第56話 ケイトの治療開始
その後。
アレンとクレイから報告を受けたギルマスのサイモンは、領主のブランド子爵とラーズ子爵とも相談し、ダンジョンへの子供の立ち入りに関してさらに一段厳しいルールが設定される事となった。部外者がダンジョンで勝手な行動をすると危険だというガミオラの意見が(一理は)認められた形ではある。ペイトティクバは極めて安定したダンジョンであるので、1~2階層に子供達や部外者が出入りしたところでそれほどの危険はないのだが……ただ、今回のパピの件のような事態も含めて、子供達がダンジョンの中で死ぬような事がないようにしようと言うことになったのだ。
具体的には、未成年者は大人の冒険者と一緒でなければダンジョンに入れないのはこれまでと同じだが、一緒に入った冒険者に、ちゃんと子供達がダンジョンから出るまで子供達の面倒を見ることを義務付けたのだ。
ただ、それでは引き受けてくれる冒険者が居なくなってしまうので、引き受けた冒険者にはギルド(領主)から報酬を出す事になった。つまり、依頼として子供達の引率という仕事が追加されたのである。しかも、ランクはC以上指定でかなり高額な報酬が設定された。
さらに、ダンジョンに入る子供達には、年齢制限を撤廃し、子供達用のランクを設定し、准冒険者として登録を認める事となった。登録すれば子供でも保護者なしでダンジョンに入れるようになるが、冒険者としての教育をキチンと受ける事が義務付けられる。
もちろん、基本的には未成年者は街の孤児院で保護養育するのが基本であるのだが。どうしても孤児院に合わないという子も居るので、その自由を尊重しつつ、保護していく方針である。
この国でここまで子供達を保護する領主は滅多に居ないのだが、ヴァレットはダンジョンの
* * * *
それから半年。
なぜかラーズ家から『ケイトの治療はしばらく待ってほしい』と連絡が来て、待たされる事になってしまったのだ。(なんでも、ケリー夫人に何か変化があったようで、もうしばらく様子を見たいと言う事であった。)
すぐに連絡するから、それまで待っていて欲しいという事だったので了承したクレイ。連絡が来るまで気長に待つ事にしたクレイは、たまにアレンの子供達の引率クエストに付き合ってダンジョンに潜ったりしつつ、魔導具の製作・改造に勤しむ事にした。
冒険者になって魔物と戦うようになってから気づいた事はたくさんあるが、その一つはやはりクレイの魔導銃の弾切れの問題である。その点は弾が満装填された銃を何丁もマジックバッグに入れておき、弾切れになったら即持ち替えれば良いと思っていた。だが、クレイはついにリボルバー式のこだわりを捨て、マガジン式の銃の開発に着手したのだ。そもそもリボルバーにこだわっていたのは、『なんとなく格好いいから』という以外には特にないのだから…。
ちなみに、アレンはすっかり子供達の教育を担う専属の
子供の指導についても、ダンジョン入口の村に居る子だけでなく、孤児院の子供達の中からも、希望者は冒険者修行を始める事になったのだが、冒険者を志望する子供は非常に多かった。アレンは【黄金の風】のメンバーにも手伝わせていたが、手が足りなくなくなっていた。すると、他にもトレーナーとして名乗りを上げてくれる冒険者がチラホラと出るようになった。この街には孤児院出身の冒険者が多く、孤児院の後輩の子供達のためにと考える冒険者は結構居たのである。
(クレイは自身が初心者であるため、指導教官としては役立たずである。むしろ、子供や初心者と一緒にありがたく学ばせてもらうのであった。)
そうこうしているうち、半年が過ぎ……ついにラーズ子爵家からクレイの元に連絡が来た。クレイはラーズ子爵の屋敷に出向き、ケイトの身体に魔法陣を描く事となった。
半年も待たされたのは、ケイトの母、ケリーの体調に思わぬ変化があったからだそうだ。何か不具合があったのかと心配したクレイであったがどうやらそうではなく、魔法陣で体内に常時蓄積させるようになった魔力に反応してか、なんと、ケリーの体内の魔力生成器官が機能し始めたのだそうだ。
体内の魔力生成と、魔法陣による魔力吸収で、ケリー夫人は少し魔力過多の症状が出てしまっているようだが、それは魔力を大量消費する魔法を使って解消できる。
そうして様子を見て、完全に体内の魔力生成器官が正常に動く事が確認されたので、治癒師を呼んで火傷によって描かれている魔法陣を治療して消して、さらに様子を見たとのこと。そして、消した後も、ケリー夫人の内蔵は順調に魔力を生成する事が確認されたのであった。
そこで、同じ治療をケイトにしようと言うことになったわけである。
いずれ消すのであれば、インクのみの魔法陣で良いという事になった。中途半端に魔法陣が消えてしまって誤動作する事を懸念したクレイであったが、インクが消えないように保護する魔法があるとかで、それを試してみることになったのだ。(それを使える魔術師を王都から呼んであるそうだ。)
光感応式インクを使って、光魔法で映し出した魔法陣を定着させた後、雇われた魔法使いがそこに保護魔法を掛けてみる。どうやら透明な膜を上に張り保護するような形らしい。だが…
保護魔法師 「あ~…これはダメですねぇ……」
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