第12話 卒業(2/2)
その後、式典が始まり各学部の主席はレオンハルト殿下から杯をいただき、シオンが生徒代表で卒業証書を授与されて謝辞をスピーチした。うちの両親はとても感動して、父はハンカチで目を拭っていた。
式が終わってリナとライラが化粧室に行ったので、私はシオンとルオンスと一緒にホールの端へ移動した。
ルオンスは何となくホールの死角になる物陰をみて「えっ!」と言った。
私とシオンはルオンスの視線の先に目を向ける。
アダルベルト様がレオンハルト殿下に壁ドンして、キスをしているようだった。
「嘘だろ・・・噂には聞いていたけど。」
ルオンスは呟く。
「やっぱりワイルドなアダルベルト様がタチなのね。」
「「??」」
小説に出てくるような美しい男性カップルのキスなんて興奮してしまいそうだけど、予想に反して気持ちは萎んでいく。
「とりあえず反対側を向いて人が来ないように俺たちが盾になろう。」
シオンの提案に私とルオンスは頷いて反対側を向いた。
「僕、マーキュリー先輩の部下になるんだよなぁ・・・。」
「恋愛対象が男なだけでしょう。職場恋愛なんてザラにあるんだから粛々と仕事すればいいじゃん。」
「なんかドキドキするじゃん。同じ職場ってことは渦中って感じで・・・。」
「渦中って参戦するつもりなの?ダブル三角関係でドロドロ・・・」
ルオンスは警察庁の上級公務員となる。サルニア帝国大学から入庁する中で成績が一番良かった学生は初年度の実地研修が宮内庁の官房長付きとなる。ルオンスは法学部次席で警察庁に入庁する新入職員で最高位の成績だったので皇室の誰かの側付きとなる。そして、ルオンスは幹部候補であることを考えると世代の同じレオンハルト殿下付きになるのがほぼ確実だ。
「変なことに巻き込まれないといいね。最初の3ヶ月は研修だから、配属は4月からね。」
「リリは初日からOJTだもんな。」
「2年間ね。」
「でも1日数時間だろ。」
「美味しすぎる条件だよね。」
確かに法科大学院に行っている時間は気楽に過ごせるし、割の良いバイトみたいな感覚だ。
「どうしたんだ?」
後ろからレオンハルト殿下が話しかけてきて、ひそひそ話をしていた3人はギクリとする。
レオンハルト殿下はルオンスの方を向いた。
シオンとルオンスはボウアンドスクレープの姿勢を慌てて取った。
「帝国の若き太陽にご挨拶申し上げます。彼はラズワール侯爵家のルオンス令息です。」
「お目にかかれて光栄でございます。ルオンス・ラズワールです。」
「官房付のメンターになるロワジール君だね。期待しているよ。」
「ありがとうございます。」
「ラズワール君、よろしくね。」
アダルベルト様も機嫌良さそうにルオンスに声をかけた。
シオンとルオンスと私が目が泳がせてぎこちないやり取りをしていると、リナとライラが戻ってきた。
「きゃーーーっ。皇太子様❤️さっきの写真を整理して今度二人のところに持っていきますね。」
ライラが黄色い声を上げ、リナに小突かれる。だから、誤解されるような表現は止めてほしい。
「皇族への礼儀が欠けて申し訳ありません。」
と、ライラ以外の4人で謝った。
「リナ・ミオンとライラ・バーレイです。」
2人はカーテシーで挨拶した。
「ミオン男爵の令嬢とバーレイ建設の令嬢だね。2人とも今後の進路は?」
「わたくしは医学部なのであと2年間は学生ですわ。」
「私は父の会社に入社して、まずは設計の仕事に携わります。」
「そうか、ワイマール公子は経営大学院に行くのだよな。じゃあ、来年は皆、王都だな。学生時代の友人はかけがいのないものだ。お互い良い支えになるだろう。」
レオンハルト殿下はライラの礼儀の欠けた態度も責めずに「落ち着いたらリリーシアのところに遊びにおいで。」と言って去っていった。
「今夜は程々にね。」
レオンハルト殿下とアダルベルト様はそう言うと帰城していった。
全然動いてないのに何だか疲れた。
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