第59話 迷宮都市到着

クレイ 「というわけで、やってまいりました、迷宮都市ダンジョンシティリジオン。都市の名前がリジオンなのか、ダンジョンの名前がリジオンなのか、どっちなんや~??? と思っていたら、どちらも同じだったようで。というのは、どうも、迷宮の入口が都市の真ん中にあるらしいんですねぇ、なるほど~。迷宮の上に都市を作ってしまったというか、ダンジョンの入口の村がそのまま大きくなって都市化したという感じなんでしょうか」


トニー 「誰に向かってしゃべってるんだ?」


クレイ 「チューバーの実況っぽくしてみた」


トニー 「チューバー?」


クレイ 「いや、なんとなくだ、特に深い意味はない。


…まずは宿を決めて、そこを拠点にしてダンジョンに挑むか?」


トニー 「あ~それなんだが、悪い。お前はダンジョンに入れないかも知れん…」


クレイ 「なんでさ?」


トニー 「すっかり忘れていたんだが、ここのダンジョンは非常に難易度が高くてな、冒険者ランクD以下は入場禁止って噂を聞いた事があるんだよ…」


クレイ 「なんですとぉぉぉ?!」


登録してから一年未満のクレイ。ランクアップに興味もなかったため試験も受ける事もなく、未だFランクのままなのだ。


トニー 「まぁ、とにかく、噂の真偽確認だな」




――

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というわけで、冒険者ギルドにやってきたクレイとトニー。


超難関ダンジョンがあると言うことで、この街の冒険者はかなりレベルが高い。そもそもCランク以上の冒険者となると絶対数がすくない。その少ない上級ランクの冒険者が、他の街では見ないほどたくさん集まっているのがこの迷宮都市リジオンなのである。


上級ランクが多いせいか、冒険者ギルドは意外と紳士的な雰囲気である。


荒くれ者の多い冒険者であるが、上級ランクともなると、実力に裏打ちされた余裕の為せるものなのか、紳士的な人間のほうが多くなる。


もちろん低ランクの冒険者も居るが、他の街に比べると上級者が非常に多いため、粗暴な振る舞いをする低ランク冒険者など目障りだとすぐに締められてしまうのだ。


なので、意地悪な先輩冒険者に絡まれるテンプレイベント等もなく、クレイはすんなり受付に辿り着き、色々教えてもらうことができたのだが……


結論としては、トニーの言った通り、入場はCランク以上という事であった。


クレイ 「Cランク以上の冒険者と一緒なら入れるとか…?」


受付嬢 「無理ですね。確かにCランク以上の冒険者が居るパーティなら緩和措置がありますが、それでも入れるのはDランク以上となっています。抜け道はありませんので、ダンジョンに入りたいのであれば、ランクアップ試験を受けてDランク以上になるしかないですね。試験は随時受けられますよ、受けてみますか?」


クレイ 「ううむ、仕方がない、受けるしかないだろう…」


受付嬢 「どのランクの試験を受けますか?」


クレイ 「ん? 一段階ずつ受けていかなくていいのか?」


受付嬢 「はい、希望のランクの試験を受けられます。上級ランクの試験を受けて落ちても、実力に応じて下級のランクに認定される事もあります。ただ、高望みして無理な試験を受けると、そもそも試験が成立せず、認定不能となる場合もありますのでご注意下さい」


クレイ 「では、Dラン~」


トニー 「Cランクだな! Cランクの試験を受けろ。大丈夫! お前の実力なら合格できるさ」


クレイ 「ん~まぁ、落ちても下級ランクに認定されるならいいか…」


『はん! 何いってやがる。FランのヤツがいきなりCランクとか! 笑わせやがる。』


突然、後ろから口を挟んできた冒険者が居た。見れば、まだ若い、成人したばかりという感じである。


受付嬢 「あなたは昨日Bランク試験に落ちて、お情けでEランクにしてもらったギージさん」


若い冒険者 「…っ、くそ。おい、俺も明日試験を受けるぞ」


受付嬢 「あなたは昨日受けたばかりじゃないですか」


ギージ 「別に、何度受けても連続で受けても制限はないんだろう? 昨日はいきなりBは無謀だった。だがCなら合格できたはずだ!」


受付嬢 「…ハァ、まぁいいですけどね。では、明日十時にまた来て下さい。時間厳守でお願いしますね。時間を守れるなど、素行も採点に入っていますので」





――

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クレイ 「はい、というわけで、やってまいりましたランクアップ試験です。場所は冒険者ギルドの裏にある訓練場です。どこギルドも必ずありますね、訓練場。試験内容は、試験官との模擬戦のようです……


…って困ったな」


受付嬢 「どうかしましたか?」


クレイ 「試験内容は模擬戦だそうだが、武器はやっぱり、ギルドにある模擬剣とかを使うのか? 俺は遠距離支援タイプなんで、近接戦闘が苦手なんだが?」


試験官 「武器は自分のを使っていいぞ。ここの試験は実戦よりなんだ。ああ俺は試験官のダードだ。それでお前は? 魔法士か?」


クレイ 「いや、ちょっと特殊な武器を使うのだが、まぁ弓士みたいなものだ…ただ…」


ダード 「ただ?」


クレイ 「俺の武器は威力が強すぎてな、手加減ができないんだ。いや、できないわけじゃないんだが、中途半端に手を抜いて試験に落ちてもしょうがないからな。気兼ねなしに殺しに行けるよう、できたら魔物相手の試験とかに変えられないか?」


ダード 「ほう、なかなか自信ありのようだな。だが大丈夫だ! この訓練場には特殊な魔法が掛かっていて、多少怪我をしても外に出れば回復するようになっている」


クレイ 「それはどの程度の怪我まで回復するんだ? 手足を吹き飛ばされたら?」


ダード 「手足を切り落とされたくらいなら回復できるぞ」


クレイ 「それはすごい……頭とか心臓を吹き飛ばされたら?」


ダード 「そこまでだと回復不可能だな。だが、大丈夫だ。どれほど自信があるのか知らないが、お前程度の攻撃、俺の身体強化と防御障壁を破れると思ってるのか?」


クレイ 「それじゃぁ、死んでもいい試験官を用意してくれ」


ダード 「生意気な。いいだろう、本気で相手をしてやる。殺せるものなら殺してみろ!」


受付嬢 「あのー、もう一人居るんですけど…?」


昨日の若い冒険者ギージも試験を受けに来ていたのだが、ダードとクレイの殺気立ったやりとりで少々萎縮してしまったようだ。



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