第29話 大賢者の失敗
コンコン
「シュウダ準備はできているかい?」
そう言ってシュウダの部屋をノックしたのは、大賢者ラーン。
昨日、魔王討伐の正式発表と、聖騎士セーラの失踪をかくすために、セーラが病にかかり、その病を治療できる他種族か薬を探すために、3人が旅に出るという発表がされた。
ラーンのノックに返事をせずにシュウダは扉を開く。
「ああ、準備は整っている!」
「私も大丈夫です!」
扉を開けて、シュウダとサイドがラーンに力強く返事をする。
「うん、いい目をしている。魔王討伐の最終決戦前を思い出す。じゃあ、行くよ」
そう言うとラーンは、四人の先頭を歩きはじめる。そんなラーンにサイドが質問する。
「ラーン様、ラーン様は今どこに向かわれているのでしょうか?」
「ああ、すまない。まだ行先を言ってなかったね。私は今、王都の冒険者ギルドに行って情報収集をしようと思っている」
そう言ったラーンの言葉にサイドは目を見開いて驚き、あわてて尋ねる。
「で、ですが、ラーン様。昨日の発表でセーラ様は、病にかかっていると発表されています。そんなセーラ様を私達が探せば、本当の事がばれてしまうのでは……仮にばれなくてもセーラ様が病にも関わらず出歩いたとおもわれるのでは?」
「うん、さすがサイドちゃん。そこでサイドちゃんに質問! 旅に必要な物で冒険者ギルドに関連する者ってなんだと思う?」
ラーンにそう聞かれ、サイドは歩きながらおとがいに手を当てる。
「向かう場所までに出る魔物の情報でしょうか?」
「ブブー不正解。でもその回答はサイドちゃんが賢いから出たものだね……じゃあ、ハーゲン、シュウダ、二人はなんだと思う? ちなみに答えはもっと単純なものだよ」
ラーンにそう言われて二人は考えはじめる。しばらくしてハーゲンが答える。
「向かう場所への地図でしょうか?」
「それは、賢者と言われているハーゲン、君の頭の中に入っていないかい?」
「……ひさしく地図を見てないので、もしかしたら変わっているかもしれないと思いまして……」
「たしかに、その情報もギルドで確認する予定だけど、正解じゃないね」
残りはシュウダとなり、ハーゲンとサイドがシュウダを見る。
「もしかして……お金?」
「正解! 私達が旅をするために一番必要でしょう? まさか、冒険者ギルドで依頼を受けながら進もうと思っている?」
ラーンがそう言うとハーゲンとサイドが顔をぶんぶんと左右に振る。
「それに、セーラとジェノの二人はどこに行ったと思う?」
ラーンの質問にハーゲンがすぐに答える。
「王都の外でしょうか?」
「正解! まぁ、正確には人の国の外かな?」
「なぜ、そう思うのですか?」
そう質問をしたのはサイド。
「まず、人の国でなんとかなる事なら、二人は行方をくらませなかったはず。もっと言うなら、セーラ達が行方をくらませた原因は、人の国の中で解決できない事だと思う」
ラーンの推測に三人は目を丸くして聞き入る。そんな中ラーンはさらに続ける。
「さらに言うなら、シュウダの聖剣を持っていなくなったことから、十中八九その原因は聖剣が関係していると思われる」
「何故そう思うんですか師匠?」
「王宮内でセーラは、何か思い悩んでいたからさ」
「それは俺も気づいていました、たしかセーラが行方をくらませる2、3日前くらいにだったかと……」
「⁉」
ラーンの言葉にハーゲンは同意するが、シュウダはおとがいに手を当て考えはじめる。
そんな様子をも見たラーンがシュウダに尋ねる。
「シュウダは違うのかい?」
「僕は魔王討後に王宮に戻って来て、数日後だったと思う……」
「私とシュウダ、ハーゲンでセーラの様子がおかしいと思った日付がちがうね……時系列に並べると、シュウダ、私、ハーゲンだね。まぁ、この差はそれぞれが魔王討伐後に王宮に戻ってから、セーラを最初に見た日と思われるね……」
「なら師匠、セーラの悩みは魔王討伐後から、王宮に戻るまでに発生したのでしょうか?」
「ああ、そうなると……女神様からもらったスキルが原因? だが、しかし……」
ラーンはそこまで言うと考えはじめる。
(もしや私の読みが間違っていた? セーラの長年の悩みは知っている、それにハーゲンの悩みも……二人の悩みやから二人が何のスキルをもらったかも想像できる……だが、私はシュウダがもらったスキルを読み間違えた?)
そこまで考えると、ラーンはシュウダに尋ねる。
「シュウダ君は女神に何のスキルを願った?」
「僕は……」
ラーンの質問にシュウダは言いよどむ、その様子に見てラーンはそこで思わず尋ねてしまう。
「君が女神に貰ったスキルは、毛の長さを調整するスキルじゃないのかい?」
「⁉」
ラーンの言葉にハーゲンが反応する。
(何⁉ ではセーラがもらったのは毛を生やすスキルだと⁉)
「では……セーラがもらったスキルとは「ハーゲン黙れ!」」
ハーゲンがセーラのスキルを口走ろうとして、ラーンがそれをとめる。
「これからの話は、冒険者ギルドに着いてからだ」
ラーンはそう言うと足早に歩きはじめる。シュウダ、ハーゲン、サイドは顔を見あせると頷き、ラーンの後を追う。
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