異世界転生スマホ太郎(俺)「よっしゃ◯◯作ったろ」

飛騨牛・牛・牛太郎

第1話 俺「よっしゃアイスクリーム作ったろ」


ある男にとっての異世界。もしくは彼らにとっての平穏なある日


「ジャクソンさん。こんにちわ」

 町はずれにある教会に現れた騎士に対して、その教会を管理するシスターはそう挨拶をした。

「こんにちわ。クレアさん」

 いささか人よりも頭の位置が低い(当人が気にしているので直接的な表現は避ける)所以外はカッコいいと評して良い茶髪の男、ジャクソンはそう返した。

 彼はこの町の領主に使える騎士の一人であり、町はずれで一人教会を管理しながら孤児や行き場がない子供たちの世話をするシスタークレアのことを気にかけている。

 それは領主も同じだからこそ、こうやってことあるごとにジャクソンを差し向け何かトラブルがないか、困ったことがあればと気を利かせている。

「それで、その、あのぉ」

 ジャクソンとクレアは次の言葉が思いつかないようでお互いにもじもじとしている。

 まぁそれ以外の理由もあるし、そんなのは当人以外みんな気づいてる。だから町はずれへのお使いなどという些細な用事で毎回騎士であるジャクソンが選ばれるわけだ

「そうだ、そう、あの、異世界から来たという彼、どうしてますか」

 話題に困ったのか、それとも本来の話題なのかはクレアにはわからなかったしそこまで気を回せる余裕はなかったが、ジャクソンはそう言って話題を作った。

「え、えぇ、あぁ、彼ですか、彼はお使いに行ってもらってます。もう帰ってきてるはずですが」

 クレアもクレアで話をそちらにもっていくことで、どうにか二人で会話をつないだ。


 この平穏極まりない異世界、当人たちにとっては異世界ではないので語弊がある、で平穏をちょっとだけ乱す出来事があった。

 異世界から、異世界人からしたらここが異世界なのだから妙な言い方でもある、男が教会の近くの森からでてきたのだ。

 異世界からの来訪者なる話、だれも信じず、他国からのスパイか野盗崩れのごろつきかと騎士のさんざんな取り調べを受けたが、怪しいところがない。というよりも怪しいところしかない。その辺の物乞いや乞食でもこれから死刑のために首に縄をかけられる悪党ですら知ってることすら知らないのだ。

 そして決めてとなったのはスマートフォンなる怪しい道具。

 

異世界人などどうしたらいいのかわからないしできたら追い出したいという田舎町の役人や住人

僕自身出来たら早く帰りたい、皆さんの邪魔にはなりたくないが自分でもなににがなんだかわからないしこの状況が分かるなら首都でもどこでもいくと訴える男。

奇妙な所で意見が一致したという事で、中央の役人が巡回で来た時に相談するという話がまとまり、それまではシスタークレアの申し出で教会ではたくことになった。

 女子供しかいない場所に怪しい男を、という話が村で議論されたが、それはまた別の話としてお


 愛想よく働き、街や教会にある住民にとってはありきたりないろいろなものを見て回って驚く男は、まぁ中々の好感を持って村に迎えられたので今となっては昔の話だし、一応彼が主役の話である以上妙なことは書きたくない。

 

「おぅ、にいちゃん。今から帰りかい」

 クレアさん(シスターとつけるべきだと習ったがなにかなれないのでいまだにさん付けだ)に頼まれたお使いを町で行った帰り、異世界から転生してきた男に話しかける一人の男がいた。

「あ、どうも。ちょっと用事を頼まれて帰るところです」

「そうかそうか、ならちょうど良かった。おたくの教会のガキどもは牛乳なんか飲むかね」

「えぇ好きな子はいますよ。それにそんな嫌いって子はいない筈ですが、どうかしたんですか」

 話しかけてきた男は町はずれで酪農をこなす男。

 乳牛を何頭も飼っていて人を雇って乳をしぼり、それを町の住人に卸している。

「卸してた食堂で食中毒騒ぎがあってよ。うちの商品じゃなかったからよかったが、店が休業になったって連絡が急にきて牛乳があまちまったんだ。今から加工の方に回すわけにもいかねぇしこのままじゃ捨てるだけだしってんで、教会のガキどもが喜ぶなら持ってかないか?」

「そういう事ならいただきますよ。子供たちもクレアさんも喜ぶと思います」

「そうかそうか、おう、持ってくついでに載せて行ってやるからついでに乗っていきな」

「え、はぁ」


「そういうわけなんだ」

「おにいちゃん。さすがにこんなにはいらないよ」

台所で牛乳を飲みながら子供たちに怒られてる男。

目の前には瓶詰の牛乳が1ケース。


店に卸すのだからこの量は当たり前だ。

考えてみればわかることだが、そこまで考えが至らなかった。


「魔法もないから保存しとくわけにもいかないし、どうするのさ」

「どうって、どうしようか」

「なにか作る?」

「何を作るのさ」

「甘いもの食べたい」

「あまいものねぇ。牛乳を使った甘いもの、アイスクリームとか?でもあれって冷蔵庫いるよなぁ」

男はそう言いながら手元のスマートフォンでいろいろと検索した。


 なぜかネットにつながり電池も切れないというチートアイテム化したこのスマートフォン。

 男が持っていた異世界のアイテムはこれだけだ。


スマートフォン

こちらのページがみつかりました。

https://www.meiji.co.jp/meiji-shokuiku/homework/experiment/icecream/


「アイスクリームっておいしいの?」

「おいしいよ。あまくて冷たい氷みたいなお菓子さ。クリームあーどうつくるんだ?なくても行けるのか、砂糖と塩はあるな、氷がいるなぁ」

 冷蔵庫というものがないのだ。この季節に氷を手に入れるのは無理である。

 これが製品化する前ならまだ保存できるように加工する方法があるが、製品化したわざわざ加工するのは二度手間で採算に合わない。

どうせ捨てるならというわけで教会に回ってきたのだ

「氷があればいいの?ならいい方法があるよ!」

「いい方法?」


「atoaztozbtozctoc」

教会にいたところ子供たちにねだられるまま、というかクレアさんにいいところ見せたいでしょ?という交渉でジャクソンは魔法を使い氷を生み出した。

本来彼の魔法はモンスターや敵に対して打ち出す物だ。こういった利用はしない。

「贅沢な使い方ですね」

クレアはそれを見ながら、あきれてるのか子供たちが楽しんでるからいいのか、そんな言葉をつぶやいた。

「平和利用でしょう。人にむけて撃つよりいい」

我ながら単純なものだ、とジャクソンは恥ずかしそうに笑いながらクレアにいった。


「鉄のボールを二つ用意する。一つに氷を入れて塩を入れる。その上に牛乳と砂糖を混ぜた物を置いて冷やす。でまぜると」

「これはなにを作ってるのですか」

子供たちに指示をしながら不思議な物を作っていく男にクレアは聞いた。

「アイスクリームです。冷たい氷菓子ですよ」

「領主様のお供で会合に参加した時に似たような菓子食べたことがあるけど、こうやって作るのかい?」

「たぶんあってると思います。初めてやるのでわからないんですが」

 そう言いながら男は子供たちが抑えるボールの中でへらをまわす。

 ボールの中の牛乳はみるみるうちに固まっていった。


「冷たくておいしいね」

「冷たいものをたくさん食べるとおなかを壊しますよ」

 順々にアイスクリームを作り子供たちに配る。

 クレアさんも子供たちもみんな喜んでいるようだ。良かった。

「君は相変わらず面白いことをしっているなぁ。その機械は何が入ってるんだい」

 ジャクソンもわけてもらったアイスを食べながらそんなことを聞いた。

「なにって、わたしにもわかりませんよ」

「あなたが使ってるのに、あなたは中身がどうなってるかも知らないんですか?」

 クレアさんの疑問にぼくは考える。


 たぶん何かの基盤やバッテリーが入ってるはずだ。チートアイテムとなったこのスマホの中身が同じなのかは知らないし、開けて壊れたら困るから確認もしてない。


「それは、ほら、クレアさんだって同じで酢よ。ピアノを上手に弾くけれどピアノの中身がどうなってるかなんてなんとなくしか知らないでしょ。僕も同じなんです。スマートフォンを使うことはできますけど、この中身はよく知らないんです」

 このたとえが正しいのかもわからない。この世界には魔法があってそれを前提として動いているからだ。

 この牛乳だって、運搬や保管に魔法を使うから一部の業者や人間向けとは言え商品として流通できている。そうじゃなければ保管が効かないから大々的には流通できない筈だ。

 同じようなものでも前提やあり方がちがう。もしかするとあのピアノも鍵盤とゴブリンがつながっているのかもしれない。


「まぁ、確かにそうですね」

 クレアさんはそう言って納得してくれたようだ。

「さぁみんな、食べて休憩したら午後の仕事をおわらせますよ」

 そう言って子供たちに指示をだしていく。

「じゃぁ僕もこれで、おいしかったよ。また何かあったら言ってくれ」

 ジャクソンも邪魔にならないように帰るようだ。

 そこで男はジャクソンに早速お願いをすることにする。


「牛乳が余ってるんだ。持って帰ってみんなで消費してくれないか?」


 いくらアイスクリームが好評だからといっても限度があるのだ。

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