第68話 師匠
「とにかく……
「私も調べる」もう覚悟はできている。「どんな残酷な真実が明らかになっても……私は、私自身の手で真相を知りたい。どうして
「……」
「なんとなく……理由は推測できてるよ。でも……それは
……私の手で知るべき真実……
それを、今この場で聞くことは簡単だ。だけど……それでは意味がないのだと思う。私の冤罪事件くらいなら
私自身の手で、行き着くべきなのだ。
そして……
「本当はね……私も、なんとなく想像できてる。
「ヘぇ……私の推測によると、結構……残酷だよ? それも、
「……じゃあ、当たってるかな」
私だって、本当だと思いたくない。もっと別の理由があってほしいと思う。だから、今まで気が付かないフリをしていた。だけど冷静になって……この結論が正しいと思えるようになった。
「それを確かめるには……どうしたらいい?」
「……直接聞くしかないよ。社長に」
「そうだね……」それから
「……逃げる?」
「うん。空港に向かってるってさ。国外逃亡する気みたいだね」
……社長は私に冤罪をふっかけたことと、脱税やらその他のことで警察に追われているはずだ。なんなら、もう捕まっていてもおかしくない。その状況で空港まで逃げるとなると、警察関係者が協力していると考えるのが自然だ。
だから、社長には余裕があった。警察に捕まっても国外逃亡できる自信があるから、余裕だった。
しかし……
「その……社長が空港に向かったっていうのは……どこから仕入れた情報なの? ずっと見張ってたの?」
「見張りもいたけど……警察内部にはいられるとさすがに監視できないからね。だから、今回は見張りじゃない」
「……じゃあ、なんで……」
「簡単だよ。社長が空港に向かうために呼んだ車……その運転手が
「えぇ……」そんなアホな……「……」
「なにその顔。社長が空港まで逃げるとなったら、車を使うでしょ。そして追われている状況で公共交通機関は使いづらい。電車だってタクシーだって怖い。だったら、誰か信用できる人を呼んで送ってもらうしかないよ。まぁ……その信用できる人が裏切り者だったわけだけど」
怖い。この人怖い。
……そういえばいつだったか……社長が新しい運転手を雇ったって聞いたな。その人が、どうやら
その頃から社長は
……追い詰められた社長が国外逃亡する。信用できる人を呼んで車で逃げる……そこまで読み切った上で、先んじて内通者となる運転手を送り込んでおく。
……怖すぎる。絶対に
「さて、追いかけようか」
「……」なにが偶然だ。白々しい。「……私たちも車で?」
「うん。すでに呼んである。こっちの運転手は裏切り者じゃないから、安心してね」別に運転手に恐怖は感じてないよ。
私の隣で、
「……あの人……何者なんですか?」
「……私の、ストーカーの師匠」
「……」私の言葉を聞いて、
ご愁傷さまである。本当に気の毒だ。だからといって
今になって考えれば……なかなか
……これに関しては、完全に私のせいだな。弁明の余地はまったくない。完全に私が悪い。とはいえ
……
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