第26話 戸惑う人々
メビウス飛空艇団が訪れた街では、断続的に続く地響きによって人間たちが慌ただしい様子で広場に集まっていた。
「ヒナタ、早くこっちにッ!」
広場を目指していたヒナミが後ろを走るヒナミの手を握った瞬間だった。
彼女たちの隣に鬱蒼と生えていた樹海の植物が突然その枝を伸ばして襲いかかってきた。
「――ッ!?」
咄嗟にそれに気づいたヒナミは短剣を引き抜くと同時にエーテルを込めると、強化した刃で襲いかかってきた枝を断ち切る。
「なんで樹海が……」
突如として襲いかかってきた不気味な植物を前に、思わず呆然とした様子で声を漏らすヒナミ。
すると今度は足元にいるヒナタが声を上げる。
「お姉ちゃん、あれッ!」
ヒナタの怯えた声が聞こえた瞬間、彼女と同じく前方に視線を移したヒナミが思わず目を見開く。
その視界に映ったのは、大樹の根元の一部と思わしき一際大きな根が突然地中から現れて、自分たちの行く手を阻んできたのだ。
「しまったッ!」
ヒナミは妹を連れて慌てて路地裏に逃げ込もうとするも、現れた巨大な根はまるで捕食者のように二人に勢いよく襲いかかる。
「くっ」と咄嗟に妹を背中に隠したヒナミが短剣を構えた瞬間、襲いかかってきた根っこが凄まじい炎に包まれた。
「二人とも何してる! 早く広場に走れ!」
慌てて駆けつけてきた仲間たちの援護によって何とか難を逃れたヒナミたちは、彼らが樹海の植物と応戦している間に急いで広場を目指す。
「ミカゲ様、これは……」
広場までたどり着くと、すでに到着していた長に向かってヒナミが動揺した様子で尋ねた。
その言葉を受け取ったミカゲは、険しい表情で辺りを見回す。
「おそらく大樹で何かが起こっているのだろう」
「……」
ミカゲの言葉を聞いて、遥か前方に聳え立つ大樹を見上げる二人の姉妹。確かに彼が言う通り、大樹からはまるで鼓動するかのように大きなエーテルの波動が伝わってくる。
明らかに何か不吉なことが起こりそうな前兆に、思わずゴクリと唾を飲み込む街の人間たち。
するとその直後、伝わってくるエーテルの波動の中に、ふと覚えのある感覚を感じ取ったヒナタが不安げにぼそりと声を漏らした。
「うさぎのおねーちゃん……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます