【改良版】オアシス戦記
久坂裕介
第一話
おっぱい歴二〇二三年一月十三日。オアシス国。約十万人のニンゲンが住む小国だが、自然が豊かで農業、工業が
しかしそんなオアシス
『
G.M.T.は、演説をした。「この国の
当然この国の
ニンゲンの心は、
●
あれから一カ月。俺は貧乳好きの仲間二人と共に、たった三人でG.M.T.にレジスタンスとして
貧乳アイドルたちもG.M.T.の圧力により居場所を無くし、アンダーグラウンドで活動をしていた。俺たちは、そんな貧乳アイドルのグラビア写真をばらまき、また写真集を
だがそんな苦労もむなしく巨乳に目覚めてしまった男たちは、二度と貧乳に振り向くことはなかった。
レジスタンスのリーダーである俺は、ある思いを胸に思わずため息をついてしまった。
「はあ……」
すると副リーダーである、ムネマサに
「おい。お前が落ち込んで、どうするんだよ、ユウスケ?」
俺は、無理やり笑顔を作った。
「ああ、そうだな。すまない……」
そして二人で、具がベーコンと卵焼きのサンドイッチを食べていると、レジスタンスのアジトであるレンガ造りの古い小屋の扉が、ノックされた。
俺は目でムネマサに、『頼む』と
「貧乳は?」
すると扉の外で、男の声が返ってきた。
「
更にマサムネは、ささやいた。
「巨乳は?」
再び扉の外で、男の声が返ってきた。
「ただの
俺は、
「よう、ヒグリン。お仕事、お疲れ」
するとヒグリンは、不満を口にした。
「もう、この
俺は、説明をした。
「そう言うな、ヒグリン。この合言葉は、俺たちのポリシーでもあるんだ」
ヒグリンは
「ポリシーねえ……」
俺は、微笑んだ。だが、ある違和感に気づいた。
「まあ、そう言うなって。あれ? 何だそれ?」
俺はヒグリンの半ズボンの、ポケットからはみ出ているモノを
するとヒグリンは、俺が
「え?! い、いやこれは、何でもないです!」
俺はちょっとふざけて、そのはみ出したモノを手にした。まさか巨乳アイドルのグラビア写真って訳じゃ、ないだろうに……。
しかし俺は、
「こ、これは、どういうことだ? ヒグリン……」
するとヒグリンは、申し訳なさそうに答えた。
「オイラ、気付いちゃったんですよ。巨乳の良さに……」
気がつくと俺はヒグリンの
「バカやろう! 巨乳なんて、ただの脂肪だ! 目を覚ませ、ヒグリン! ちまよったか?!」
尻もちをついたヒグリンは、真剣な表情で言い放った。
「じゃ、じゃあユウスケさんは、巨乳を
俺は、ある思いを
「出ていけ……。お前はもう、俺たちの仲間じゃない!」
ヒグリンは、ゆっくりと立ち上がると、
「ユウスケさん、大人になりましょうよ。自分の心に、正直になりましょうよ……」
それでも俺が何も答えないでいると、ヒグリンは小屋から出て行った。
「巨乳も、良いですよ」と言い残して。
今度こそ本気で落ち込んでいる俺に、ムネマサは告げた。
「このレジスタンスはもう、終わりだな……」
俺は、驚いた。
「な、何を言ってるんだムネマサ! まだ俺たち二人がいるじゃないか?! 俺たち二人がいれば、きっと……」
だがムネマサは、俺の言葉を
「実は僕、彼女がいるんだ……。しかも巨乳の……」
その言葉は俺に、とどめを
まさかムネマサに彼女?! しかも巨乳の?! これは俺にとって、二つの裏切りだった。一つはもちろん、巨乳の彼女。そしてもう一つは、彼女がいること。
実は俺とムネマサの間には、俺たちだけの合言葉があった。俺が、「リア充は?」と聞くと、ムネマサは答えた。「爆発しろ!」
俺は、再び聞く。
「俺たちの
「
そして二人で笑いあった。ムネマサと知り合って、もう十七カ月が経とうとしている。俺はムネマサを、親友だと思っていた。大切な。
だから平静を装って、
「そうか……。何はともあれ、お前にやっと彼女が出来たのか。おめでとう……」
だが、ムネマサは答えた。
「いや、やっとじゃない。僕に彼女が出来たのは、十四カ月前だ」
俺は、
「ぐはっ!」
そう言えば、思い当たるフシがあった。週末に酒を飲みに誘うと、断られることが
まあ家に帰って脳内の嫁と、イチャイチャするんだろう。俺も家に帰って脳内の嫁に
ダメだ……。こんな事実を知ってしまったら、もうムネマサを親友と呼ぶことは出来ない。しかし、どうしてムネマサに彼女が?……。
俺とムネマサは、この国の男の平均身長よりも少し高い。だがムネマサは、しょうゆ顔だ。それに比べて俺は、
だがもう、終わりだ。巨乳の彼女がいる奴に、レジスタンスに所属させる訳にはいかない。そして、親友でもない……。
しかし俺は、ムネマサを強く
だから俺は、告げた。震える声で。
「さよならだ、ムネマサ。彼女を大切にしろよ……」
ムネマサの声も、震えていた。
「ああ、分かってる……。じゃあな……」
ムネマサが小屋から出ていくと、俺は
「さよなら。今度、会う時は敵同士か、
俺は一人ぼっちになった。本当に。だが落ち込んでいる場合ではない。決着を、着けなくてはならない。G.M.T.と。全てが手遅れになる前に。G.M.T.は強敵だ。だが俺には、
俺はそう決心すると、小屋を出た。そしてG.M.T.の
そして、G.M.T.の屋敷にたどり着いた。ウワサでは部屋が三十もあるという、大きくて
俺は、門を目の前にして全力で叫んだ。
「出てこい、G.M.T.! 俺と決着を着けよう!」
すると屋敷の
「何者だ、お前は?!」
俺は、説明した。俺はレジスタンスのリーダーで、今やレジスタンスは俺一人だと。
そうやって俺と衛兵が門でもめていると、G.M.T.が現れた。
「何だ? 何を、もめている?」
そして俺は、恐怖を感じた。G.M.T.が発する、
俺は、
「勝負しろ、G.M.T.! 今や一人しかいないレジスタンスのリーダー、この俺、ユウスケと!」
G.M.T.は、
「ほう、私と勝負? いいだろう……。だが待て。私はまだ、昼食を取っていない。それからでも、いいだろう?」
俺は、
「ああ。いいだろう……」
するとG.M.T.は、衛兵に命じた。
「ふむ。今日の気分は、カレーだな……。よし、カレーを持ってこい。ああ、だが、う〇ことカレーを間違うなよ」
その言葉を聞いて、俺は
衛兵が持ってきたカレーを食べ終わると、G.M.T.は命じた。
「ふうむ、まだ
俺は衛兵が持ってきたモノを見て、再び戦慄した。それは、カツカレーだったからだ。くっ、カレー
カツカレーも食い終わったG.M.T.は、言い放った。
「よし……。かかってこい、若造が!」
すると俺は、考えていた必殺の言葉を放った。
「お前、『この国の若造どもに、巨乳の良さを教えてやる!』と言ったな?」
「ああ、それが、どうした?」
「つまりお前も若い時は、貧乳好きだったんじゃないのか?」
俺は、勝利を確信した。このまま貧乳の良さを伝えれば、ヤツを倒せると。だがG.M.T.は、意外な言葉を発した。
「そうだ。だがそれが、どうした?」
俺の心は、折れた。
「な、何だと?……」
G.M.T.は
「確かに私は若い頃、貧乳好きだった。だが今は、巨乳好きだ。分かるか、この意味が……」
俺は
「つまり今の私は、貧乳と巨乳、どちらも愛せるのだ!」
ダ、ダメだ……。G.M.T.は予想以上の強敵だ。
そしてG.M.T.は、とどめの言葉を告げた。
「ユウスケと、言ったか……。お前は、巨乳に興味を持ち始めているな? 巨乳を揉みたいと、考えているな?」
俺の目の前は、ショックで真っ暗になった。いや、G.M.T.の姿だけが、ぼんやりと浮かんでいた。そうだ、俺は気づいてしまっていた。貧乳を揉むのは、難しいと。
俺は、全身の力を振り絞って聞いた。
「な、なぜ分かった……」
「簡単なことだ。今や一人になったレジスタンスのリーダーが、私の屋敷にきた理由は一つ。自分が巨乳好きになる前に、私を倒したかった。違うか?」
俺は、何も答えられなかった。
「そんなお前に、とどめを刺してやろう。この、先週デビューしたばかりの、新人巨乳アイドルのグラビア写真でな!」
俺はショックで指一本、動かせなかった。ダメだ、キラーワードがそろいすぎている……。
そんな俺にG.M.T.は、とどめを刺した。背中に隠していた写真週刊誌の、そのページを開いて、俺に見せた。
俺は無表情で、
「せ、先週デビューしたばかりの、新人巨乳アイドル……」
そして俺は、
「なあ、G.M.T.……。俺にも、出来るのか? 俺にも貧乳と巨乳の両方を、愛することが出来るのか?……」
G.M.T.は無言で俺に、写真週刊誌を手渡した。そして告げた。
「それは、お前の努力次第だ……」
俺は写真週刊誌の、その娘のセクシーポーズを、穴が開くほど見つめた。そして、本心を告げた。
「巨乳も、美乳なんだな……」
するとG.M.T.は、笑顔で告げた。
「そうだ。私は若い連中に、それに気付いてほしかったのだ」
「え?」
「若い時は、貧乳を美乳だと思う。その気持ちは、分かる。だが今、考えるとそれは、私の
「G.M.T.……」
G.M.T.は、続けた。
「これで国中の男が、巨乳も美乳だと気づいた。もう街中に、巨乳アイドルのポスターを貼る必要も無くなった。貧乳アイドルたちも、自由な活動を許そう」
俺とG.M.T.は、力強い
「ありがとう、G.M.T.!」
すると次の瞬間、G.M.T.の屋敷から、長いあご
俺とG.M.T.は、素早く
「オ、オアシス国王!」
オアシス国王はG.M.T.の屋敷に、今後の国政運営を話し合うためにきていた。それほどまでにG.M.T.は優秀で、国王からの信頼も厚かった。
オアシス国王は、優しく告げた。
「全部、見ていたよ、お若いの……」
俺は、頭を下げた。
「は、ははー!」
オアシス国王は、続けた。
「ほっほっほっ。貧乳と巨乳、どっちも、おっぱいじゃ。わしら男の、心のオアシスじゃ。ほっほっほっ」
俺は頭を下げたまま、告げた。
「ははー! もったいない、お言葉!」
国王は、優しかった。
「それより二人とも、
その言葉に甘えて、俺とG.M.T.は立ち上がった。そして俺は、G.M.T.に聞いた。
「なあ、この娘の写真集は、いつ出るんだ?」
G.M.T.は、満面の笑みで答えた。
「来月だ。
全てのわだかまりが消えた俺は、
「来月が、楽しみだ……」
すると、オアシス国王は微笑んだ。
「ほっほっほっ。これで国内の対立も解消。
オアシス国王の笑い声は、国中に響き渡った。
完結
【改良版】オアシス戦記 久坂裕介 @cbrate
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