第44話 ゴブリンコロニー殲滅
さて、父親であるヴァレット子爵が王都へ出向き裁判などしている間、クレイがどうしていたかというと―――
クレイはヴァレットの街の自宅に戻り、アレン達のパーティ「黄金の風」と共に冒険者活動をしていた。
と言っても正式加入ではなく、クレイの気が向いた時だけ臨時で参加するという、随分クレイにとっては都合が良い条件なのだが、アレン達がそれで良いと強く望んだので了承した。クレイが領主の息子であるという事を知った事もあったが、それ以外にもクレイと繋がっておくメリットは大きいとアレン達は判断したのである。クレイも、冒険者活動で魔導銃やその他の魔導具の改良点を洗い出し、それを改良する事を繰り返すのにちょうど良かったので、ウィンウィンの関係と言える。
今日は森の中に発見されたゴブリンの小規模コロニーを潰すという依頼を受けた黄金の風にクレイが助っ人参加である。
森の中を進むと、やがて
望遠鏡を使ってトニーが確認する。(これもクレイが創った魔導具である。光を応用した魔道具はクレイの得意分野となっていた。)
トニー 「思ったより多いな…」
見たところ、ゴブリンの数は全部で40~50匹は居たようだ。
想定していたよりは多いが、このまま放置してさらに数が増えれば街にとって大きな脅威になる。今はクレイも居るし、アレンはここで潰しておくという判断をした。
距離があるのでまだ
クレイはさらに改良を加えた新しい魔導銃を持ってきている。クレイは長らく、狙撃用ライフルのようなイメージで銃を開発していたのだが、冒険者になって森で魔物と戦ってみて、それでは実用的ではないと判断。開発途中だったショットガンを改良して仕上げてきたのである。
この銃は、まず、弾丸に回転を一切与えていない。回転を与えると直進性は高くなるが、散弾で使用した場合は遠心力のため短距離で
(※至近距離で拡散するのであれば面で効果を発揮するので接近戦で使えるかとクレイは考えていたのだが、よく考えたらそういうシチュエーションはあまりない事に気が付いた。一人であれば、例えば盗賊に囲まれたというようなシチュエーションでは短距離拡散型の弾丸が効果があるのではないかと考えていたクレイだったが、今のように仲間と共に行動するようになると、攻撃範囲があまり広がると
また、口径を限界まで大きくし、大量の散弾を発射できるようにした。弾丸の重量が増すとその分速度が落ちるが、回転方向に使っていた魔法陣を全て推進方向に動員したので速度はそれほど落ちていない。
さらに
散弾にも工夫を加えた。以前デビルバイソンを仕留めた弾丸は、前半が貫通力を持つ弾頭で、後部が樹脂で固められた散弾になっている弾丸であった。
新しい弾丸は、樹脂の部分を粘度・強度を弱めた接着剤にし、空中で拡散し始めるようにしたのだ。接着剤の粘度を調整する事で、どれくらいの距離で拡散するかを変える事ができる。
クレイは距離に応じて何種類か散弾を作ったが、今回のは遠距離射撃用の散弾である。百メートルほど飛んだところで1~3メートルの範囲にペレットが拡散される感じとなる。
その弾丸を使って、ゴブリンのコロニーを狙撃するクレイ。
一発撃つごとに、3~4匹のゴブリンがまとめて吹き飛んでいく。
突然攻撃を受け、ゴブリンはパニックを起こしていたが、やがて一定方向から攻撃を受けているのに気付き、物陰に隠れてしまう。だが、クレイの銃の破壊力は強く、岩でもなければ破壊できるので、同じ場所に二~三発撃ち込めば隠れたゴブリンも倒す事ができた。
最終的には半数近くまで数を減らすことができたようである。(残るは岩陰に隠れたり森の中に散開して逃げたゴブリンである。)
そこから、アレンが一気にコロニーに向かって高速で突進してく。アレンは大剣を使う強剣士で、パーティの攻撃力担当である。魔力による身体強化が使え、それにパティがさらに強化魔法を重ねがけする事で、敵中に殴り込み大剣を高速で振り回し無双するのだ。
アレンは高速走行で一人で先にコロニーに突入して隠れていたゴブリンを蹂躙し始めていた。やや遅れて、他のメンバーもコロニーに突入していくが、クレイはコロニーには踏み込まず、少し手前に留まって援護射撃である。フレンドリーファイアを防ぐため、コロニーの中は狙わず、逃げ出したゴブリンを始末していく。
やや距離が近いが、長距離用の散弾は近距離で使った場合は広がらないので、散弾によって仲間が傷つく心配をしなくてよい。弾は拡散せず塊で当たるが、それはそれで着弾後に砕けてダメージを広げる効果があるので、威力としては十分である。ゴブリン程度の防御力では防ぎようもなく、手足に当たれば手足が千切れ、胴体に当たれば大穴が空き、頭に当たれば頭がほぼ全部消し飛んでしまうのであった。
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程なくしてゴブリンの小規模
パティ 「クレイが最初に減らしてくれるから、今までより楽ね」
アレン 「クレイ一人で随分倒したよな、報酬の配分を考えなければいかんか」
ノウズ 「報酬は均等って約束だろう、単なる役割分担してるだけだ」
トニー 「ノウズなんか一匹しか倒してないしな」
ノウズ 「三匹は倒した! だいたいトニー、お前だって言うほど活躍はしとらんじゃないか」
トニー 「俺は六匹は倒したさ」
パティ 「しょうがないじゃない、ノウズは盾士、トニーは
クレイ 「ああ、そうだな」
アレン 「ただ、その武器の(弾丸の)補充にも金が掛かるんだろう?」
クレイ 「いや、それほどでも。全部自分の手作りだから労力はタダだし、弾は鍛冶場の屑鉄の破片とか詰めてるだけだからな。ただ、手作りだから時間が掛かるんだよなぁ…」
トニー 「敵襲!」
その時、突然トニーが叫んだ。慣れているアレン達は即座に反応して武器を構えて戦闘体制に入る。だが、パーティでの連携に不慣れなクレイの反応は遅れてしまった。
そして周囲から襲いかかる影。
速い!
不意を突かれたクレイに、魔物が襲いかかってきた…
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次回予告
クレイ、旅立つ?
乞うご期待!
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