第26話 冒険者達に絡まれる?
パーティ「黄金の風」は、リーダーの大剣使いアラン、魔法使いのパティ、
「黄金の風」が森の奥での狩りを終えて街への帰還途中であったが、その途中、スカウトのトニーが、一列になって走るゴブリンを発見した。
トニー 「見ろ、ゴブリンだ…なんで一列に走ってるんだ? ああ、誰か追われているのか? なんだ、あれじゃぁモンスタートレインだな。まぁ誰かに押し付けようという感じじゃないが……逃げ切れる感じにも見えんな。どうするアラン? 助けるか?」
ノウズ 「ゴブリン二十匹弱というところか。とは言え我々も大分疲れている、あまり無理はできないが」
アラン 「確かに消耗しているのは事実だが、ゴブリン二十匹程度なら俺達ならなんとかできない数じゃない。人が襲われているのなら、助けられるなら助けようじゃないか」
リーダーのアランの言葉にすぐさま黄金の風のメンバーは武器を抜き、ゴブリンに向かおうとしたのだが、その瞬間、ゴブリンに追われていた者が立ち止まってクルリと振り返ったため、アラン達は足を止める事となった。
立ち止まったその男は、振り返るやいなや杖のような物をゴブリン達に向けていた。そして一瞬の間の後、一列に並んでいたゴブリンが一斉に倒れた。
ノウズ 「……助ける必要はなかったようだな…。冒険者か?」
見ていると、倒れたゴブリンの三匹ほどがヨロヨロと立ち上がり逃げようとしていたが、男が再び杖を向けると、その三匹もすぐに倒れ動かなくなった。
トニー 「一瞬で十五~六匹倒していたな、魔法か?」
アラン 「視認はできなかったが、おそらく魔法だろうな。あの妙な形の杖から何か放ったんだろう」
パティ 「魔法じゃないと思う。魔力を感じなかった…」
トニー 「だったら何だって言うんだ?」
パティ 「…弓とか?」
トニー 「ゴブリンとは言え、一本の
ノウズ 「弓ではないだろう、弦を引いている様子は見えなかったし、ボルトも見えなかった」
アラン 「ちょっと声を掛けてみるか…」
パティ 「危ないヤツだったらどうするのよ? こんなところに一人で居るなんておかしいわよ」
ノウズ 「大丈夫だろう、相手は一人だ、俺たちは四人。何かあっても俺の盾で守ってやるさ、いつものようにな」
パティ 「ノウズがそう言うならまぁいいけど…」
アラン 「怪しいからこそ、声を掛けてみるのさ。まぁ警戒は怠るなよ」
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アラン 「おい、大丈夫か?」
クレイ 「ん? ああ、大丈夫だ、ちょっと油断した。そんなに(森の)奥まで入る気はなかったんだがな、ゴブリンに追われて逃げ帰ってきたよ」
ノウズ 「冒険者か?」
クレイ 「ああ、今日登録したばかりの新人だ」
顔を見合わせるアラン達。
ノウズ 「一人か? 仲間は?」
クレイ 「仲間はいない、まだ誰とも組んだ事はない、組む予定もない」
パティ 「今日登録したばかりの新人が、たった一人で森の中? しかもゴブリン二十匹を簡単に討伐してみせて。ちょっと新人とは思えないんだけど?」
クレイ 「せっかく
ノウズ 「街の外に出られるのが嬉しくて、一人で散歩して? 魔物に襲われたが、それも余裕で撃退してみせて? だが新人だと名乗る怪しげな冒険者となると…何か訳あり、これ以上詮索はしないほうが良い案件かもしれんな?」
クレイ 「あやしげ? 本当に何も裏はないぞ? ちょっと反省はしてる、出歩くにしても、もうちょっと準備が必要だったな。さすがに今日はもう街に帰るよ」
アラン 「あ、おい、ゴブリンはどうするんだ? 置いていくのか?」
クレイ 「ああ、素材ほしいならやるよ。俺はいらないから」
トニー 「一人では解体が大変だっていう理由なら、俺達が手伝ってやるぞ? ゴブリンの討伐証明部位は左耳、肉も皮も価値はないが、魔石は売れる。耳だけでも持っていけば僅かだが報奨金が貰える。まぁどっちも大した金額ではないがな」
クレイ 「俺は金には困ってないからな。小銭を稼ぐ必要はあまりないんだ」
パティ 「ますますおかしいじゃない。新人ならゴブリン倒して稼ぐもんでしょうに…」
トニー 「金持ちのボンボンか?」
クレイ 「いや、ただの魔導具士さ」
アラン 「魔導具士?」
クレイ 「魔導具売って稼いでるから、あまり金には困ってないのさ」
トニー 「魔導具なんて高くは売れんだろう?」
クレイ 「そうでもない。お前達だってマジックバッグなら多少高くとも欲しいだろう?」
腰につけていたマジックポーチを指しながら言うクレイ。
パティ 「あ、それ! 最近時々オークションに出てくるマジックポーチ!」
アレン 「貴族が高値で競り落とすからなかなか手が出ないが、結構頻繁に出てくるんで徐々に値が下がってきてるらしいが、まさか…」
パティ 「あんたが作ってたの?!」
クレイ 「まぁな。稼がせてもらってるよ。冒険者になったのは、魔導具の実験をするために町の外に出たかったんだよ」
アラン 「ああ、さっきその変な形の杖を使ってゴブリンを倒していたな」
パティ 「それも魔導具? 魔法で攻撃したにしては、魔力を感じなかったんだけど?」
クレイ 「杖じゃない、魔導銃、って言っても分からんか。弦の要らない弓みたいなもんだよ」
パティがほれ見ろと言う顔でトニーを見た。
トニー 「弓にしては…ゴブリン達を一撃で倒したように見えたぞ、威力が強すぎないか?」
クレイ 「ああ、弓のようなとは言ったが、威力は弓の比じゃない。岩も割れたし…」
先程弾が当たった岩は、亀裂が入って二つに割れていた。(たまたま当たりどころが良かったという可能性もあるが。)
クレイ 「高ランクの魔物が来てもなんとかなる……予定なんだが」
まだ試してないんで、絶対とは言いきれないクレイであった。
ノウズ 「たかが魔導具で、岩が割れるとか(笑) なかなか吹くな」
クレイ 「試しに自分を撃ってみろとか言いだすなよ?」
ノウズが背負っている巨大な盾を見ながら言うクレイだったが…
ノウズ 「なんで俺が言おうとした事が分かった?」
パティ 「ああ、またノウズの悪い癖が……」
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次回予告
クレイの魔導銃は通用するか?
乞うご期待!
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