少女キキと、少年ルースは冒険者である。
それぞれに、文字通りに『険しきを冒し、未だ見ぬ荒天を破る者達』である。
だが。彼らが【英雄】である時代はとうに過ぎ去ってしまった。
蒸気機関が煙を吐き、人間種と、多種多様な亜人種がひしめく『自由の都市』リベルタス。
かつてこの世にあったはずの神秘や幻想は、今や蒸気機関の竈に放り込まれて、黒と白の煙に変わって、遠く青くあった空すらも覆い隠してしまった。
そんな都市に、冒険者は肩身が狭い。かつて存在したニッチは今や猫の額ほどにもなく、糊口をしのぐため、酒場でアルバイトをしなきゃならない日もある。
きっと彼らはいずれ、時代に忘れされ、消え去ってしまうのだろう。
そして彼らと同じように忘れられようとしている神秘と幻想もまた、都市に復讐する機会を伺っていたのだ……というお話。
非常に作り込まれた世界観と、精緻な描写と、個性豊かなキャラクターによる掛け合いが魅力のスチームパンク風ファンタジーです。
Episode I以降の展開にも期待しています。