掲示板に立てられたミレイに関するスレッドを見つけた。彼女は不安を感じながらも、そのスレッドを見てしまう。
ミレイってアイドル、lunar eclipse projectってゲームやってるらしいよ。
何それ?
超マイナーなVRMMO
マイナーなアイドルがマイナーなゲームやってるwww
(ミレイちゃんをバカにしているのは許せないけど…私もlunar eclipse projectを始めなきゃ!)
メルはスレッドの情報を間に受けて、lunar eclipse projectを始める事にした。VRMMOは初めてだったが、それよりもミレイがやっているゲームを自分もやりたかったのだ。
ーー
(頼まれてないけど…これくらいやってもいいよね?)
ブラックエリアの賭場にいる桃香は、ネット掲示板に美玲に関するスレッドを立てていた。悪質なコメントは、すぐに排除できるように部下に見張らせていた。
「おい桃香、またイカサマだ何だって騒いで暴れてる奴がいるぞ」
「はいはい分かったよ。ボクがルールだって事が教えればいいんでしょ?」
久々に本来の仕事をしている桃香は、中々に忙しそうだった。裏社会の賭場を仕切って利益を得るのが、彼女の仕事なのだ。
ーー
(あんまりプレイヤーいない気がするけど…大丈夫?過疎ってる?)
メルは一般的なMMORPGで人が多い時間帯などは知らなかった。だが見かけたプレイヤーの数がかなり少なく感じたので、メルは不安になっていた。
(さて、ギルドに入れば良いのかな…って、ミレイちゃん?!)
ギルドのリストをチェックしていたメルがふと顔を上げると、視界にミレイがいた。周りに他のプレイヤーもいたので、彼女は既にギルドに所属している事が分かる。
(私もあのギルドに入りたい!)
メルはすぐにミレイが所属しているギルド“ビギニングスターズ”への加入を希望した。するとすぐに、ギルドハウスに来て欲しいというメッセージを受け取る事が出来た。
ーー
「君も初心者だね?我らビギニングスターズが歓迎するよ」
(ここなら、私もやっていけるかな)
ビギニングスターズのプレイヤー達は皆親切そうだった。優しそうな人たちばかりだったので、メルは安心していた。
「私も最近入ったばかりなんですが、よろしくお願いしますね」
「こちらこそ、はっ?!アアッ…」
他の初心者プレイヤーに話しかけられたメルだったが、彼女がミレイだったので歓喜と驚愕で固まってしまった。いきなり表情が固まったメルを見て、ミレイは不安になった。
「あの、大丈夫ですか?」
「あっいえっわっわわわたしっあなたの大ファファっ」
ミレイに心配されたメルだったが、相変わらず声が上ずっていた。ミレイの方は、ただメルが緊張しているだけだと思った。
「わたっ私はっあなたがデビューした時から観ててっ!」
「えっ私がアイドルって事知ってるんですね…?」
「そっそれはえっと…ひゃあああ!」
「えっ…何、私恨まれてるの?」
感極まりすぎたメルは、その場から逃げ出してしまった。その様子を見たミレイは、色々と誤解してしまっていた…
メルがギルドメンバー達の誤解を解く事が出来たのは、数週間後だった。
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