第122話 領主に面会

クレイ 「父さん、いや、失礼しました、領主様」


ブランド 「父さんでいい」


クレイ 「…父さん、準備が整ったので、ダンジョンの攻略に挑戦しようと思っています、一応報告です」


ブランド 「準備というのは、奴隷を買い集めた事か? まさかとは思うが、奴隷達を肉の壁にしてダンジョンを攻略するつもりじゃないだろうな?」


クレイ 「奴隷ではありません、部下…仲間ですよ。誰も死なせるつもりはありませんし、無理もさせるつもりはありません」


ブランド 「それなら…まぁ…奴隷の所持自体が禁じられているわけではないからな。しかし、よりによって祖父が奴隷制度を禁じたこの街で、領主家の人間が堂々と奴隷を使うとは思わなかったぞ…」


クレイ 「俺は家を出た身ですから、ヴァレット家とは関係ないと言う事で。奴隷を酷く扱うつもりはありませんし、いずれ、開放できないかとも考えています」


ブランド 「開放…? 絶対に裏切らないから、冒険者の仲間を募るのではなく、奴隷を買ったのかと思ったが」


クレイ 「裏切られないというか、守秘義務を守って欲しいからなんですけどね。それ以外は、基本的に自由にさせていますよ。皆、命令されたからというわけでもなく、自発的にやる気になってくれています」


ブランド 「欠損奴隷を治療してやったんだろう? そりゃぁ感謝してモチベーションは上がるだろうなぁ」


クレイ 「欠損奴隷は安いですしね」


ブランド 「だが、欠損が治療できると言う事が知レ渡ったら、大変な騒ぎになる可能性があるぞ? それに、お前の武器と……お前の転移能力。知られたら高位貴族や王家さえも動くかも知れん。絶対秘密にすべきだろうな」


クレイ 「秘密を絶対喋らないよう命じてあります、そのための奴隷ですから」


ブランド 「だが、秘密はいずれどこかしらから漏れるものだ…。遅かれ早かれ、面倒事に巻き込まれる可能性はあるだろうな」


クレイ 「そうなったら、仲間と一緒に逃げます」(笑)


クレイ 「僕にはその能力がありますから。どこか遠くの街か、別の国にでも行きますよ。


ああ、もし、父さんに圧力が掛かったら、僕はヴァレット家とは無関係と言い張って下さいね」


ブランド 「安心しろ、一度は死んだと同じと思っているこの身だ。例え王家が相手でも家族を売ったりはせんよ。だから姿を消す必要はないぞ」


クレイ 「いや、無理はしなくてもいいですよ、いざとなったら私は外国にでも逃げますから。それと、…もし、あまりに卑劣な手段を使って来るなら……例え王族であろうと、証拠も残さずに消してしまう事だって」


ブランド 「おい、滅多なことを言うもんじゃない。どこで誰が聴いているか分からんぞ」


クレイ 「領主屋敷ここは大丈夫でしょう?」


ブランド 「と思いたいがな。この屋敷の使用人たちも裏切るような者は居ないと信じてる。だが…さっきお前が言ったように、相手がどんな手を使ってくるか分からん。もし、使用人の家族が人質にでもとられていたら、やむを得ず…という場合もありうる」


クレイ 「その時はすぐに言って下さい。僕がなんとかします。人質はすぐに救出してきますし、犯人も捕らえて見せます」


ブランド 「…なぁ、お前のその能力転移って、もしかして、その気になったら国を取れるんじゃないか?」


クレイ 「その気になれば、不可能ではないと思っています。まぁ、興味ありませんけどね」(笑)


ブランド 「やれやれ…まぁ、過信しすぎるなよ。油断して足を掬われる事のないようにな」


クレイ 「…気をつけます」


ブランド 「それで、ダンジョン攻略すると言っていたが、まさか完全踏破を目指す気か?」


クレイ 「そのつもりです」


ブランド 「何階層あるかも分かっていないのだぞ?」


クレイ 「まぁ、やってみますよ。危なくなったら転移で逃げて来ますから安心して下さい。もちろん、部下も一緒にね」


ブランド 「部下達全員まとめて転移できるのか?」


クレイ 「可能です」


ブランド 「つまり、軍隊を転移させる事も?」


クレイ 「……可能です」


ブランド 「はぁ……。


とにかく、自重しろ、バレないように。知られると、絶対に狙われる事になるぞ、色々な意味でな」


クレイ 「分かっています。色仕掛けとかもあるでしょうし、闇討ち、毒殺、スパイ、人質…想像力を働かせて、色々と対策は考えていますので」


ブランド 「そ、そうか…」


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