第2話




山は俺の庭だった。ある時キイチゴを見つけて食べたらハズレでひどくすっぱかった。アイツは大笑いしたが、すぐに同じ実をもいで食べた。なんですっぱいと分かっている実を食べたんだろう。#twnovel 大人になりコンクリートの街に住むようになった。なぜかアイツと食べたキイチゴの味を思い出した。




完全に行き詰った時『生きるために誰かにすがることは弱さとは違うわ』そう甘く諭され、白く美しい手を差し伸べられた。俺はその手を拒絶した。周りの者は美しい彼女の容姿と行いに心酔し、俺を恩知らずの義弟と蔑み罵った。#twnovel けれど、俺を陥れた汚い手を掴むのなら、空を掴んだ方がましだ。





世界は痛々しい。ひとつの兵器が次の兵器を呼び、負の連鎖は地表をすべて破壊するまで止まらなかった。今、目の前に横たわるのはガレキだらけの灰色の地平。#twnovel しかし、その屋根は目の覚めるような真っ青な空。地球はひとつの家だ。そんなことも忘れていたのか人間は。




首筋の口付けの跡を虫に刺されたと言い訳をした。友人が嘘を確かめようと顔を近づける。とっさに隠し『ダニに刺されるといつまでもかゆくてたまらない』と大仰にその場所を掻きむしった。じわと血がにじんだ。#twnovel あれはただ慰め合っただけで愛ではない。けれど、この傷が残ればいいとも思った。




今日は記念日。彼女にプロポーズしようと思っているのに、現場がトラブル続きで花屋に駆け込んだのは閉店間際。店員にくすっと笑われる。?? ガラスに映ったのは、○○建設のユニホームにヘルメット姿の自分。慌ててヘルメットを脱いで髪を整える。#twnovel 『どうぞ末永くご安全に☆』




人生なんて遊園地のアトラクションだ。とにかくなんでも乗って、楽しめばいい。乗ってみないのは損だ。ただ、ハズレもある。恐怖で絶叫し、酔って吐くこともあるだろう。そうしたら、ベンチでメロンソーダでも飲んで休めばいい。#twnovel 迷ったら人生のコンパスを見ろ。いつだって未来を指している。





都会からの転校生は、窓の外の山を見てはため息ばかり。こんな田舎に来たくなかったのかもしれない。仲良くなりたいのに難しい。あるとき彼が星の本を読んでいた。それならばと、とっておきの話をする。#twnovel 「この盆地は、隕石の衝突でできたって言われてるんだよ」彼の目がキラッと輝いた。





月を見ると泣きたくなる。光り輝く満月の時はことさらに胸が締め付けられる。郷愁とでも言うべきなのか、自分の根源的な何かを揺さぶられ、潮が満ち溢れる。

ああ、あれは私の失われた一部。だからいつかひとつに還りましょう。#twnovel 月は、地球の欠片だと言われている。




輪廻転生。私はいつも戦場にいた。何度も死に生まれ変わっても戦争は続いていた。私の手は赤く染まり、体は血だまりの中で息絶えことのくり返し。#twnovel 地上落とされ、抜けられない輪に無理やりねじ込まれ繰り返す人間としての生。瞼を閉じることさえできずに見上げる灰色の空に、神などいない。




スポットライトを浴び赤い絨毯を歩く女優が一流だと言うなら、私は公園のベンチで練習する貧乏劇団の三流役者だ。セットは手作り、衣装も古着屋から探してくる。#twnovel 役者は胸に人生の種を撒き、芽吹き、花咲き、そして散るまでを演じ切る。そこに貴賎はない。舞台に上がれば何にでもなってやる。





珈琲店で頬杖をつきながら窓の外の人波を眺める。無理解な上司に使われ、お客には罵られる。毎日、心はすり減り毛羽立つ。自分もこのレーンを流れるヒトにすぎない。情けないが替えはいくらでもいる。ならばなぜ自分だけが消耗する必要がある?#twnovel 追加でホットサンドを頼む。少しだけ味がした。




父の死後、私は継母と義姉たちに虐げられて生きてきた。私を残し城の舞踏会に着飾り出かける継母と義姉たちをうらやましいとは思わない。私はこの時を待っていた。悪鬼しかいないこの家にもう未練はない。#twnovel お金に替えられる父母の形見を持って裏門へ向かう。私は静かに、自由への扉を開いた。




上階からの水漏れで、一時的に部屋に住めなくなった。途方に暮れる俺を泊めてくれると名乗り出たのは、いつも俺にだけ厳しい先輩だった。俺のことを嫌いなのに、なぜ恩を売るんだ?#twnovel 『嫌いじゃない。ただ、身を削るように仕事をする奴は見てられないだけだ』クソ、俺の涙腺も誰か直してくれ。




文字は絶滅した。急速なデジタル化で紙を使わない生活様式にシフトされ、次第に脳に直接情報を送る電脳伝送方式が主流となり今に至る。イメージを伝えたければ、どんなに離れていても相手と同期すれば事足りる。#twnovel 「でも~、手書き文字ってマジ映えるじゃん?」結局、流行は繰り返す。





打ち鳴らす乾杯のグラスから、しぶきが上がる。はじけるビールの泡をぐびりと飲むと、今までの疲れが洗い流される。この2年、病院での仕事は休みなしで走り続けてるようだった。自分も感染するかもしれないという恐怖にさらされながら、戦い続けた。野戦病院を思わせる事態もあったがそれも乗り越えた。やり遂げた後の一杯は格別だ。#twnovel そんな未来まであと少し。





心の中で助けを呼んでも誰にも繋がらない。もう会社に行きたくない。残業帰りの深夜にコンビニ寄ると不衛生な小さな子が1人でいた。これが現実。自分すら救えないのに何ができる?打ちひしがれて持っていたチョコをその子にあげた。#twnovel この世の中は歪んでいて、どうしようもなく繋がっている。





魔王は世界を無へ還そうと大地を蹂躙した。苦しむ人々を救うため、聖女は守護騎士達と共に魔王に挑み、かろうじて世界は救われた。熾烈な戦いの中、多くの魂が消えていった。その中に聖女が愛した騎士もいた。#twnovel 聖女は夜空を見上げ涙する。青い火花になって翔けたあの人を私は決して忘れない。




騎士は愛した姫を救う為、敵国と戦った。勝利はしたが、帰った来たのは姫の亡骸だった。騎士は王になった。その肩にはいつしか鷹が止まるようになる。王は何故か鷹を愛おしく思い、姫の好きだったサクサクの焼き菓子をやった。#twnovel 『私の体は朽ちたとしても、魂はあなたへ戻ると誓ったでしょ?』




お姉ちゃんと探検ごっこをして、私はお気に入りのぬくぬくしたクマのぬいぐるみをどこかへ落としてしまった。夕暮れ時にやっと見つけたときには、犬にかまれてボロボロ。大泣きする私をお姉ちゃんは慰めてくれた。#twnovel 翌日、クマはカラフルなつぎはぎ姿で生まれ変わった!かわらず温かかった。




すべり台をずるずる滑り下りる。小学校でケンカをした。友達を馬鹿にされて黙ってられず、思わず手が出た。あいつは些細なことなのにと言ったけど、俺はそうは思えなかった。#twnovel 「けど、ケンちゃんが怒ってくれてうれしかったよ」少し気が晴れた。今度は鼻歌交じりに、すべり台から飛び降りた。




スナイパーと言えば体裁はいいが、俺は単なる組織の殺し屋だ。的に弾を当てるだけだが、それを苦痛に思うようになったのはいつの頃だったか……。こんな気持ちはリスクにしかならない。知られたら消されるのは俺の方だ。#twnovel 終わりは思ったより早く来た。胸に開いた風穴に、自由が吹き抜ける。




「姫、お逃げください!」騎士にそう促されるままに、血煙の中、必死に走った。あの時、私は生きることを選んだと言えるのだろうか?身勝手に、もそんな言い訳をしたくなる。皆に生かされたというのに、私は皆と共に死にたかったから。#twnovel 亡国の姫君は、市井に身をやつしひたすらに弔いを祈る。




回りの動きが止まったように見える。スリーを打つ時はいつもそうだ。心地よいプレッシャー。リングまでの弧を描く軌道が未来視のように見える瞬間、すかさずボールを放つ。#twnovel 歓声とチームメイトの笑顔を見れば、役目を果たしたと分かる。そして、俺は疲れを忘れバッシュを鳴らして駆け出した。




彼を失って時が止まった。無意識に彼のいた左側を目で追ってしまう。いつも私を支えてくれていたのに気づきもしなかった。彼だけが私に真実を告げてくれていた。それが残酷な現実だとしても…。だから信じて身を預けられた。#twnovel 「腕時計戻ってきた!これがないと調子でないんだよね☆」




どうして魅了されずにいられようか。星を散りばめた夜空の黒髪。愛くるしい黒曜石の瞳。真珠のような穢れのない肌。月から来た姫とも知らず、男たちは夢中になり我を忘れ手に入れようとした。そうして皆、命を失った。#twnovel 姫の白檀の扇の影にあるのは、憂いの涙かそれともあざけりの嗤いか。




俺はベテラン傭兵だ。20年も戦場を転々としている。戦争は殺るか殺られるか、勝つためには狡猾な汚さが必要だ。騎士道精神なんてケツを拭くにも役立たねえ。そう言うとまだ新兵のアイツはひどく悲しい顔をした。#twnovel けどな、俺が血反吐を吐いて瞼を閉じる今、未来を託したいのはアイツなんだ。




茜色の空に無数のカラスが飛んでいる。黒い両翼は影絵のように空を切り抜く。

俺は、舌打ちをし足元の小石を投げつけた。カラスなんて大嫌いだ。鳴き声がゲーゲーうるさい。なりふり構わずゴミを漁って生き汚い。群れてひとりじゃ何もできない。#twnovel 本当に人間によく似てやがる。




幼い頃、お母様はいつも私の髪に大きなリボンを結んでくれた。幸せになりますようにと願いながら。だから、今だにリボン飾りのあるドレスを着る。#twnovel 両親が死に屋敷を守るには望まぬ結婚を受け入れるしかなかった。胸元の細いリボンの結び目がスルリと解かれる。もう、あの頃には戻れない。




未開の惑星に何を持っていくか?新米に聞かれて思案する。

そうさな、ドライバー1本、これだけは譲れない。

使い慣れた工具は、手の延長線上にあるものでなければいけない。

指とそう変わらない繊細な感覚が必要だ。

これで何度、宇宙船を直し危機を脱したことか。なあ、相棒?#twnovel 




スーツはビジネスマンの戦闘服。いつもスーツ姿の営業の長谷川先輩がYシャツの袖をまくり寄って来た。新人の私がよろよろと重いダンボール箱を運んでいるのを見かねてだ。上着を脱いだ軽装にドキッとする。「こういう大荷物の納品は男手を頼れ」#twnovel 装備を解いた方がカッコいいなんてズルい…。



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