111、決着の時

 瞬間、俺とアインは同時に光をえた。光すらも超える超速度で、俺とアインは衝突してはまた別の場所ばしょで衝突をり返す。

 俺の太刀とアインの刃がまじわる度に、根源こんげんの空間が罅割れ亀裂が入る。そして根源全土が俺達の戦闘にえ切れずに大きくれ動き、崩壊してゆく。その先にあるのは何もないだった。

 だが、それでも俺達は戦いを続ける。互いにみを浮かべながら、超高密度のエネルギーを放射しながら、それでも戦いを継続けいぞくしている。

 そして、アインは影の刃を無数に展開てんかいして放つ。俺は、それを切りきざみ、霧散させながら真っ直ぐに突撃とつげきする。だが、その瞬間アインは更に口の端を吊り上げて笑みを深めた。アインの指先に、光が収束しゅうそくしてゆく。

 先ほど撃ったドラゴンブレスとはまた訳がちがう。それよりも、更に威力と規模が向上しているだろうと理解出来る。これは、けられない。当たれば必殺ひっさつの威力を有しているだろう。だが、避ける事もまた不可能ふかのう

 だが、それでも俺はみを浮かべる。

 大丈夫だ、俺にはみんなが付いている。皆が一緒いっしょに居てくれている。

 なら、俺は何処どこにでも行く事が出来る!

覚悟かくごは出来たか?じゃあ、死ぬなよ?」

 そうして、放たれた極大の破壊光はかいこう。それはただでさえ、罅割れ崩壊しかけていた根源の世界を一気に崩壊ほうかいさせるのに十分過ぎる威力だった。

 だが、それでも俺はまらない。真っ直ぐ、アインに向かってけ抜ける。

 そして、俺は極大の破壊光を突き破った。単純に突き破ったのではない。俺と共に居てくれている皆の力が合わさり、破壊光を突破したんだ。

 アインは俺を、いや、俺の背後を呆然ぼうぜんとした目で見ている。恐らくは、アインの目には俺の他に皆の姿がうつっている事だろう。

 ヤスミチさんがる。エリカとアキトが居る。ツルギが居る。大統領が居る。王五竜が居る。飛一神が居る。クリシュナが居る。アルジュナが居る。そして、白川ユキが居てくれている。俺のそばには、みんなが居てくれている。

 だったら、恐れるものはなにもない。

「なるほど?では、俺も少しばかり限界げんかいを超えるとしよう」

 そうして、アインは自身のまわりに幾つもの光球こうきゅうを生み出した。幾つも浮かんでいる光の玉、それはアインが先程放ったドラゴンブレス一つ一つに等しい光が凝縮ぎょうしゅくされているのが否応なく理解出来る。

 つまり、ドラゴンブレスを並列起動させようというのだろう。

 あれをらえば、流石の俺でもただでは済まない。俺が思わず、足を止めかけたその瞬間、俺の耳元にあの男の声が聞こえた。

 ―――立ち止まるな、そのままき進め。

「っ!」

 その声に、俺は突き動かされるように突き進んだ。その行動に、アインは口元を吊り上げ笑みを更に深めた。

 そして、蹂躙じゅうりんする破壊光。だが、次の瞬間せつな……

 乾いた発砲音が崩壊した根源の空間にひびき渡る。

 幾条もの破壊光は全て一瞬で霧散むさんした。まるで、その全てが無価値むかちだとでも云わんばかりに。

 それもその筈、今の発砲音の正体は……

「無価値の魔物?クリファ=ジークスか‼」

 俺の背後はいごで、クリファが、魔物となったあいつがわらった気がした。そして、俺に向かって「行け」と発破はっぱをかけて消えた。

 俺は、そのままアインに向かって直進ちょくしんする。

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ‼‼」

「お、うおおおおおおおおおおおおおおおおおあああああああああっっ‼‼」

 アインが、俺に向かって幾つもの影の刃を放つ。それを、俺は太刀でさばきながら突き進んでゆく。だが、途中で太刀がくだけた。

 いや、かまわない。そのまま拳をにぎり締めてアインに向かって突き進む。

 そして、俺のこぶしがアインの顔にとどいた。

「―――!?」

 アインの中にある、何かがくだけたような。そんなおとが響き渡った気がした。それは恐らく間違いではないのだろう。今、俺の攻撃こうげきがアインに届き、アインの中にあるその根幹部分が砕けったんだ。

 俺の、疑いようもない勝利しょうりだった。

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