第159話


「いや、マジかよ…すげー大事になってんじゃん…」


帰宅した俺は、スマホの画面を見ながらそう呟いた。


表示されているのは『神木拓也のゲーム実況チャンネル』のホーム画面。


先ほど俺が帰宅途中に歩きながら作った新しいつーべのアカウントである。


ゲーム実況をするためについ先ほど、特に深い考えなく作ったサブチャンネルだったのだが……何と後悔してから30分とたたないうちに登録者が100万人を超えてしまった。


先ほどSNSで呟いたところ、たくさんの視聴者たちから反響があり、拡散されまくり、登録者がどんどん増えて、気づけば100万人に到達していた。


まだなんのコンテンツもない、ろくに編集も色付けもされていないチャンネルが100万人だ。


一体何が起こったのか、当の本人の俺でもわからない。


呟きの返信欄には、もしかしたらこの速度での100万人到達は日本記録か、はたまた世界記録かもしれないなんて言っている視聴者もいる。


まさか雑談のネタがないからと、思いつきで始めようとしたゲーム実況配信がこんなに大事になるとは思わなかった。


トレンドもすでに、俺のゲーム実況の話題で埋め尽くされているらしい。


「マジかよ…まさかこんなことになるなんて…」


帰宅した俺は、とりあえずシャワーを浴びて頭を冷やした。


それから着替えて、パソコンの前に座る。


ここまでことを大きくしてしまった以上、やっぱりゲーム配信やりませんでは済まされないだろう。


俺は深呼吸をしてバクバクとなる心臓を落ち着けてから、新しいチャンネルでの配信をスタートさせた。



「どうもみなさん…あの、こんにちはー…」



“やあ”

“やあ”

“きたあああああああ”

”どりゃああああああああああ“

”うおおおおおおおおおお“

”きたああああああああああ“

”待ってた“

”やあ“

”やああああああああああああ“

”やあああああああああああああ“

”やあ“

“ゲーム配信きたぁああああああああ”



「うわっ!?」


配信開始すると同時に、いつものように視聴者がどっと雪崩れ込んできた。


恒例の挨拶「やあ」と共に、同接が一気に増えていく。



「あ、あのー…みなさん…知ってると思うんですけど…今日はその…ゲーム配信をやってみようと思います…」


新しいチャンネルでの初の配信のはずなのに、いつもと同接の勢いが変わらない。


なんならいつもよりも視聴者の集まりが早いように感じる。


始まってまだ1分も立っていないのにすでに同接は十万人を超えそうだ。


一体どういうことだろう。


俺はダンジョン配信者が本業なのだから、ゲーム配信なんてやってもそこまで人が来ないんじゃないかと思っていた。


いつもの同接の半分、いや、それ以下になることも覚悟したのだが、蓋を開けてみれば、とんでもない数の視聴者が、わざわざ新しい配信まで俺のゲーム配信を見るために足を運んでいる。


ネット民の需要って…マジでよくわからん。



”マジで楽しみ!!!“

”登録しますた“

”神木拓也がゲーム配信をやると聞いて“

”なんのゲームやるの?“

”100万人登録おめでとうw“

“大将100万人いくの早すぎませんか?w”

”大将ゲームするんすねw“

”ゲーム実況普段見るからマジで楽しみ!!“

”神木拓也最強!“

”ダンジョン配信者がゲームに挑戦か。新しいけどありだな“

”人多すぎだろw神木拓也のゲーム配信需要ありすぎw“

”なんのゲームするんですか?“

”なぁ、神木。鍵作品をやらないか?一緒にプレイして泣こう“

”神木。運命っていうエ〇ゲーおすすめだぞ“

”泣けるストーリーゲーやろうぜ“

”恋愛シミュレーションやろう“

“普通にアクションゲーがいい”

“銃ゲーみたい”

“大将の反射神経活かすために格ゲーとかどうよ?”

“格ゲーとかいう神木のダンジョン配信の下位互換w w w”



チャット欄の勢いが尋常じゃない。


視聴者は早くも自分がプレイして欲しいゲームをひたすら書きまくっているようだった。


ストーリーゲー。


RPG。


恋愛シミュレーション。


fps。


格ゲー。


建築ゲー。


カードゲー、等々。


ありとあらゆるジャンルの、有名タイトルのゲームがチャット欄に並ぶ。



「えーっと…みなさん、一旦チャット欄にみたいゲームを書くのをやめてください…えーっと、今からアンケートを取ろうと思います……まずゲームのジャンルから決めていくので投票よろしくお願いします…」



チャット欄にいろんなジャンルのいろんなゲームのタイトルが書かれ過ぎていて、どれをやっていいのかが全くわからない。


なのでここは純粋に多数決にしようと、俺はつーべのアンケート機能を使ってアンケをとることにした。



・ストーリーゲー

・RPG

・fps

・格ゲー

・建築ゲー

・ファミリーゲー

・カードゲーム

・サバイバルゲーム



俺は大体こんな感じのアンケートを作り、視聴者投票を開始した。


「アンケート投下しました。投票お願いします。一番票の多かったジャンルのゲームをプレイしようと思います」



”よしきた“

”入れた“

”きたあああああああ“

”建築ゲーだろ。みんなでできるし“

”大将なら格ゲーがいいと思う“

”王道のRPG“

”ギャルゲーとか泣きゲーはストーリーゲーだよな?“

”無理だと思うけどカードゲーム見たいから入れとこ“

”サバイバルよくね?視聴者参加できるタイトルも結構あるべ“

”ファミリーゲーって、某あれのことだよな?視聴者参加型やってくれ“

”っぱfpsよ“



アンケートを投下すると早速票が入り始める。


現在の同接はすでに十万人を超えて十二万人に到達している。


「五万票を超えたらアンケートを締め切りたいと思います」


俺は大体半分の五万人が投票を終えたところで、アンケートを締め括った。


その結果……



「なんと60%の得票で、fpsをプレイすることになりました…」



”うおおおおおおおおおお“

”きたあああああああああ“

”どりゃああああああああああ“

”よっしゃああああああああああ“

”格ゲーざまぁああああああああ“

“きたああああああああああああ”



チャット欄が歓喜に沸く。


まさかこれだけの選択肢がある中で、fpsの選択肢に半分以上の票が集まるとは思わなかった。


やはり今fpsのブームが来ているせいもあるのだろうか。


fpsや格ゲーなどの動きのあるゲームだと、俺の動体視力が活かせるからという理由で選んでくれた人もいたようだ。


なんにしろ、これでまず最初にプレイするゲームのジャンルはfpsに決まった。



「それじゃあ…次にゲームタイトルを決めていきたいです…」



その後俺は視聴者アンケで、プレイするfpsのタイトルを決めるのだった。

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