第2話 絶望的な要項

迷宮ハンター試験──迷宮立入許可証取得試験というのが正式名称だ。


 公的な機関となる迷宮監理局が発行している。受験資格は14歳以上且つ、保証人1名(30歳以上に限る)、受験費用に金貨2枚(不合格時は1枚分返却、金貨兌換紙幣は不可)。預託金として合格後金貨1枚(若しくは、金貨兌換紙幣1枚分)が必要になる。


 受験資格は14歳以上とは言うものの、試験内容と他の条件が厳しく若年層のハンターはほぼ皆無である。


 人口管理局としては年々下がっていく人口の減少を食い止めるために、迷宮監理局には条件を厳しくさせている。本来ならば受験年齢をもっと高くしたい所であるが、所謂妥協案という物だった。










 銀貨1枚で健康な人間一人であれば1ヶ月は生活できる生活水準──切り詰める必要はないが、華美な生活をするには足りない……。


 但し、食事量次第では成人男性ならば少々厳しいかもしれないが。




「費用かぁ……」




 ユウトが頭を悩ます。


 大人でも用意するのが悩ましい額だ。


 費用が高額すぎてどうやって工面しようかと言葉もでない。


 募集要項を見て絶望的な金額にがっくりと肩を落とす。




 少々非合法であればそれなりに金額を稼ぐのは手早いが──司法局に拘束されてそれどころじゃ無くなる可能性の方が高い。


 迷宮立入許可証取得試験は司法局に犯罪者として拘束されると10年単位で取得は不可能になる。


 重犯罪を犯すと烙印を身体に刻まれ、生涯司法局の管理下に置かれる。




 ユウトは首を横に数回振る。


 危ない橋を渡りたくない。


──住んでいる地区から追われるのが目に見えているからだ。




「……ほんと、どうしよう………」




 言葉と共にため息が出てくる。


 解決の糸口は、現在見えてこない。




 試験を受ける人たちはどうやって工面しているんだろうか?


 割りのいい金策とか教えてくれないかな……。


 教えてくれそうな知り合いもいないのだが。


 所以、コミュ障──孤児院出身というと一定の距離置かれるのが常である。




 孤児たちは仕事を得るのに後見人が複数必須の場合が多い──揃えられない場合は資格でなれるハンターなどに流れやすいが、落命もしやすく彼らの子供たちも孤児になりやすい。


 ハンターは貧富の差が激しい──いや要求される資質が獲得できる金銭に直結する、非常にシビアな職業である。


 花形の職業でもあり、時に蔑まれる職業である。




 それでも多くの青少年が憧れ、人の忠告を聞き入れず餌食になる──魔性の職業であった。

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