劣等感に溺れて

遥瀬 唯

漆黒色の私



夜になるとよく涙が頬を伝う。


灯火1つない暗闇でうずくまって


ぽつりぽつりと足りないことを呟いていく。



あの子にはあって、私にはないもの。


あの子にはできて、私にはできないこと。



挙げられることは全部


他人と比べた結果ばかり。



私が誰かに勝てることなんかきっとない。


そう思う度に涙が零れる。




悔しい訳でも悲しい訳でもない。


ただ、虚しいだけだ。



何も出来ない自分が憎くて、


こんな自分のままでいることが辛いだけ。



涙の理由が分かっていたとしても


私は変われない。


どれだけの努力を積んだって


小さい頭脳しか持ち合わせていない私じゃ、


みんなには敵わない。



だから私は、一生こんな負け犬のままだ。




カーテンを捲れば


月の煌びやかな光が降り注ぐ。



私には眩しすぎるほどのキラキラの輝き。




そんな輝きに耐えられなくなって


カーテンを閉じた。



すると、真っ暗な闇に早変わりした。



私にはやっぱり、漆黒が似合っている。


どんな色にも染まらない、


救いようのない暗い色。



小さな輝きすら通さないこの色は


今の私のようだ。



そんなことを思って小さくため息をついた。




夜が深まる内に


いつの間にか瞼を閉じていた。



ジリリリリ




耳元で鳴り響く目覚まし時計。


憂鬱な朝の始まりを今日も告げた。




朝ごはんなんて食べる気にもなれず


準備をして鞄を持ち出し


静かに家を出た。




両親が外国へと旅立って早2年。


1人の生活になんてもう慣れた。



寂しさも虚しさも、もうない。



いつの間にかぽっかりと空いた胸の穴には


愛の代わりに哀が溜まった。



そんなことを感じてそっと胸に手を当てた。


ドクンと動く心臓は


心なしか冷たく感じた。




そうしている内に学校が見えてきた。


少しずつ近づく騒がしい声に


私の足は重くなっていく。




大切な友達の傍で


今日も勝手に劣等感に溺れていく。





いつになったら私は



漆黒色から抜け出せるのだろうか。






そんな救いを求めるような思いを




胸のどこかに抱えながら。






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