第121話 クレイと愉快な仲間達
クレイはリルディオンへとアダモを連れていき、即、治療開始である。
かなり制約をつけられての売却であったが、その制限の中に、身体を治療してはならないという条文がなかったのは確認済みである。さすがに怪我や病気をしても治療してはならないなどという鬼畜な条件は付けられなかったのだろう。欠損の治療は普通ならば不可能と言ってよいほど困難な事なのだから、それが想定されていなかったとしても、条件を策定した宰相は責められまい。
小一時間が過ぎ、治療が終わってアダモは復活した。身体は欠損もなく完全な状態に戻り、清潔な衣服を与えられ、軽食を食べ、久々に人間に戻った気分であろう。
長い虜囚生活の疲れもあるだろうし、急に欠損が治療されて混乱もあるだろうが、意外とアダモは冷静で、状況を受け入れるのが早いようであった。精神力の強さと柔軟さは、さすが歴戦の戦士というところか。
ここから色々と教育しなければならないところなのだが、その前に一度、ヴァレットの街に移動してもらった。再会を待ち望む部下達が待っているからである。
猫娘と部下達はまだダンジョンの中に居たが、クレイがそこに転移し、全員まとめて購入したクラン
そして、そこにアダモを転移で連れていけば、涙の再会である。
テーブルには料理と酒が並べてある。(リルディオンで用意してもらった。)アダモに軽食しか与えなかったのはこの宴が待っていたからである。クランを食堂のように改装していたのが役に立った。
アダモと部下達は大いに語り、飲み、食べ、その日は全員酔い潰れてしまったのであった。
翌日、部下達は冒険者活動へ戻らせ、アダモは一旦部下達と別れ、リルディオンでの教育と訓練である。
ただ、アダモが高名な戦士だった事は伊達ではなかった。アダモは非常に優秀で、ほとんど教える事はなかったのだ。
また、部下達と合流させて冒険者活動をさせてみて分かった事だが、アダモのリーダーシップは特筆すべきものであった。またその戦術眼はクレイも大いに学ぶべきものがあった。
人間的にも尊敬でき、カリスマ性さえもある。なるほど、警戒される人材なわけである。アダモが本気でリーダーとして立ち扇動したら、反乱軍が容易に立ち上がってしまいそうである。
もしアダモの身体が治ったと聞いたら、許可を出した宰相は青くなるかも知れない。
当のアダモは、
アダモは部下達と自分を救ってくれたクレイに深く感謝し、クレイの部下として忠誠を誓った。アダモの部下達も、
クレイは狙い通り、士気の高い部隊を手に入れたわけである。
想定より短期間でアダモの教育は終わり、アダモを冒険者として登録したクレイは、ギルドに正式にクラン立ち上げを申請、登録した。
クラン名を決めなければならないが、名前は後から変えられるというので、アダモ達の部隊の名前であるガルムで登録しようとしたのだが、アダモに止められた。
クレイ 「なんでだ? ガルムってのは確か、稲妻のように早く飛ぶ鳥の名前だったよな? 良い名前だと思うが?」
アダム 「いや、部隊の名前は使わないほうがいい。結構有名な部隊だったから、知っている人間が居るかも知れない。俺達は恨みを買っている事もあるだろうしな。余計なトラブルは避けたほうがいいだろう」
クレイ「うーん、他に急には思いつかないなぁ、じゃぁいっそクレイと愉快な仲間達でどうだ?」
アダモ 「ああ、それでいい」
クレイ 「冗談だったのだが…。アダモはいいのか? “愉快な奴” にされてしまって?」
アダモ 「別に構わん」
受付嬢 「私も良いと思いますよ、クレイと愉快な仲間達。でも、気になるなら、省略形にしてクレユカなんてどうですか? まぁ、気に入らなければ後で変えられますし」
クレイ 「うーん、まぁ、いいか。じゃぁ暫定でクレユカで」
とりあえず、ガルム組はクレユカの内部的なグループ名として使われる事になった。
さらに、アダモを除いて五~六人づつ三班に分け、班長の名前からライザ班、マルボ班、ドニー班と呼ばれる事になった。
ただ、ルルとリリはガルム組とは別枠という事になった。アダモが戻ってきてガルム組の団結が強まり、ルルとリリは女性二人という事もあり、浮いた存在になってしまったのだ。
さて、アダモをリーダーとするガルム組十七名(ガルム小隊)、それにルルとリリとクレイ。総勢二十名となった。まだ十分と言えるかは分からないが、ある程度の人数が揃ったので、ダンジョンの攻略を進める事とした。
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