第13話

 ブラスタから色々と有益な情報を貰った。先日のスラムでの戦闘に関しても、分析はかなり詳細になされていた。

 埼玉の貴族は元々取るに足らない存在だ。だが、北関東の貴族は一大勢力と言っていい。支配地域は東北地方まで及び、大陸の貴族とも交流が盛んだ。北関東と東の貴族は敵対関係にはあり、長年牽制し合っている。

 10年前に大きな戦争があったとブラスタが言っていた。今回もそれと同じで、大陸の貴族の後押し……というか、圧力を受けて北関東が動いた。

 世界的に見れば、我々が居住しているアジア極東地域は、とるに足らない様な場所だ。大陸の貴族にとっても、それほど魅力は無い。東の貴族が世界に名を馳せているとしても、勢力で見るとたいした事は無い。頭領が聞いたら激怒しそう話だが、ブラスタは冷静に分析をしていた。なんでそこまで詳しく俺に説明してくれたのか、それが不思議だった。

 大陸の貴族。オヤジの実家であるクバイ家も含まれているそうだ。アジアを中心として、かなりの広範囲に勢力を誇っているらしい。世界中の貴族と覇権を争っている。市民が想像も出来ないような戦争が、この100年間でたびたび起こっていたという。

 東の貴族は傭兵として、戦争にたびたび参戦している。主にヨーロッパの勢力と関係があるとのこと。血縁もあるらしい。そういえばブラスタの奥さんは、どうみてもご近所じゃ見かけないような、立派な顔立ちと、グラマラスな体型をしていた。ブラスタやカイナにしても、いくらか西洋的な血を感じる。

 今回の北関東との争いは、アジア貴族とヨーロッパ貴族との関係悪化が遠因になっている。東の貴族はアジア地域にあって、ヨーロッパ勢力に与(くみ)する集団だからだ。それで東の貴族が狙われている。ようやく理由が分かった。複雑でめんどくせえ。


 街に戻った俺は自分の部屋で頭を抱えていた。どうしたらいいものか。戦争はもうすぐ始まる。東の貴族が負ければ、ブラスタが言っていたように、俺たちの街もただでは済まないだろう。大局(たいきょく)的に考えて、俺も戦争に出るべきだろうか。免疫系が足りない、とブラスタが言った言葉が頭に焼き付いている。俺が参戦すれば勝率5割が8割になる。ブラスタの言葉がどこまで本当なのか、何の保障も無いわけだが。

 とにかくカイナには話を伝える義務があるだろう。だがその前に家族会議だ。やっかいだが後回しにするわけには行かない。

「サイカ、起きてるか」

 音声通信を送った。

「何? そろそろ寝ようと思ってたんだけど」

 機嫌の悪い声が返ってきた。

「カイナも一緒か?」

「……そうだけど。……いけなかった?」

 サイカの声が急に小さくなった。

「それはいいさ。悪いけどサイカ、今から俺の部屋に来てくれるか? カイナも後で俺の部屋に呼ぶ。個別に話をしたい。大切な事なんだ」

 俺は言った。

「明日じゃダメなの? わざわざお兄ちゃんのカビ臭い部屋に行かなきゃダメ? 私もうお風呂に入ったんだけど」

「悪いな。割と緊急なんだ」

「分かった。じゃあ10分後に行く」

 俺の本気が伝わったのか、サイカが真面目な口調で答えた。


「ケイスケ。モニターしてるな?」

 ケイスケなら気が付いたはずだ。

「……聞いてました」

 少し恥かしそうにして、ケイスケが言った。あいつ、サイカの部屋もモニターしてたな。

「よし。これからたぶん、けっこう重要な話をするから記録しておいてくれ。場合によっては情報を加工して、街のみんなにも知らせて欲しい。知らせるべきところだけな。判断はお前に任せる。頼んでいいか?」

「了解しました」

 ケイスケが緊張した声で言った。


 エレベーターの重い音が俺の部屋に響いた。ドアが開いて、子供パジャマを着たサイカが現れた。

「お前、恋人といるのにまだそんなパジャマ着てるのか」

 俺は笑って言った。

「パジャマを変えると眠れないのよ。別にいいでしょ。お兄ちゃんには関係無い」

 ふてくされた表情でサイカが言って、部屋の隅から椅子を引きずり寄せて座った。俺の位置から丁度10メートル。たぶん5センチとずれていない。慣れたもんだ。

「感情抜きでお互い率直に話そう。少しややこしい話なんだが」

 俺は言った。

「もったいぶらないで早く話しなさいよ。前置きが長いのはお兄ちゃんの悪い癖よ」

 早くも怒りの前兆が……。

「俺は今日、カイナの父親に会ってきた。兄貴ともな。お前とカイナの処遇をどうするか、相談しに行ったんだ。怒るなよ? 必要な事だった」

「ウソでしょ……」

 サイカが目を丸くして驚いている。

「カイナの父親だが、かなり衰えていて寝たきりだそうだ。それはお前もカイナに聞いたか? いや、違う。お前は知っているんだよな? 浅草に行って、貴族の日記を盗んだそうだな」

 俺は言った。

「……」

「カイナのオヤジが、お前と友達だと言っていた。俺は度肝を抜かれたんだが。これ、いったいどういうこと?」

 俺は言った。

「……。私の15歳の誕生日に突然メールが来て、お母さんの幼馴染(おさななじみ)だって言われたの。娘の私と懐かしい話がしたいって。最初は胡散臭(うさんくさ)いと思ったけど、私も話が聞きたかったから、返事を返したの。それで昔のお母さんの話、小さい頃どうしていたかとか、断片的に話してくれて。事情があるから、このことは誰にも話さないで欲しいって念を押されたわ。たとえ兄さんにもね」

 サイカがそこで、一つ大きく息を吐いた。

「ちょうど板橋の件の後よ。その人が、自分はもうお迎えが近いから、最後に渡したい物があるって言ってきたの。そこで初めて、相手が東の貴族だって明かされて。私もビックリしたけど、それまでメールのやりとりをしてたから、信頼できる人だと思ったの。浅草に入る手順は、その人が全部お膳立ててくれたから簡単だったわ。私の顔を見てその人、母親にそっくりだって言ってた。会ってたのはほんの5分くらいよ。帰りに日記をもらったの。父さんと、母さんの若い頃のことが書いてあったわ。省かれてる部分もあったけど。あの人は本当に、母さんと父さんのことが好きだったのね。だからわたしに、日記を渡したかったんだと思う」

 目に涙を溜めてサイカが言った。

「そうだったのか……」

 俺は東の貴族、あの爺さんの、しわがれてキビキビした声を思い出した。

「いつかはお兄ちゃんにも話すつもりだったのよ。だけどカイナとの事もあったし、もう少し状況が落ち着いてからって思って……」

 頬っぺたを真っ赤にさせて、サイカが涙を流している。相変わらず感情的だな。しかし俺も、なんだか胸にこみ上げるものを感じた。

「分かった。うん、これですっきりした。片付ける問題はまだあるけど、今日は十分だ。お前は部屋に戻って、カイナに俺の部屋に来るように伝えてくれ。決して悪いようにはしない。信じてくれ」

 俺は言った。サイカが声を出さずに頷いて、椅子から立ち上がった。

「そういやお前、あの爺さんに『サイカちゃん』って呼ばれてたぞ。ものすごいプライドの高そうな爺さんなのに、違和感が凄かったな」

 俺の言葉を聞いてサイカが少し微笑んだ。そして部屋を出て行った。


 カイナが俺の部屋にやって来た。

「そこの椅子の下に缶ビールが置いてある。寝酒にしよう。俺も飲むけどドクターには内緒にな。脳に悪い影響があるとか言って、うるさいんだこれが」

 俺が言うと、カイナが可笑しそうに笑った。そして、さっきまでサイカが座っていた椅子に腰を下ろした。

「じゃあ乾杯しよう」

 俺は言った。

 缶ビールのプルタブを開け、カイナと乾杯の仕草を交わして、俺はビールを自分の喉に注ぎ込んだ。アルコールがゆっくりと胃に沁みこんで行く。

「まだあるからな。飲みたかったら遠慮せずに言ってくれ。だけど貴族はビールなんて飲まないのかな? スコッチとか、ウィスキーとか飲んでそうだよな。お前の兄貴とかどうだ? やっぱウィスキーとか飲むのかな」

 俺は言った。

「兄は日本酒です。それと焼酎。度が強いので、一緒に飲む時に僕は、ビールで勘弁してもらっています」

 しんみりとした表情でカイナが言った。

「お前にとって兄貴はどんな存在? まあお前は家出してきたんだから、あんまり仲が良いわけないか」

 俺は言った。

「僕は3人兄弟の末っ子なんですが、次兄は10年くらい前の戦争で死んでいます。ですので、上は長兄(ちょうけい)1人なんです。長兄とは年が離れています。今……38だったかな。父親みたいにやかましいですよ。だからまるで、家に父親が2人いる感じです」

 カイナが少し笑って言った。

「オヤジが2人もいるんじゃな。そりゃ家出もしたくなるわな」

「あの……カジハルさん。この度はご迷惑をお掛けして、本当に申し訳ありません。近いうちに一度、家に帰って兄と話をして来ます。僕自身、まだどのように身を振るべきか判断が付いていないのですが。ただ、サイカさんと別れる事は出来ません。すごく勝手な事を言っているのは、自分でもよく分かっているのですが……」

 ビールの缶を握り締めてカイナが言った。

「その事だけどな。俺は今日浅草に行って、お前の兄貴に会って来た。それで色々話してきたよ。ゴメンな、フライングして」

 カイナがこちらを見て呆然としている。

「俺は、カイナとサイカの好きにやればいいと思ってる。ただ貴族と市民だからな。早めに話をつけて置かないと、ややこしい事になるかも知れない。というか、既にややこしい事になってるからな。スッキリしたかったんだ俺が。スマン」

 俺は言った。

「あの……兄は何と言ってましたか?」

「うん。基本的にはカイナの好きにすればいいってさ。結構話せる奴だったな、お前の兄貴。あ、そうだ。お前のオヤジとも話したよ。すごいな、お前のオヤジは。まさに貴族って感じで偉そうだった」

 俺は笑った。

「父と……どんな話をしたんですか?」

 カイナがかなり動揺している。何だか申し訳ない。

「話をしたと言うより、一方的にオヤジさんが話してたんだけどな。俺の両親とお前のオヤジさんの関係について話を聞いた。あとは盗まれた日記の件だ。それはサイカから聞いてるな?」

「はい……」

「それとな、どうやら戦争が始まるらしい」

 俺は言った。

「! ……ああ、この前のスラムの戦闘で、僕がちょっかいを出したせいですね。開戦の口実を、相手に与えてしまったんだな……」

 カイナは一瞬で事態を把握したようだ。戦争に関して言えば、こいつはプロだからな。

「お前の兄貴、ブラスタが、お前に帰ってきて欲しいと言っていた。だがこれは強制じゃない。あくまでお前が判断すればいいとの事だ。どうする。参戦するのか?」

 俺は訊いた。

「もちろんです。貴族として僕には責任があります。ましてや、開戦のきっかけを作ったのはこの僕ですから」

 カイナが頷いて言った。

「じゃあサイカの事はどうするんだ? 家出をしてまでサイカと一緒にいることに決めたんだろ? お前が死んだら俺の妹はどうなる。貴族の理屈は通じないぜ?」

 俺はわざと意地の悪い言い方をした。

「言葉もありません。しかし、行かないわけには……」

 目を瞑って、苦しそうな表情でカイナが言った。

「この戦争がどういう意味を持っているのか、ブラスタに説明をしてもらった。俺は市民だから、直接は関係が無い。だが、東の貴族が今回の戦争に負けたら、俺たち市民もただじゃ済まなくなる。でな、俺も戦争に行くことに決めたよ。免疫系(めんえきけい)が役に立つらしい」

 俺は言った。

「カジハルさん! ダメですよそれは! 兄に乗せられてはいけません。捨て駒にされるだけですよ!」

 カイナが言った。

「そのことはよく分かってる。だがお前の兄貴も死ぬ気だぞ。貴族にプライドがあるとしたらな、市民にもプライドがあるんだ。俺は俺の意志で戦争に参加する」

ただし条件がある」

「そんな……。そんな馬鹿な事が……」

 カイナが首を振りながら言った。

「あとな、お前が戦争に参加するなら、俺はお前の盾になる。お前を敵に殺させない。これはお前の為じゃない。サイカの為だ。お前が死んだらあいつ、どうなるか分からん。感情的な奴だからな。下手したらお前の仇討ちをするとか言い出す恐れがある。あいつの性格なら十分考えられるだろ? 俺はその時に、あいつを止められる自信が無い」

 俺は言った。

「とにかく俺は決めたからな。後はカイナ、お前に任せるよ」

「……僕が参戦しなかったら、カジハルさんも一緒に避難してくれますか?」

「だから言ったろ? 俺は俺の意志で戦争に参加するって。俺が逃げたら誰がこの街を守るんだよ。プライドというよりも、これは当たり前の行動だよな。まあ確かにお前の兄貴に感化された部分もある。ああいうタイプに俺は弱いんだ。ブラスタはホントに熱い男だよな」

 俺は言った。

「一晩考えさせて下さい、と言いたい所ですけれど、僕はやはり戦争に行かなければなりません。サイカをなんとか説得しないと……」

 カイナが難しい顔をして言った。

「そうそれ。それが一番大変だぞ。それが俺の役目じゃなくて本当にありがたい。まあアレだ。愛の力でなんとかしてくれ。お前ならいけるよ。まったく驚くほどサイカが素直だもんな、お前の前だと」

 俺は苦笑して言った。


 サイカさんには明日(あす)、機(き)を見て話します、とカイナが少し困った顔で言った。そして、意外なほどしっかりとした足取りで俺の部屋を出て行った。さすが貴族。戦争に行くと決まっても、怖気づくような気配が全く無かった。むしろ俺の方が緊張している。我ながら情けない。


 俺はドクターに、戦争に参加する事を告げた。彼女は表情を変えずに、俺の話を静かに聞いていた。

「ほんと馬鹿よね……」

 そう言ってドクターは笑ってくれた。

 

 激怒したサイカの金切り声が、いつごろ俺の部屋に響いて来るのか。正午(しょうご)を過ぎて、俺はかなりビビって待っていたが、意外なことに最初の通信はカイナからだった。

「カジハルさん。サイカにはちゃんと話しました。どこまで分かってもらえたか、少し自信が無いのですが……。それで、急で申し訳ないのですが、僕は今夜家に帰ろうと思います。カジハルさんはどうされますか?」

 カイナが言った。

「じゃあ俺も今夜発つよ。と言っても俺はネットで行けばいい話だからな。浅草の街で落ち合おう。帰り道一人で大丈夫か? そういやお前、生身でこの街まで来たんだよな。度胸があるというか、やっぱりそれも愛の力?」

 俺は言った。

「実家に連絡して、装甲車(そうこうしゃ)で帰る予定です。門番のケイスケさんにも、その旨伝えてあります」

 カイナが笑って言った。装甲車って、さすが貴族だよな。気を付けてな、と言って俺は通信を切った。


 午後5時になってドクターから通信が入った。

「夕食、一緒に食べましょう。最後の晩餐でしょ」

「うん、そうだな。だけどサイカがまだ何にも言ってこないんだよ。あいつがいつ怒鳴り込んで来るかと思うと、飯もうまく喉を通らない」

 俺はかなり本気で言った。

「さっきサイカに聞いたらね、夕飯は二人で食べて、だって。その後で兄さんの部屋に行きますって。気を使ってるのかしらね」

 ドクターが笑って言った。サイカの奴、やっぱり超怒ってるよ。まいったな。まあ、初めからただで済むとは思っていなかったけど。

 

 ドクターと飯を食べて、それからいろいろちょっとヤって、午後8時になった。カイナはもう街を出て行った。俺もそろそろマシンに入らなければならない。サイカに俺の方から通信を入れたほうがいいのか迷う。俺も相当なビビリだな。そう思ってたら、エレベーターの到着を知らせる重い音が俺の部屋に響いた。ついに来たぞ。

 ドアが開いてサイカが現れた。汚染防護(おせんぼうご)スーツを着ている。俺の方に向かってまっすぐ歩いて来る。10メートルのラインを超えて、俺の手元まで。久々に間近に見る、生身のサイカの表情。

「わざわざスーツ、着てくれたんだな」

 俺は言った。サイカは何も言わずに、俺の背中に手を回した。俺の胸に頭をくっつけて、抱きしめている腕に力を入れてきた。よかった、怒ってない。

 スーツ越しだが、俺は妹の頭を手で撫でた。前髪に、母親の形見のヘアピンを付けている。俺は少し心が震えた。

 途端、俺の向うずねをサイカが思いっきり蹴飛ばしてきた。スーツの足には金属板が入っている。死ぬほど痛い。俺はぶっ倒れて、足を抱えてのた打ち回った。

「死にに行くんでしょ! なにカッコつけてんのよ。貴族の真似なんて、お兄ちゃんには似合わないわよ!」

 床に這いつくばっている俺を見下ろして、涙をボロボロこぼしてサイカが言った。

「おまえな! 最後くらい優しくしろよ……。というか、死ぬと決まってるわけじゃないだろ」

 足がまだ痛過ぎる。歯を食いしばって俺は言った。

「カイナは貴族なんだから一応筋が通ってるわよ! なんでお兄ちゃんが行く必要があるのよ! 私の為にカイナを守るって、おかしいじゃない! そしたら誰が私を守ってくれるのよ……」

 サイカの涙が止まらない。俺は足の痛みにこらえて立ち上がった。妹の体を抱きしめて、頭をそっと撫でる。

「正直な、俺もよく分からないんだよ。戦争は貴族の仕事だし、市民には生きる為の別の戦いがあると思う。頭では分かってるんだ。だけど、何故か血が騒ぐというのかな。免疫系(めんえきけい)が役に立つって分かった時に、俺がやらないと誰がやるんだって思っちゃったんだよな。なかなか面白そうだ、とも思ってしまった。しょうもないよな」

 俺は言った。

「わたしも一緒に行く……。わたしも免疫系だもの。役に立つわ」

 サイカが泣きはらした目で、俺を睨みつけて言った。

「……そしたらさ、俺とカイナは死んだも同然だ。戦う意味がなくなる。分かるだろ」

 俺は静かに言った。

「私を守るためにって、理由にしてるだけじゃない……。私一人生き残っても、なんの意味もないわよ……」

 再び涙がこぼれ落ちる。

「安心しろよ。免疫系はそうそう長生きできない。お前もいずれ大活躍する日が来るよ。それまでせいぜいカイナと楽しく暮らせ。ちゃんと子作りしろよ? 人類の未来の為に」

 俺は笑って言った。サイカが俺の胸を突き飛ばした。

「日記は? 父さんと母さんの若い頃の話、興味ないの?」

 サイカが言った。

「うーん、そうだな。暇な時にでも読ませてもらおう。俺のライブラリに転送しといてくれよ」

 俺は言った。分かった、と言ってサイカがもう一度、俺を抱きしめてくれた。

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