第153話
シュン……
神拳・三連撃により、黒の奔流が三つ出現。
スフィンクスの頭部、腹部、そして下半身をそれぞれ飲み込み、跡形もなく消失させる。
俺を二度も騙そうとし、最後は不意打ちで殺そうとしてきたスフィンクスは,絶望の表情を浮かべたまま消えていった。
「ふぅ」
全てが終わった俺は、安堵の吐息を吐く。
なんだかんだこれでミステリーダンジョン攻略完了だ。
結局謎解きは全然しなかったが、しかし踏破の方法はこの際どうでもいい。
ミステリーダンジョンは未攻略ダンジョン。
つまり今まで誰も踏破したことのないダンジョンであり、ボス部屋に辿り着き、ボスを倒したのは俺が初めてだ。
日本で唯一の探索者になったのだという実感が今更のように湧いてくる。
同接も現在180万人を突破。
あれだけ序盤伸び悩んでいたにも関わらず、200万人の大台が見えてきそうなところまで増加した。
俺は達成感を噛み締めながら、ダンジョン踏破報告を行う。
「ミステリーダンジョン、クリアしました」
“うぉおおおおおおおおおおおおおお”
“きたあああああああああああああああ”
“どりゃぁああああああああああああ”
“よっしゃああああああああああああ”
“よーーーーーーーーーし”
“よーーーーーし”
“よーーーーーーーーーーーーーーーし”
“うおりゃあああああああああああああ”
“神木拓也最強!神木拓也最強!神木拓也最強!!!”
“強ぇええええええええええええええ”
“すげぇええええええええええええええ”
”未攻略ダンジョン踏破きたぁああああああ“
”おめでとう大将“
”マジですごいよお前“
”また伝説の生き証人になっちゃった^^“
怒涛のように祝いのコメントが流れ、スパチャが飛びまくり、配信画面が真っ赤に染まる。
¥50,000
マジでおめでとう大将!!!大将ならやってくれると信じてた!!!
¥30,000
どりゃああああああああああああああああああああああ
¥40,000
神木拓也最強!神木拓也最強!神木拓也最強!!!
¥10,000
マジでパネっす大将w
¥5,000
スフィンクスざまあああああああああああ
¥3,000
最後はボスモンスターとの戦闘も見れたし今回の配信もおもれった。帰りも気をつけてなー?
¥30,000
おめでとう神木拓也。今回もお前の勇姿、見届けさせてもらった。いつもは上限額スパチャするところなんだが、最近嫁がうるさくてな。これで勘弁してくれ
「みなさんスパチャもたくさんありがとうございます!!無事にミステリーダンジョンクリアしました。最初はどうなることかと思ったけどなんとかここまでこれました。応援ありがとうございます!!!!」
”マジでやべーわお前w“
”流石に未攻略ダンジョンをソロ攻略はイカれてるw w w“
”このダンジョンはお前に相性が悪いとかいってマジでごめんw w wお前に相性もクソもなかったわw w w“
”というかお前いつから神拳連発で打てるようになったんだよw流石にチートすぎるだろw w w“
”神拳・三連撃マジで草。最強すぎんか流石に?w“
”スフィンクスには感謝やね。また大将の最強技が更新された。神拳・三連撃“
”マジでどんどん進化するなお前“
”これまたニュースで取り上げられるやろ“
”ワイドショーで取り上げられるんじゃねワンチャン。流石に偉業すぎる“
”ワイドショーは小谷翔平ばっかり取り上げてないで少しは神木も取り上げろよw w w“
”普通に神木は小谷翔平よりすごいことしてるぞw w w“
視聴者たちはミステリーダンジョンの踏破をじぶんのことのように喜んでくれる。
今回はモンスターとの戦闘があまりなかったにも関わらず同接は200万人を超えそうなところまで到達した。
もし、ミステリーダンジョン以外の未攻略ダンジョンに挑戦したら同接はどうなるのだろうかと俺は考えずにはいられない。
(気が早すぎるか…?いや、けどこの勢いに乗ってそのまま…)
俺はスパチャをくれる視聴者たちにお礼を言いながら、次の週末に他の未攻略ダンジョン……今度は普通のモンスターが出てくる未攻略ダンジョンに挑戦することを考える。
(まぁ、とりあえず帰ってから決めるか)
「それじゃあ今から帰還したいと思います。ご視聴ありがとうございました」
俺は見てくれた視聴者にお礼を言って、ミステリーダンジョンのボス部屋を後にした。
= = = = = = = = = =
「出てきたぞ!神木拓也だ!!!」
「神木拓也が出てきたぞ!!!」
「神木拓也本物だ!!!」
「すげぇ!!ミステリーダンジョンクリアした英雄の凱旋だ!!!」
「うおおおおおおお神木拓也最強!神木拓也最強!神木拓也最強!!」
「きゃああああああああああ神木拓也よぉおおおおおお」
「神木さん!!ずっとあなたのファンでした!!握手してください!」
「サインくれえええ神木拓也ぁああああああああああ」
「やっぱりこうなるよな」
ミステリーダンジョンを踏破し、地上に帰還した俺は、じぶんのもとへと押しかける群衆にため息を吐いた。
なんとなく予想をしていたがやはりか。
今朝、ここでたくさんの視聴者に囲まれた時点で、帰りも同じ状況になるだろうなということはわかっていた。
けど……
(え、今朝よりも人数増えてね…?)
サインをくれ、握手してくれ、インタビューに答えてくれ。
そう言って押し寄せてくる人の数は、今朝よりも段違いで増えていた。
広場や歩道を埋め尽くし、道路にまではみ出してしまっている。
おそらく俺がミステリーダンジョンを踏破したからだろうか。
地上に帰還する際にSNSをチェックしたのだが、案の定トレンドは俺のミステリーダンジョン踏破一色になっており、罠を神木サーや神拳で破壊する動画、スフィンクスに神拳・三連撃を撃ち込むクリップが拡散されまくっていた。
噂を聞きつけてやってきた野次馬たちもたくさんいるのだろう。
「うおおおおお神木拓也ぁああああああ」
「配信見てたぞおおおおおお」
「すげぇええええ神木拓也生で初めて見たぁあああああ」
「きゃあああああああ神木拓也が私の側を通ったっ!!!」
「拓也ぁああああ。こっち向いて〜」
「きゃあああっ、神木様〜〜」
「おいお前ら!!大将の邪魔になってるだろうが道を開けろ!!!」
「大将の覇道の前に立ち塞がるな!!道を開けろ雑魚どもが!!!」
「大将!!ミステリーダンジョン攻略お疲れ様です!!!俺たちが道を開けるので、今のうちに通ってください!」
「お、おう…ありがとう…」
男たちの雄叫び、女性の黄色い声援に混じって、大将と俺を呼ぶ声も聞こえてくる。
おそらく俺の熱狂的な信者と思われる男たちが、俺の前に立ちはだかり、俺に押し寄せてくる人々をかき分けて道を開けてくれる。
俺はそんな彼らにお礼を言いながら,空いた道に素早く体を滑り込ませてなんとか群衆から逃れようと歩いていく。
ピーピーピー!!!
ビービービー!!!
「邪魔だ!!テメェらどけぇ!!」
「なんだこれ!?道が塞がれてるぞ!!」
「下がってください!みなさん道路にはみ出ないで!!!下がってください!!」
群衆は四方八方からどんどん集まってくる。
気がつけば、大通りが人混みで塞がれて、車が行き来できず、怒号とクラクションの音が鳴り響くカオス状態になっていた。
あわてて警備員が駆けつけてきて、交通整理を始める。
俺はそんなカオス状態の中、身を屈めて姿を隠し、そのままそそくさをその場を後にした。
……警備員、警察官の方たちごめんなさいと心の中で謝りながら。
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