願わくは

塩ト檸檬 しおとれもん

第1話




----- Original Message -----

 「願わくは」



第一章「日本学術会議」


  衆議院の国会会議場の様なすり鉢状の会場ではなくフラットなフロアの中央に大型モニターを配置し、その下には議長、役員及び内閣総理大事の議席が有りフランクな装いに学術会議が開かれ一部上場企業の販売会議のようであった。

 座席にずらりと並んだ日本学術会議のメンバーは勅使下向忠直(ちょくしげこうただなお)内閣総理大臣を対角線上に見る形となっていたが、国会議員のような慇懃無礼な立ち居振る舞いをしていなかった。寡黙であった。

「理学からの観点から観るに当たって、日本国民が、訝しいと思うパーツは何処から来たんでしょうか?ネットサイトで真しやかに囁かれているコロナワクチンには不正な物、つまり不純物が混合されている、つまりハイブリッドな訳だ!」

「それを全否定し、国民に!どうやって分からせるかだ!」

「あなた方の経緯は今更、掘り下げなくとも一目瞭然ですからね、勅使下向(ちょくしげこう)内閣総理大臣?」

「何が言いたいのですかね篠山副会長?」日本学術会議が全メンバー揃って内閣総理大臣に会する機会を虎視眈々と狙って居る者は少なくはない。

篠山静夫は理学博士と 立場は科学者だが、先のCORONAワクチン開発に成功し、合衆国のNASA保険局との連携で世界をパンデミックの恐怖から解き放った功績が、評価され学術会議の副会長に抜擢され国際活動担当及び政府との関係等担当を担っていた。

連携会員が2000名存在するなかでの躍進は目覚ましいばかりだった。

 が、その学術会議の場に於いても由々しき問題が上がろうとしていた。

「篠山さんあなたは、破天荒な学者と名高い、そもそもその質によりワクチン開発が成功したと言える。しかもその経緯はご存知の筈、何を今更政府を戒める発言をなされたのか?我々の考えには少しでも乖離等の齟齬があってはならない!逡巡して答えて貰いたい!」勅使下向内閣総理大臣には感情の起伏など縁遠い事案であるとの思い込みが意図も簡単に崩れ去った刹那だった。

「アストラのワクチンを射つと服反応が出るらしい!ファインダ社のワクチンでは人体に無害だが、個人情報を乗っ取られるらしい!」全て憶測の拡散だったが、ワクチン接種の該当者は、予約を挙ってキャンセルし出した!「命の選別はさせない!遺伝子操作はさせない!」

「何が夢の都市をフューチャーしたスーパーシティ法案だ!全部管理して国民を縛り上げてるじゃないか!?」

 勅使下向内閣総理大臣への断崖はまだまだ続いていた。

「篠山副会長はご自分の作られたワクチンに没作があると仰有るのですかね?」眉を寄せて縦皺を作り珍しくも篠山の攻撃を鉄板の如く跳ね返していた。

「いいえ、そうではなく!」一呼吸置いて反撃の機会を伺っていた。

「ワクチンの全てはハイブリッドだと言ってます。」会場内はザワついていた。

 ヒソヒソと学術会議の関連メンバーは、目の当たりにした光景を予測すら大外れだった。まるで対岸の火事を見ている心持の関連会員は命を削ってはいなかった。

「そもそもあなたが作ったワクチンは人体にある白血球の内の好中球を強化し、侵入したウィルスを迎撃するものだった訳です。しかし人の血液を例え白血球でも注入すれば凝固反応が起きてしまう! 既にあなたはそれを見越してあなたが検体になり、臨床実験を実施して、凝固反応は無いものと照明出来た。

 その事について」私は篠山教授、いや副会長を敬っております。愛のしらちたま(白血球)は地球に愛を齎しパンデミックの恐怖から開放されて久しい・・・。」

 篠山教授を見据え何時になく心の篭った答弁を振り撒いていた。

「1000万分の1の可能性で凝固反応が出た訳なんです。その時は篠山さん、運が良かったかもしれない・・・。それから厚労省に入った報告では、・・・。」混沌とした後の祭りは前進せず、後退をも余儀なくしようとしていた。厚労省に入った情報では兵庫県のマメクロ病院にスギ花粉が人の鼻粘膜に粘着し、やがて血中に溶け込み血管内に滞留した花粉が脳梗塞を引き起こす事案を理学療法士の端野亮一が発見し、医局部長を介して厚労省に報告された事案をを取り上げ、「この事案を承認しなければ政府に上がって来ない旨を問い質された篠山は、言葉に詰まっていた。タイムラグがあったのは確かだった。

合衆国のナサ保険局のニトロ局長に接見していたそのインターバルに執り行われた報告書承認を報告事案を斜め読みしてサインをした事実は確かにあった。忙しいから?世界に功績を残したから? だから斜め読みしても良いと?自分自身の瑕疵、過信! ラップでも歌えそうだった。しかし、血液の凝固反応は回避出来筈!

「1000万人の国民に一人ひとり臨床実験をする訳には行かんのです篠山さん? だからアストラではしらたま(白血球)を製剤化にする事が出来てより安全なワクチンとして日本の全国民に接種できる事になっておる!スーパーシティ法案の始動はそれからです。国民全員が無頼となって、それがエビデンスなんですよ!スーパーシティ法案のね?」

 ワーッ! と拍手が沸き起こった。殆ど関連メンバーばかりだったが、篠山はこの後に起こり得る最悪の事態を想像して鳥肌が立っていた。ま・け・た、負けた。

 尚も食い下がる

「防空識別圏の侵害や領海侵犯など、アルツハイマー国の犯行だと分かっているのに何故対策を講じないのですか?」

「嘗ては惑星アルツハイマーの方からわざわざ犯行声明を公開してますから、令和戦争が終わって、アルツハイマーが国連未承認の国家を作り上げ、世界の覇権を狙う危険国となっています。」

「そんな国がコロナウイルスを撒き散らした事は事実であります!」

大きく頷いた勅使下向忠直内閣総理大臣は篠山の眼を見ず約45%俯き机上の書類に眼を通していた。

「それと総理、このコロナ禍に男性育児休暇を取得し難い社会通念になっておりますが・・・。コロナに乗じて男性の育児休暇取得を推奨しては如何かと存じますが、どうですかな総理?」改心のライナーだった!

 刹那、顔を上げた総理がオオ!という表情を崩さず長々と篠山の顔面を見詰め、やがて切込泰一(きりこみたいいち)官房長官が代弁を取った。

「今会議のカテゴリーはご承知の筈ですが、学術会議のコンテンツを大きく逸脱致しておりここは国会でもないし国会議員でもないあなたが草案を提出するのは如何なものか?笹篠山氏在住の選挙区に衆院の事務所がありますからご意見・ご相談を受け付けてございますどうかご随意に・・・。」軽くあしらわれた。論外だった。

 唇を噛んで垂直に議席へ腰を降ろした篠山は悔しさの余り作った握り拳を開いては掌の皺を見、拳を握っては開いたり、意味の無い所作を繰り返していた。

 篠山の心情は為らぬなら為るまで続ける蟻の一穴岩をも通す。粘着性の性格だった故のコロナワクチン開発成功の一端だったに違いない。

 ザワザワと思い思いのコメントを隣近所のメンバーと語り合う。自国は正午を大幅に過ぎていた。もはや学術会議の大型モニターには「コロナワクチンと国際政治を考える」と、タイトルが映し出されてはいるが本題には至らず閉会の模様さえ表れ出していた。

 上手くいくと誰もが思っていた。スーパーしらたまの副反応は摘除できた筈だった。

ワクチンを製剤化する団塊でのプロトコルが誰かの手によって書き換えられたに違いない!今更それを言えば空疎な事をのたまう酩酊した老人とあしらわれてしまう。

 どうしたものか・・・。会場の外では助手の大原輝(おおはらあきら)やその妻の大原礼子(おおはられいこ)、専属ナースの庄屋三咲(しょうやみさき)達が帰りを待っている状態。しかし今ここでは総理の救援投手のような官房長官、切込泰一が総理の味方として饒舌を奮っている。いつになく孤独だった。

 あの時は、成功が見えていた。四六時中誰彼となく横を向けば会話が出来た。同じ目標に向かって走っていた時、囲む人が頼もしかった。しかし、今では孤軍奮闘叩きのめされるかも知れない相手と渡り合っている。

 ゴールを見失えばこの日本国の行方はどうなるものか計り知れない。

マサに国際政治だ! 日本国を欲する国に隙を見せては為らない。

 アルツハイマー国は強かで、かなりのハイスペックだ。

刹那、あろう事が過ぎった!「まさか・・・。」出来る筈がない!篠山は過ぎった事案をかぶりを降り、一心に取り消しに掛かっていた。

第二章「新党しらたま」


 結成には現職の」国会議員が5人以上参加する事が定義となる。

例えば篠山が衆議院の選挙に立候補するとなると供託金」800万円が必要となる。

 しかし、選挙の有効投票数の10%を割れば供託金は没収される。

学術会議の関連メンバーに立候補を促そうと思ったが、笑止!生徒会の選挙ではない。

 何事も真剣! 各議員も人生を掛けて立候補している、お遊びではない。

新党結成の賛同を得られて5人が国会議員に当選したとする。しかし当選した途端、当選後の人生観と政策の主旨が変わり新党へ加入しないとも限らない。それはそうだ、供託金といえども800万円は大金だ!一年間それで食べて行ける訳だから、課程を持つ議員候補者は全員アナーキーではない。篠山自信で議員に為り熱い思いを持った国会議員として風雨に晒されながら活動しての努力が買われ、一人二人と篠山を囲む議員があればこその新党結成ならば、例え野党であっても揺ぎ無い一枚岩の政党という事になる。

 政党助成金は政治資金として、各政党に交付される、国勢調査の日本の人口に250円を乗じた額を交付されるから大した額である。

 但し政党の所属議員が5人を割れば解党となる。

長年科学者として身を削って来たが、しらたま開発の時の思いはピュアだった。

 回り道をして櫻守りをやったが、自然の木に触れてみて大自然の生業が掴めた。

かと思われたが、終わりではなく、自身の功績に断崖をされているような面持ちにもなる。 篠山が手掛けた愛のしらたまがハイブリッド化をされ手の届かない製剤としてコロナワクチンに為ろうとしている!

理由は基礎の基礎!血液の凝固反応がそれだ!

灯台元暗しとは良く云ったものだ。

 日本学術会議のメンバーとして、国の決定に従わなければなるまい。

役員には、会長として物理学の小野寺隆(おのでらたかし)、以下4名、薬学の如月八代、(きさらぎやしろ)、機械工学の猫多学一(ねこたがくいち)、

環境学の神村貴子(かむらたかこ)達が副会長として在籍しているが、理学博士の篠山静夫は政治の素人。勅使下向内閣総理大臣に反発して新党を結成しても争点がぶれている故の脆弱な政党として、比例代表選に惨敗するであろうと予測は着く。

 そして事態は刻々と変わっていた。

変異種コロナウイルス感染の疑いのあるインド、パキスタン、ネパールからの入国拒否が制定された。

 それは篠山だけでなく、勅使下向内閣総理大臣も日本国への熱い想いは持っている。「学術会議推薦名簿を見ていない。」政府を俯瞰している。

 君が代斉唱拒否等が想定される日本学術会議の任命拒否理由だと位置付けされようとしていた。

 勅使下向内閣総理大臣は、この後コメントは、せず憲法違反だと国会内で野党につつかれ、なに食わぬ顔で議会を過ごしていた。

 学術会議内でも人事介入は違法だとの意見が相継いでいた。

・・・終わった。

「闘いは終わった・・・。」篠山静夫は科学者としての従属的な政府の考えに異論を唱え第二次世界大戦でハイブリッドな日本軍の悪魔の所業が胸を離れず、日本政府に戦いを挑む決意をしていた。(完)

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願わくは 塩ト檸檬 しおとれもん @hibryid

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