第6話
あの祭りの日から
日に日に寒さが増していった
ジゼルはベットに横たわりながらロイから貰った靴を窓辺に飾って眺めていた。
日の光に反射した雪の照り返しで、キラキラと光る。
最近体の調子が思わしくなく、熱もあるようだったので、今日は聖堂での仕事は休ませてもらっていた。頭が痛く、体が怠い。しかし、ガラスの靴を見つめていると少しは気が晴れた。
ロイはーー私のことどう思ってくれてるのかな。
ジゼルは昨日のことの様にあのダンスで触れ合った手の感触や胸の硬さを思い出してドキドキした。
しかし熱も相まって顔がまた赤くなってる気がして
ぼーっとなった。そして、目を一旦ぎゅっと閉じた。
ロイは神様に仕える人!私を妹のように大切にしてくれてるーーーだけ!
ちょっと寂しく思いながらもジゼルは自分を律しようとした。
その瞬間
突然
口から血が溢れ出てきた
ジゼルは、ショックだった。
それは最近見慣れた光景だったからだ。薄々感じていた自分の未来が確信へと変わったのだ。
なぜならばここ数年、近くの街ではこの病にかかっている人が多くいるらしく、この田舎の村にもその病からの避難を目的に人々が少なからず移動してきた。そこで食べ物や、寝床を失った人がこの聖堂にも助けを求めに来るのだが、その中で病にかかってることに気付かず来た人が、ここで発症することもあったからだ。彼らは総じて体が熱くなり、血を吐いて死んだ。中には耳元が大きく膨らんだり、肌に腫れ物ができる人もいた。
そして、ジゼルは、吐いた血を見つめながら
神様のものであるロイを好きになった天罰だと感じた。
そして、首にある魔獣から噛まれた傷を弄る。
この傷はジゼルにとって最後のおばあさんとのつながりのような感覚があった。
おばあさんを思い出そうと思ったのだ。おばあさんごめんね。私、天国に行けないかも。
おばあさん・・・医者を呼ぼうかと打診したのに。治療費がかかるのをいつも気にして。
以前は、それで死んでしまったんだから。と後悔していた。
しかし、ジゼルは今気付いた。その時はきっとおばあさんはお金とかそうゆうことじゃなくて、ただ私に心配させたくなかったんだ。
そして死期に気づいた時にはきっと手遅れだと思ったのかもしれないーーーと
そう、ジゼルは今自分が同じ立場になっておばあさんの気持ちがわかったような気がした。
そして、おばあさんの優しさを感じて、ジゼルの目の周りが真っ赤になるまで静かに泣いた。
ジゼルは一人、隠れるように血に染まったシーツをいそいそと、洗い場へ洗いにいった。
体がしんどくて歩くのもやっとだったが、それ以上に誰にも心配をかけたく無かったのだ。
もう自分は手遅れ、誰にも心配かけず、静かに逝きたい。
しかし、洗っていると涙がやはり次々と落ちた。もう流しきって乾いたと思ってたのに。
この世界やロイにお別れしなくてはならないことがとても悲しかった。
するとそこへロザリオを咥えた太った黒猫が姿を現した。
「シャルル!返せ!!」
ジゼルの聞きなれた声だった。そして今一番会いたくて、会いたくない声。
ロイだ。
ジゼルは涙が溢れるのを抑えることができず、バレないように咄嗟に俯いた。
「あれ、ジゼル、こんな場所でどうしたの?」
声が近づいてきた。
ジゼルは顔をシーツに埋め、瞬間顔を上げて何事もなかったように笑った。
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