オレの武装ちゃん! 〜戦うラブコメ? 可愛い5人の女の子が俺にラブラブ! え!? 彼女たちは俺の改造した身体のパーツだってのか? 変な馬頭は俺を倒しにくるし、戦うのか恋するのか。

かねさわ巧

第1話 俺の右手が女の子になっちゃった!?

「ミギテっ! 奴は追ってきているかっ!?」


「ハイ! 後方ニ距離ヲタモチ、離レル気配アリマセン!」


 真紅の鋼と化した俺の右手が答える。こいつは相棒だ。


「何処までついてくる気だ、しつこい奴だな……」


 なんとかコイツ・・・を盗みだしたはいいが、いつまでこの黒雲こくうんに閉ざされた地を走り回らないとならねーんだ、イライラするぜ。


「ジンタイ様! 熱源反応デス! 避ケテ下サイ!」


 その瞬間、後方からの攻撃が白鋼しろこうの翼をかすめる。


「クッ! こぉのぉぉークソがぁぁぁーーっ! 何者なんだ、あの黒マント野郎っ!」


 振り返ると奴は寸刻すんこくほどの先に確認できた。身にまとう黒いマントをなびかせ、一人しつこく俺たちを追ってきている。


「フフフ、ソレを差し出す気になりましたか?」


 どうやら、このまま逃げ回っているわけにもいかなそうだ。


「へへ、追いかけっこはもうやめだ、飽きちまったしな」


 突然の攻撃から逃げることに必死で、確認が疎かになっていたが、あの馬のヘッドは被り物か? 頭部まで真っ黒かよ、趣味が悪いにも程があるぜ。


「ミギテ! 奴のことわかるか?」


「データ照合シマス! 照合完了、オロバスタイプデス!」


「オロバス? よくしらねーが随分と強力なものぶっ放してくるじゃねーか」


 それにしても、まさかあれほどの攻撃力を備えているとは……ほとんどの武装が破壊されちまった。


 この俺をここまで追い詰めやがって、気にくわねーぜ。


 だが、やっと苦労して手にいれた無限石コイツだけは何があっても手放せねー。


 無限石むげんせき――今の俺に絶対なくてはならない物だ。


「この裏切り者め。大人しくその無限石を組み込まれし鋼の右手を差し出せば、楽に殺してやろう。それは御主おぬしのような者に扱える代物ではない」


「ケッ、誰が渡すかよ! なんの為に全身機械化したと思ってやがる。俺はこの武装からだ無限石コイツを使って魔王の座に君臨してみせるぜ! テメーこそ命乞いでもしやがれ、この全身黒マント野郎っ!」


「ジンタイサマ、各部ダメージ量ガ限界マデキテイマス。コノママデハ……」


「お前はまだ反応できるようだなミギテ。流石、無限石を組み込んだだけのことはあるぜ」


「ハイ、コノ真紅ノ光ガ尽キルマデ戦闘可能デス!」


 他の武装は先の戦闘で損傷が激しい――修復が必要だろう。


 使えるのは、このお喋り右手のみ……。


 無限石を組み込んでから俺の右腕が肩まで赤く染まってきている。


 この現象に何の意味がある……このまま白鋼しろこうの身体が侵蝕されていくのか?


 そうだとすれば、まだ力を完全にものにしていないことになる。


 だが、今は、この力に賭けるしかないか……。


「チッ、ぶっつけ本番かよ。性能を把握する前に使うのは気が引けるが……」


「戦イマスカ?」


「あったりめーだっ! この身にまといし機械式自在絡繰武装きかいしきじざいからくりぶそうの力を見せてやるぜ! ミギテっ! 全エネルギーを解除だっ! 超爆裂砲撃メガズドンをぶち込むぞ!」


「了解デス! リミッター解除始メマス!」


「このうつけ者め……このわたしに楯突くとは……よかろう……しね」


「しぬのはテメーだ! 黒マントっ! 無限石の力が宿った俺の絡繰武装からくりぶそうは半端ないぜ! いくぞオラァー!」


「ジンタイサマ! 発射準備完了デス!」


「サンキュー、ミギテっ! 了解だっ!」


 眩しいくらいに俺の右手に埋め込まれた無限石が赤く輝いている。


 この力さえあれば……。


「この高エネルギーを浴びて生きていられるわけがねー! 俺の勝ちだぜ黒マントっ! あの世で素顔さらけ出せ! くらえやぁぁぁーーっ!」


「敵、攻撃確認! ジンタイサマ! 回避ヲ!」


 なっ!? 野郎! 俺より先に高熱原エネルギー波をっ!?


 ――ヤラレル……。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーっ!」


 ――――

 ――――――――……。


         

                   

 ――ジンタイ様……。


 俺を呼ぶ声が……。


 ――ジンタイ様……目を覚ましてください……。


 誰だ……この声……何処かで聞いたことがあるような……いや……。


「うぅ……」


 何だ? 身体が重い……武装の重力制御に影響が出ているのか?


 ――ジンタイ様ーっ!


「起きて下さいーー!」


 バコッ!


「痛い! あ、頭が……」


「あー! 目が覚めましたー! 大丈夫ですかジンタイ様っ!」


「大丈夫なわけ……ねーだろ! いきなり頭部にダメージ与えてきやがって! 誰だテメー!」


 くっそー! 目が覚めたと思ったら、わけのわからねー女が俺の顔を覗き込んでいやがる。


 ん? 真紅の瞳か……この色、何処かで……。


「心配しましたよ! ジンタイ様、しんじゃったのかと思いました♡」


「んぁ? 誰なんだよテメー」


「誰って、見てわからないのですか? 良く見て下さいよー! ミギテですよ、ミーギーテ♡」


「ミギテ?」


 右手だと? なんだこの女、頭おかしいのか? よく見ろって……真紅の両眼……ショートヘアに透き通るような白い素肌には、ちっさいペラペラな胸当てと腰巻……それらは両眼と同じように髪も衣服も全てが赤く彩られている。


 顔とスタイルは良好ってところだな。


「ただの生身の女じゃねーか」


「ひっどい! ずっと一緒に戦ってきたパートナーを忘れちゃったんですか! 許せないっ! 離婚よ! 離婚!」


「あのなぁ、さっきから右手ミギテうるせーけど、お前のような奴と結婚した覚えもないし、だいたい俺の右手はこの通り機械式……って、なんだ……これ……」


 俺の右手が――絡繰武装からくりぶそうが……生身の腕っ!?


「うわぁー! なんだこりゃ! 俺の腕がーーーー!」


「あー! ジンタイ様っ! ジンタイ様の身体ですけど、腕だけじゃなくて全身生身の体になっていますよ? しーかーもー、結構イケメーン! ちょっと勝ち気な金色の瞳が素敵ですー。その肩まであるサラサラの鉛色なまりいろの髪もカッコいいー♡」


「な、なんだと……」


 ミギテの言葉を確かめるように己の身体に目を向ける。


 右手は勿論、左手、胸部から鼠径部そけいぶ、そして両脚まで……目に映るそれは人と言える確かに生身の姿だ。


 そのまま頬に両手を添えるとほんのりと体温が手の平に伝わる。


 俺は全武装が無くなっていることに愕然とした。


「驚かれますよね? でも大丈夫です! わたしも同じですからー。見てみてー、見て下さい! ジンタイ様と同じ生身の体ですー!」


 女は目の前で踊るようにくるくると身体を回転させてみせると、ニカッと牙を覗かせた笑顔を俺に向けてきた。


 この女、たしか自分のことをミギテといっていたな。


 あの真紅の両眼……さっきから気になってはいたが、無限石の色だ。まさかこいつ本当に……。


「お前、俺の……右手からくりぶそう……なの、か?」


「はい! 勿論です! わたしはミギテですー! ジンタイ様のパートナーのミギテですよー!」


 なんと言うことだ。たしか俺は黒マント野郎に追われて……。


 俺は現状を把握するため辺りを冷静に見回す。


 見たことのない四角い建造物らしきものが俺たちを囲むようにそびえ立ち、見上げた先には青く染まった空があった。


 ――ここはいったい……。

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