第2話・父との狩りと魔物襲来

「父さん、今日の獲物はどうする?」

 近くの森の中ユウキは狩りの為の道具を確認しながら父親にそう質問をする。


「そうだな。今日はイノシシを狙いに行くか」


「オッケー、イノシシだね。じゃあ探してくるよ」

 目に魔力を込めて遠くを見渡してイノシシを探すユウキ。


「ああ、任せた。しっかし本当に逞しくなったなユウキは」


「もう。どうしたのお父さん急にそんなことを言い始めるって」


「いや。昔はイノシシに威嚇されて、キャッって悲鳴をあげていたのを思い出してな。それを考えたら本当に成長したなって」


「それって何年前の話だよ。俺はもう子供じゃないよ」


「ハハハ。そうだな。もうお前は大人だ。後は早く孫の姿を見せてくれるとありがたい限りだがな」


「もう。やめてよお父さん。でもいつか必ず英雄になって、イトと・・・・・・」

 少し照れたのか顔を赤らめた息子を父が豪快に笑う。


「ハハハ、それはライバルのジークに取られないように気を付けないとな」


「そうだね。ジークには絶対に負けないよ」


「まあ、何にせよ。ユウキが一人前に育ってお父さんは非常に嬉しい限りだよ。ああ。本当に嬉しいよ」


「どうした急にしみじみと呟きだして」


「いや。すまん。何でもない。少しお母さんのことを思い出してね。きっと天国で嬉しそうにほほ笑んでるだろうなって」


「そう、だね」


「ああ。そうだな。・・・なあ、実はお前に伝えたいことがあるんだ」

 何かを決意したようにやけに神妙な顔をする父。

 ユウキはそんな父の顔を初めて見た。それくらい、何かを悩み考えている顔だった。


「どうしたの急に」


・・・・・・・・


少し沈黙が支配する。


ガサガサ


沈黙を破ったのは少し遠くの木の陰にいたイノシシが葉っぱを踏んだ音だった。


「あ、イノシシ発見。じゃあお父さん、取り敢えずイノシシに逃げられないうちに捕まえてくるよ」


「ああ。そうだな。お父さんも手伝うぞ」


 そうして、お父さんの話は有耶無耶になり、二人はイノシシを捕まえるために駆けたのだった。


――――――――――――――――――


 ユウキは腰にかけている投擲用ナイフをイノシシの足に向かって突き刺して動きを止める。

 すぐさま背中にかけてある弓を取り出して狙いを定めて・・・一射・・・放たれた弓はいともたやすくイノシシの頭を貫き絶命させる。


「腕をあげたなユウキ」


「まあね。それに俺は未来の英雄だよ。これくらいは出来るよ」


「未来の英雄か・・・ああ、ユウキ、お前なら絶対になれる。お父さんが断言してやる」


「ありがとうお父さん。絶対になってみせるよ。あ、それより早くイノシシの血を抜いて解体をしなくちゃ、味が落ちちゃうよ」


「ああ。そうだな」


二人はイノシシの解体を始める。


 そこはベテラン狩り人と15歳とはいえ才能に溢れたユウキ、あっという間にイノシシの血を抜き皮をはぎ、肉を分けると持ってきた保存用の葉っぱに丁寧にくるんでいく。


 その様子は正に熟練の一言であり、一切無駄のない動きで解体が行われるその姿は何処か芸術性すらも感じる程だった。


「よし。解体終わり。さて村に戻るか」


「ああ。そうだねお父さん」


「そうだ。ユウキさっきの話の続きをしよう」


「さっきの話って。ああ、そういえば何か言おうとしてたね」


「ああ。取り敢えず落ち着いて聞いてくれ。お前は・・・お前は・・・実は・・・」


 ドン


 激しい爆発音が村の方向から聞こえた。


 二人は何事かと慌てて村の方を見ると村から煙が上がっていた。

 そして耳をすますと魔物の声と悲鳴が聞こえる。


「お父さん今すぐ村に戻らなきゃ」


「ああ。そうだな。行くぞユウキよ」


 二人は解体したイノシシの肉をその場に置き、全力で村に向かって走るのだった。


 ――――――――――――――――


 今日はもう一話投稿します。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る