第2話 起床! グッドモーニングセクハラ
ピピピ……と鳴るアラームを止める。
高校卒業以来、久しぶりに鳴る目覚ましだが、嫌な気持ちはしない。
「ん~っ、よく寝たぁ~」
大きなベッド。広い自分の部屋。
窓を開けると、花が咲いたガーデン。これが金持ちの家の生活か~!
俺の名前は
どこにでもいる大学生、になりたかった浪人生だ。
今日から新生活、新しいお仕事の始まりだ。
平うかつという、中学三年生の美少女にセクハラを教えるのが俺のバイトだ。住み込みで三食風呂付き、洗濯やベッドメイキングはしてもらえるという高待遇。しかも日給三万円。夢のようなお仕事です。
問題は恋愛関係になるのは絶対NGということくらい。俺は早くも彼女を好きになってしまいそうだが……大丈夫、セクハラしてくる親戚を好きになる女の子なんていないだろうよ。
さ、顔を洗って歯を磨いたら早速仕事を始めるか。
この家は3階建て。俺は2階の部屋を用意されている。
洋式の豪邸で、廊下には赤絨毯が敷いてある。ご想像のとおり、絵画やら花瓶やらがちょいちょい飾ってあるぞ。ほんと金持ちってこんな感じなのね。
自分の部屋では靴を脱ぐが、廊下からは靴を履くというスタイル。ま、日本のホテルみたいな感じだな。
サンダルを履いて、洗面所に向かおう。
「おっ」
「あら、おはようございます」
部屋を出たら廊下に彼女が。
うかつちゃんの部屋も2階だから、洗面所から戻るところなのかもしれない。ちなみに女性用のトイレは3階だ。俺は3階には行ってはいけないことになっている。さすがにトイレでセクハラはしなくていいとさ。
逆に、3階以外で会ったらいつでもセクハラをしろとのこと。
うかつちゃんはすでに制服を着ている。黒に近い緑色のブレザーに、チェックのスカートだね。お嬢様学校らしく、清楚でかわいらしい。
化粧もしてないのに、朝から完璧な顔をしている。思わず見とれそうになるが、挨拶をされているからな。
「おはよう……」
初日とはいえ朝一発目だし、普通に挨拶するだけでいいのだろうが、日々の生活の中で、ときおりセクハラを混ぜてやるように言われているからな。
バランスよく今日一日セクハラするためにも、ここはセクハラしておいた方がいいだろう。
「今どんなぱんつ履いてるの?」
うん、自然に言えたぞ。
ベタだが、なかなかいいセクハラができたんじゃないか?
教えてくれなくていいからね。断っていいんだからね。
「これです」
「ぶーっ!」
あっという間にスカートを捲った。なんの躊躇もなく。この女の子にはセクハラの前に常識を教える必要があるのでは?
思わず目を背けてしまった常識的な俺だが、セクハラしなきゃいけないんだから、ここは見ないといけないな……仕事だから……ぱんつを見ないと……。
ちらちらとぱんつを見ると、うかつちゃんは俺を覗き込むように見上げる。なんとあざといことを自然にやる娘でしょう。
「どうですか?」
「どうですかとは?」
唖然としていると、ぷくーっと頬を膨らませた。いちいちかわいいな……。
「どんなぱんつ履いてるのかと聞いたから見せたのではないですか。なにか言うのが礼儀というものですよ」
どうやら俺の方が怒られているようです。礼儀がなってないってさ。
ぱんつの感想を言うなんて、セクハラじゃないか……って、いいのか。セクハラするのが俺の仕事だ。
なるほど、それならじっくりと見ようじゃないか。
しゃがんで、顔を近づけた。なんかいい匂いするぞ……股間なのに……これが美少女か。
「ふーむ、光沢のあるピンクでシルクのパンティーだな。さすがお金持ちって感じだ、かなりいいものに違いない」
スカートを捲った女子中学生の股間に顔を近づけて、まじまじと解説してしまった。こんなことがあるんですね。人生とは数奇なものです。
「そうですね、いい下着です。お気に入りなんですよ」
しかし全然嫌がらないし、セクハラを指摘してこないな。これはダメですね、ちゃんと言わないと。
と思っていたら、彼女が先に口を開いた。
「で、どうですか?」
「へ? どうですかとは?」
「もう。いいものとかそういうことじゃないでしょう。今わたしは着ているものを見せているんですよ?」
「は? へ?」
なに?
なんで俺のほうがわからないやつみたいになってんの?
まるでわからないという顔を見て、彼女はやきもきしつつ人差し指を俺に突きつけた。
「感想! 感想を言うのが礼儀なんです!」
なるほど、感想。解説じゃなくて感想を言うのが礼儀だったか。
セクハラだと思ってない彼女からすると、下着も洋服も同じということだろう。セクハラの説明をする前に、まずは俺からぱんつを見た感想を伝えないといけないようです。それもセクハラなんだよなあ……。
まあ、本当に思ったことを言うか。
「そうだな、とても似合ってる。かわいいうかつちゃんにふさわしい、すごくかわいいぱんつだと思うよ」
「わ、わわわわわわ」
スカートを捲っていた両手で顔を隠した。
ぱんつを見られているときは恥ずかしくなかったのに、今は恥ずかしいようです。わからないなあ、女心は。
「う、嬉しいです。褒めてくださってありがとうございますっ」
「あっ」
そう言って、すたたーと立ち去ってしまった。
今のどこがセクハラだったのかとか教えなきゃいけないのに。困ったものだなあ。
しかし……うん。素敵なものを見させてもらった。
さて、支度をして朝食にするか。
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