第86話 すごいニャ! 楽だニャ!
クレイ 「そう、あれだ、三原則!」
ルル 「なんニャ?」
リリ 「三原則?」
クレイ 「ひとつ、 奴隷は主とその家族や仲間に危害を加えてはならない。 また、その危険を看過することによって、主とその家族や仲間に危害を及ぼしてはならない。
ふたつ、奴隷は主にあたえられた命令に服従しなければならない。
みっつ目、奴隷は前に掲げたふたつの命令に反しない範囲で、自身の身を守らなければならない」
これはクレイが前世で好きだった
クレイ 「んー、でも、まぁ、結局は、『奴隷は主の不利益となる行動をしてはならない』でいいような気もするな…。
主やその家族に危害が及ぶのは主の不利益だし。奴隷が命令に服従するのは魔法の力で強制的だしな。それに、奴隷はそれ自身が主人の財産なのだから、それが損なわれるのも主の不利益となるのだから、身を守るのは当然だし」
ただ、何故クレイがこれをわざわざ持ち出して追加したかと言うと、奴隷たちには普段は自由に仕事をさせ、自立させるつもりであったからである。
例えば猫娘二人は冒険者をする事になると思うが、奴隷が冒険者となると、舐めて理不尽な事を言ったりやったりしてくる者がいるかもしれないと想像したのだ。その時にはもちろん、反撃して撃退して構わないのだが、適切に処理して欲しいわけである。
奴隷のしでかした事は主の責任になる。主の不利益となるような行動をされても困るが、それを意識し過ぎて反撃できずに奴隷自身が傷ついても、それは主の不利益となるわけである。そうならないように、最適な対処が求められるわけだ。
難しい事だが、ロボットではない、自分で考えられる人間なので、うまく適切に立ち回ってもらいたい。
ルル 「ロボットってなんニャ?」
クレイ 「ああ、ゴーレムみたいなもんだ。ゴーレムも自立して判断・行動をするが、大部分のゴーレムはそれほど頭が良くないだろう? そのため、あまり複雑な行動はできない。だが、お前達はゴーレムよりは頭が良いはずのヒト種なんだから、自分で考えて最適な行動をとれ、と言う事だ。その時の指針として、『主の不利益にならないように』あるいは『主の利益となるように』考えてみたら分かりやすいんじゃないか? ということだな」
それから、銃の取り扱いについて教える事にしたクレイ。命中率を上げる事、暴発を防ぐ事、そしてフレンドリーファイアを防ぐ事など、意外と注意事項は多いだろう。
ただ、クレイ自身も専門知識があるわけではないので、銃の扱いに関しては手探りである。自身と二人の様子を見ながら随時工夫していくつもりであったが、銃を渡したところ…
ルル 「なんニャこれ?」
ルルが受け取った銃を逆さまにして、いきなり銃口を覗き込んだのでクレイは慌てた。
クレイ 「どうやらかなり初歩的なところから教えなければならないようだな……銃なんて存在していない世界なのだから仕方がないか。
いいか、銃口からは弾丸が出る、当たったら死ぬからな、絶対に覗き込むな、人に向けるな」
使用する時以外はトリガーから指を外しておく、安全装置は撃つ時以外は常に掛けておく癖をつける、など、一応念のため、使う前に素人なりに考えうる基本的な扱いについて指導したクレイ。
クレイは渡した武器に使用制限は掛けず、自由に使わせるつもりだったのだが、やはり慣れるまではクレイの許可なしに撃てないように制限を掛けておく事にした。
まぁとにかく、実戦で使ってみる事にしたクレイ。ペイトティクバの1階層はゴブリンしか出ない階層である。そこで、なるべく他の冒険者が居ない場所を探し、リリとルルにライフルでゴブリンを倒させてみた。
リリ 「これ、すごいニャ」
ルル 「楽だニャ!」
ライフルは接近するまでもなく一撃でゴブリンを倒していく。
クレイ 「なるべく離れた距離で当てられるように練習してみろ」
言われなくとも、ゴブリンの血は臭いのでなるべく離れた距離で倒したい姉妹であった。
ライフルは以前使っていたものと基本的には同じ構造である。亜空間内に砲身を隠し持っており、その中に物体を移動させる魔法陣が大量に刻まれており、中を通る弾丸を加速させて射出する。だが、以前と大幅に変わった点がある。以前の魔法陣ではパワー不足で数グラム程度の重さのモノしか動かせなかったのだ。周囲を取り囲み、さらに重ねる事で卵くらいの重量までは射出できるようにしていたのだが、その一つ一つの魔法陣のパワーが大幅に強化されているのである。それにより、以前よりはるかに短い距離(少ない魔法陣)で弾丸に同じ速度が与えられるようになった。つまり、引き金を引いてから弾丸が射出されるまでのタイムラグは極小、その分、命中精度と連射性能も上がる。
ルル 「三体まとめて倒したニャ!」
弾丸はゴブリンを貫通し、さらに背後にいるゴブリンも貫いていく。うまく当てればまとめて数体倒せる。
クレイ 「背後に何があるかちゃんと確認してから撃てよ。背後に人間が居たり、傷つけてはいけない貴重がモノがあったりする事もあるからな」
ルル 「大丈夫にゃ! 誰も居ないにゃ!」
リリ 「私は四体まとめて倒したニャ」
ルル 「ニャヌ? じゃぁ私はもっとニャ!」
まとめて射撃するのは背後に何があるかを意識するには良い練習かもしれないとクレイも思ったのだが、今度はまとめてたくさん撃ち抜こうと意識し過ぎ、なかなか撃てなくなり、結果的にゴブリンの接近を許してしまった。一応念のため持っていた援護射撃用ライフルを構えるクレイ。慌てて至近距離で一体ずつゴブリンを撃つ姉妹。結局、なんとかクレイの援護はなくとも対処できたのであった。
クレイ 「油断するなよ、欲をかくな。冷静な判断力が必要だ」
そのうち、あらかたゴブリンを倒してしまったので、クレイ達は獲物を求めてさらに下層へと降りていった。
次の階層はコボルトが中心である。
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