第10話 世界最強の男の3日間①
「いやぁ……どうしようかな」
武器を集めるって言っても何をどうすれば良いんだ?
他の3人に聞こうとするものの、己のプライドがそれを邪魔してくる。
ここはカナリアの受付の人に聞くか。
【酒場カナリア】はバフをかけれる食事サービスの他にクエスト斡旋ギルドでもある。そしてここの最大の特徴は受付の人がNPCでは無くプレイヤーのバイトというところだ。
銀貨を必要としているプレイヤーが戦って死ぬリスクを避けつつお金を稼ぐ方法、しかも戦うよりも銀貨単体で見ると多く集めれるため、結構人気のコンテンツだ。
司はもう一度カナリアの扉を開けてカウンターへと向かった。
「ギルド【カナリア】へようこそ〜。要件はなんですか?」
ダルそうげに働いている受付のお姉さんは気の抜ける声でそう言ってきた。ちゃんと仕事するのかと少し不安になりながらも要件を伝えた。
「武器もらえるクエスト行きたいんですけどなんか良いのありますか?」
「えーと…見た感じ初心者そうだから【悲しみと後悔の墓場】とかどうかな〜?アンデットばっかだし宝箱も探せばまぁまぁあるよ」
初心者向けかつ武器が手に入るダンジョンなら俺にピッタリだと思いながらそのクエストを受けることにした。
「一応クエストってことだからスケルトン30体の討伐は任務としてこなしてきてね〜。あと注意事項なんだけど幼い少女の霊を見かけたら声かけちゃダメだからね〜」
「幼い少女の霊?なんで声かけちゃダメなんですか?」
「私も良くわかんないけどマニュアルにそう言えって書いてたから。まぁ自己責任ってことで〜」
幼い少女の霊…まぁ気にはとどめておこう。
とりあえず結構良さそげなクエストを斡旋してもらえたっぽいし、あのお姉さんには感謝だ。
とにかく時間も無いし、良い武器を確保するためにも早くその墓地とやらに行こう。
◇
司は【悲しみと後悔の墓地】へと来ていた。
——ザシュッ、シュキィィィン——
スケルトンやゾンビなどのアンデッドを言葉通り一刀両断していた。
お姉さんの言っていた通り装備はいい感じに揃いつつ敵は弱いのでバンバン無双していく。一見とても快適なルートに見えるが司からするとそれは退屈なものだった。
「流石に敵が弱すぎる……スリルがねぇ」
そう、スリルが足りないのである。互いが命をかけて生命の灯火をせめぎあう時の魂の高揚、それがこの墓地には足りてないのだ。
それに加えて司の武器はネットヤンキーから取り立てた青等級星1の【闘牛の束】。そこら辺のモブなら普通のプレイヤーでも苦労せず倒せてしまう。それが退屈に拍車をかけていた。
普通の人は快適さを求めるかもしれない、楽に強くなる方を選ぶかもしれない。それを楽しいと感じるから。
しかし世界最強の男は違うのである。どれだけ過酷でも、どれだけ遠回りをしても、そこにスリルがあるのならば追い求める。これが宴道司なのである。
「ん〜なんか面白いこと起きないかねぇ……ん?」
司が墓地をふらふらしていると何やら一つの小さなお墓の前に立っている少女を見つけた。その彼女の体は少し透けているように見えた。
これはお姉さんの説明にあった幼い少女の霊なのでは?いやどう見ても透けてるし…
司はさらに考えを深める。
おそらくあれはその霊ということで間違い無いだろう。そしてお姉さんは確か霊に関してこう注意してた。
「——その霊を見つけたら話しかけたらいけないよ〜」
わかりました、話しかけます。スリルの匂いがぷんぷんするであります。
こうなった司はもう誰にも止められない。
司は少女の霊の隣に座った。
「ねえねえ、なんでここに座ってるの?」
少女が冷たく虚めいた視線を司に向けた。
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