第31話 決意
次の日の昼過ぎ、サミュエル達は町の食堂に集まっていた。残念ながら私は呼ばれていないので参加する事が出来なかった・・・なんて事はない。私は次の狩りの日取りを確認するために、サミュエルの屋敷の門の前で張り込みをして、サミュエルの動きを監視していた。張り込みから4時間が経過した頃、サミュエルが門から出て来たので尾行することにした。
『どこに行くのかしら?私も仲間に入れてね』
私はサミュエルを尾行して、4人が集まる予定の食堂にめでたく辿り着けたのである。食堂の店員はサミュエル達を4人席に案内したので、私の座る席がなくレアの側に立って参加する。
「次の狩りの日程について説明する前に、みんなに話しておきたいことがあるんだ」
「何かあったのかい」
真剣なサミュエルの表情にポールは何かを察知する。
「・・・」
オレリアンは黙ったままだが、真剣な表情でサミュエルを見る。
『もしかして・・・新たな仲間の発表だったりして!!!私の存在がバレたのかな?』
私は思わぬ展開を妄想して心臓が今にも飛び出しそうなくらいに緊張をしてしまう。
『仲間として認めてくれるのはうれしいわ。でも、事情があって姿をさらす事ができないのよ』
私はニヤニヤとしながら妄想にふける。
「実は・・・」
『やめてぇ~心の準備が出来ていないわぁ~』
「3年前の射撃大会が終わってから、パンジャマンからたびたび嫌がらせを受けているんだ。くだらない嫌がらせだったので無視をしていたが、昨日のアイツの様子からすると、何か大きな嫌がらせをしてくるかもしれない。すまない!みんなに迷惑がかかるかもしれない」
「あんな小物がすることなんてどうでもいい」
真っ先に声を発したのはオレリアンだった。
「しかし、アイツは何をしてくるかわからない。それに、俺たちの悪口も吹聴しているらしい」
「知っている。でも、そんなの関係ない。俺たちが結果を残せば誰も悪口なんか言えなくなる。それに、いつまでもノルマルにとどまっている奴らなんかどうでも良い」
オレリアンはパンジャマンが悪口を吹聴していることは知っていた。しかし、全く相手にしていなかった。
「そうだよ、サミュエル!僕もオレリアン君の言う通りだと思うよ。悪口を言われているのは知らなかったけど、自由に言わせておけばいいと思う。それに、サミュエルは優秀な冒険者だから、嫉妬をかうのは注目度が高いってことだよ。僕は誇りに思うよ」
『そ・・・そういう話だったのね。そうだと思っていたわよ。私も二人の意見に賛成よ』
私は動揺を隠せずにオロオロしているが、姿が見えないことにホッとしていた。
「ありがとうみんな。でも、気を付けて欲しいんだ。パンジャマンは冒険者になって腕をあげている。いまではこの町のベテラン冒険者の仲間入りを果たして仲間も多い」
「この町に留まっている時点で3流冒険者だ。本当に腕があるならDランク魔獣の世界に行けるフレーズの町へ行くはずだ。小物が徒党を組んでも小物には変わりない」
「そうだな、オレリアン。俺たちはもっと高みを目指している。もっと力を付けてアイツを黙らせてやろう」
「当然だ!」
『わ・・・私も高みを目指します』
私はサミュエル達の話を聞いていて少し熱くなっていた。飢えを凌ぐために魔獣の世界に来た私だが、いつか姿を見せれる日が来て、サミュエル達と一緒に冒険出来たらいいなぁ~と思った。
「高みを目指すなら次は緑地エリアで狩りをするのだな」
※緑地エリアとは草や木が生い茂る場所である。豊富な木の実や果実が存在するために魔獣が好むエリアであり、狩りには最適だが、その分危険も多いエリアになる。
「いや、2か月間は後ろの目を身に着けるためにも岩場エリアでラパンを狩ることにしている」
「わかった」
『わかりました』
オレリアンは素直に返事をし、私もつられるように返事をした。
「具体的な狩りの日取りなんだが、週に3回、朝から狩りに出て昼までに終わらせたい。昼からは、狩りで仕留めた魔獣の解体を自分達でおこない解体技術を磨き、魔獣の構造をより理解していく。そして、2か月後は緑地エリアに赴き狩りを始めるつもりだ。おそらくそれまでには、立ち入り制限の事実も判明して、安全に狩りを行えるようになっているはずだ」
「注意書きの真意がわかるまでは、近場での狩りをしながら後ろの目を鍛えるってことね」
「そうだよ」
「サミュエルの作戦に僕は従うよ」
「異論はない」
「理解してくれてありがとう。手続きは俺が行うから、入場許可がもらえれば連絡をするよ。狩りのない日は各自で鍛錬をするか、日常依頼【人間世界での依頼のこと】を受けてもらってもかまわない」
ノルマルに昇格してもディピタン向けの依頼を受ける事もできるし、魔獣の世界に行かなくても、様々な依頼が冒険者ギルドに掲示されている。サミュエル達は、魔獣の世界での狩りをメインに腕を上げていくつもりなので、人間世界での依頼は各自で自由に受ける事にした。
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