買い物に行く。
翌日、5月15日は
だから今日は服を買いに行くことにする。
高校に向かう道をさらに進み、坂を下りた先にある大型ショッピングモールに行こう。
あそこに県立高魔が丘高等学校の制服を売っている服屋があったずだ。
しかし……。
「雨、ですね……」
今日はあいにくの雨で、気が進まない。
しかし、明日は平日で学校に行かなければならないので、昨日の戦闘によって使い物にならなくなってしまった制服の代わりを今日のうちに用意しないと……。
傘をさして坂を下って行く。
そして15分~20分も歩けばショッピングモールが見えてきた。
この大型ショッピングモール、通称「リオンモール」は3年前にオープンした新しい建物だ。
それまでは隣町に行かないとこのような施設がなく、人口増加による需要の増加を見越して出店してくれた、ショッピングモールチェーンの大手会社「ReON」には感謝感謝だ。
リオン高魔が丘店は北棟と南棟に別れている。
北棟は半分が駐車場、もう半分がモールになっており、南棟は全面がモールとなっていてモール内には様々な店舗が並んでいる。
「広い世代から頼られる」をコンセプトとして建てられ、市の人口が増加傾向という事もあり、週末は老若男女問わず多くの人がモールを訪れる。
ことに今日は戦勝記念日ということで休日+割引される。
そのため、大通り南出入口を入ると天候が悪いのにも関わらず、多くの人が訪れていた。
「さて…………どこにあるんだっけ……?」
今日来たのは制服と高校のカバンを新調するために来たので、服屋さんはたしか……何階だっけ?
めったに服なんて買わないので場所を覚えていない。
ていうか知らない。
なので案内掲示板に行って確認しようと、入口正面に設置された掲示板を見に行く。
「……あれ? あの人って。」
掲示板の前に立っている人を見て呟いた。
もしその人物が見知らぬ誰かであればさして気にすることもなかっただろう。
しかし、その人物は休日であるはずなのに制服を着ていて、それもその制服は高魔が丘高校のものであったのだ。
その人物の容姿は、私より高めの身長に、肩ほどまで伸びた髪は赤色から桃色へと変わる特徴的なグラデーションヘアー。
昨日高魔が丘高校に転校し、魔導師から殺されそうになっていた私の命を救ってくれた、魔法少女望月桜であった。
近づいて話しかけてみる。
「あのぉ、桜ですよね?」
「うえ……っ!?」
途端、肩を跳ねさせて驚く桜。
振り返って私を見ると目をパチパチさせる。
「な、なんだ……トノカ、か……ビックリした……」
「お、驚かせてすみません。偶然見つけたので声かけました。……ところで、どうして制服なんですか?」
すると、望月桜は一瞬悩むような素振りをしてから言う。
「うーん……前にも言ったっけ。私、いわゆる異世界転生者だからさ、最初に身に着けてた騎士鎧と県から支給された高校の制服しか持ってないんだよね。」
「……へ?」
──い、異世界転生者……?
「まあ最初はそれ以外要らないかなって思ってたけど、なんか制服も破けてたし、よくよく考えたら洗うことも出来ないから今日買いに──」
「い、異世界転生ってどういう事ですか!?!?」
思わず声を荒らげる。
いま桜は「異世界転生者」と言った。
確かに自身のことを「勇者」と自称していたけれど、まさか本当に異世界の勇者なのか……?
そんな私の反応に少し驚きつつ、望月桜は簡潔に答えた。
「え……? どういうことって言われても……異世界からこの世界に転生したってことだけど……」
「……それってホントですか?」
「うん。戦闘フォームの鎧だって異世界の物だよ。」
なんと……だから魔法少女らしからぬ姿だったのか。
でも、突然「異世界転生して来た」と言われても非現実的すぎて信じれない。
「あの、異世界転生ってどんな感じなんですか? 異世界ってどんな世界でしたか!? 転生する前も勇者だったんですかっ!?」
怒涛の質問攻め。
というのも、よく異世界モノのアニメや物語を見ていて「異世界」に憧れがあった。
憧れの「異世界」から来た、それも「転生」してきた人が目の前にいる。
興奮しないわけが無い。
是非、聞きたい!
「1回落ち着いて」
「いでっ……!?」
桜はベシッと私の額にデコピン。
女子高生とは思えない力で、あわや倒れそうになった。
流石は異世界人……。
「うぅ……すいません。でも、せめてお話聞きたいです! どんな世界だったかとか!」
少し考えた後、桜は言う。
「ま、おいおい話すから今は置いといて。」
「置いておかれた……」
「ちょうどいいし、トノカ、案内してくれない?」
「案内、ですか? 良いですけど……どこにです?」
首を傾げると、桜は体の向きを案内掲示板に戻し、ある一点を指した。
「服屋に行きたいんだけど、行き方が分からない。」
「いいですけど……なぜに服屋?」
そう聞くと、桜は少し目を泳がせながら言う。
「……制服しかないし、私服の一着ぐらい持ってた方がいいかなって。」
「なるほど! そういうことなら私に任せてください!」
──このショッピングモールには何回も来たことがありますからね!
そう言って桜の手を引き、エレベーターに向かった。
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