第13話

 気がついたら銀時と湯に浸かっていた。


 あの後、肩を貸してもらって引きずる様に歩いて銀時の自宅まで連れて来られたらしい。

 身体が冷えてて俺が気を失っていたからとはいえ、背中から抱えられてほぼ密着で風呂に入ってるのはちょっと嫌だ・・・。


 長屋には無い個人の家の風呂だ。

 たまに借りてるし、小さくても銭湯よりよっぽど良いんだが・・・。


「お前・・・ここまで世話焼かんくても良いだろ」

 

 逞しい身体になんか八つ当たり気味な怒りが。俺は頑張ってもこの程度の筋肉なんだよなぁ。


「・・・落ち着いたか」

 耳元で低い声が聞こえる。

「んーそうだな。落ち着いた」

 銀時の肩に頭を預けてもたれる。


 昔からこいつは俺に優しい。甘やかすだけ甘やかして。でも離れ離れになって。

 再会したらお前は俺の親父かよ?ってくらい世話焼いて。


 いつまで経っても昔のまま、俺はチビで守る対象なんだなぁ。


「お前はもうこの町で俺たちと気楽にいれば良いんだ」

 濡れ鼠で風呂に入ったからか髪を湯船に広げられてて、手で掬ったお湯をつむじあたりから掛けられたりして。子供か。


「長屋じゃなくてここに住めば良いのに」

「何でだよ。囲いもんにでもしてぇのか?」

 まぁ長屋も銀時が仕切ってるから同じかもしれんけど。


 一緒に育った連中と同じで血は繋がってなくても兄弟で家族で仲間だ。でもコイツは俺に一番甘かったんだよな。


「そーいや、蘇芳のとこ戻らなくて良いのか?」

「こっちの方が近かった。蘇芳には連絡してあるし、明日戻れば良い」


 まだ長屋には帰れないらしい。

 代官のことは時期に・・・って言い切れるんだから、お上か闇かどこかが動き出したって確信があるんだろう。


 俺がヤってやりたかった。

 だが勝手に暴走したら銀時も俺も町を出るしか無いだろう。俺だけなら知ったことかと言えるけど、銀時にはこの町で足場を固めて新しい仲間がいる。

 銀時まで巻き添えにしようもんなら、八曜姐が里からやって来て地獄まで追いかけてくるだろう。


 後手で銀時の頭を掴んで水面につけてやる。銀時の腕が腹に回って絞められた。

「ぐっぅふ」

 いつまで経ってもガキのままこうやって絡んで甘えて笑い合えて最高だ。


「蘇芳んとこの風呂で入ろーぜ。あっちはここの倍だし、2人で入ってもくつろげるぞ」

 ここのも良い風呂だけどな。


「そーいや、トリはまだ帰れない?」

「代官が交代するまではな」

 可愛いが足りない。早く帰って来て欲しい。


 はぁ、早くいつもの騒がしい長屋に戻りてぇな。


「若ー!!飯置いてるんでお早めにどうぞー!!」


 今の方から若いのの声がする。

 手下や何かは隣の屋敷に住まわして、自分用に離れの様な家を建てて過ごしてるから、銀時は普段向こうで飯食ってる。

 俺や蘇芳がいる時だけこうしてこっちで取るから持って来てくれるからゆっくり食える。


 髪がすぐには乾かねぇからギュッと絞って簡単に結い上げようとしたら、銀時が手拭いを何枚か重ねてザッと水分を取って髪を軽く巻きあげてくれた。

 銀時も長髪だから同じ様にしてやる。身長差があるから、少し屈んできたのが悔しい。

 寝巻きを着て、食卓についた。





____________


 長屋や庶民のうちにはお風呂がないけど、小間使いみたいな薪焚き役が雇えるようなお金持ちならお風呂があるお家に住めるって感じです。


 銀時は子分や手下がいるので屋敷には銭湯よりは小さめのお風呂、離れには一人でゆったりするお風呂。

 蘇芳の自宅はお金持ちなので3人くらいは余裕なお風呂があります。

 


 


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