毛むくじゃらなドワーフたちからパイ◯ンだからと国から追放されたTS転生ドワーフパイ◯ン褐色ロリ娘である僕は飢饉に苦しむ国家へと流れ着き、そこで農業革命を起こして国を救っちゃいます!

リヒト

第1話

 荒れる海の上。

 謎の鳥に体を吊られ、大空を羽ばたく僕は。


「パイ◯ンで国家追放ってマ?」

 

 死んだ魚のような目で悠々自適に大皿を駆け抜ける僕は元気に海面より飛び出したトビウオをボーっと眺める。

 ……あっ。魚が鳥に食べられた。

 死んだ魚のような目をしている僕と死んだ魚の目が会う……ような気がした。


「自然って辛いなぁ……」

 

 呆然と言葉を漏らしながら僕はなんでこんなことになったのか……それを思い出していた。

 

 ■■■■■

 

 別に、僕は正義感の強い男の子というわけでも、勇敢な男の子というわけでもなかった。


「危ないッ!」

 

 だけど、そのときだけはどうしても僕の体は動いてしまった。

 僕の足は地面を勢いよく踏みしめ、大地を駆け抜ける。


「キャッ!?」

 

 耳にイヤホンをつけ、視線をスマホへと落とし、自分へと向かってくる暴走トラックに気づかない少女の体を僕は突き飛ばす。


「……ッ!?」

 

 衝動的に動いてしまった僕の体は、足は、少女を弾き飛ばした段階で停止。

 僕は物凄いスピードを出して突っ込んでくるトラックの前で立ち止まる。


「あ、無理……」


 それから逃げ出そうと再び僕が足を前に出した頃には時すでに遅し。


 ダンッ!

 

 僕の体が己の意思で動くよりも早く、僕の体がトラックの意思で動き、ボロ雑巾のように吹き飛ばされて地面を転がる。


「あー。死んだな……これ」

 

 自分の間近に迫ってくる死。

 死ぬのは怖いなんて良く聞くけど……実際に死が迫ってくればなんてことはない。

 感覚がバグっているのか、痛くもないし、寒くもない……何も感じない。

 ただ、自分の中の大切な何かが零れ落ちていく感覚だけがあり、霞みゆく自分の視界に真っ赤な血が地面に流れていることがわかる。


 あぁ……何も聞こえない。何も見えない。


 堕ちていく─────。

 

 ■■■■■


 そう。

 あの日、トラックで僕は確かに跳ねられ、己の生涯に幕を下ろしたはずだった。

 しかし、何の因果か。

 死んだはずの僕は魔物あり、魔法あり、異種族ありのファンタジー世界へと転生したのだ。


 何故か女体化して。

 

 何故か人でなくドワーフとして。

 

 男、女関係なく子供であっても毛むくじゃらなドワーフの中の突然変異、毛の生えないドワーフとして。

 

「パイ◯ンで国家追放は酷い……良いじゃん、パイ◯ン。世の男性にはウケると思うよ?うん」

 

 ドワーフにとって体毛は命。

 その体毛が頭以外にない僕はドワーフにあらず!と言われ、国から追放されてしまったのだ。


「追放方法が鳥で運ぶってどうなん?もうちょい他になかったのかな……」

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