第8話

「ふわぁー」

 

 王都へとやってきた僕。

 まず僕がやってきたのは宿屋であった。

 三日も森の中で過ごした僕の体は限界であり、柔らかいベッドでの休養を欲していた……体も汚くなっているのでお風呂にも入りたい。

 ちなみに僕の汗の匂いはフローラルな香りがガチでするので心配はしていない……ドワーフ、結構女の子も含めて匂いもキツかったんだけど、僕は特別なようである。


「……リスト様。はしたないですよ」

 

 ベッドでだらける僕を見てリリス様が苦言の言葉を呈する。

 

「僕はただの少女ですよ。リリス様。僕如きを様付けで呼ぶ必要はございませんよ」

 

「いえ、リスト様はエミリア様の命の恩人にございますから……そんなこと出来ませんよ」


「……ただの平民が貴族様に様付けで呼ばれるのは嫌なんですよ」


「ですが……」


「でしたら、これでどうでしょう?僕もリリス様に様付けもしないし、敬語も使わない。その代わりリリス様も僕を様付けしないし、敬語も使わない。これでどうでしょうか?」


「……むむ。ま、まぁ……それなら……」


 僕の提案にリリス様……もといリリスが頷いてくれる。

 あっ、この提案は受け入れてくれるんだ……この提案を受け入れさせるための理由付けを必死に考えていたのに。


「それは良かった!これからよろしくね!リリス!」


「……ッ!え、えぇ!よろしく……り、リスト」


「うん、うん」


 僕は少しばかり照れそうにしながら僕の名前を呼ぶリリスを前に頷き、そして笑い声を浮かべる。


「ふふふ……このフレンドリーさならもう友達になったと言ってもいいよね」


「ッ!え、えぇ!そうね!」

 

 僕の言葉にリリスが力強く頷く。


「……ね、ねぇ……僕ってば三日間森を彷徨っていたこともあって、お腹ペコペコかつ体も汗でベタべタ。服も汚い。色々と買い物をしたいのだけど……でも、お金がない。あの……お金貸して?」


 友だちになったばかりの人にこういうこと言うのはちょっとあれだが……僕は本当にお金がないのである。


「も、もちろん!友達だからね!」


「……あ、ありがとう」

 

 友達の居ない子と金目当てで友だちになるクソ野郎みたいなことになっていない?僕……あっ、今の僕は少女だから野郎ではないか。

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