第4話退職

6年間勤めた会社を辞める日がやってきた。

最後の日なのに、誰も別れの言葉を掛けてくれなかった。

会社は、僕が酒の飲み過ぎでアルコール依存性になり、頭が狂ったとウワサを流していたのだ。

最悪の会社であった。

関係部署を回り、挨拶した。唯一、総務課の仲間が、

「今まで、お疲れ様でした。一緒に飲んだ事を忘れません」

と、言ったので、

「ありがとう。また、いつか飲もう。今日までありがとうございました」

と、お礼を言って自分の課に戻り、クソ係長に最後に挨拶した。

「今日まで、ありがとうございました。大変、ご迷惑をお掛けしました」

そう言うと、

「お前な~、散々迷惑かけやがって……」

僕は馬鹿の話を途中で遮り、机を蹴ってからきびすを返した。

最後に、お世話になった会社のビルに向かってお辞儀した。


それから、いつも仕事終わりに寄っていた、居酒屋に顔を出し、さよならの挨拶をした。

瓶ビールを1本だけ飲んで帰宅した。

家には同棲をしている彼女(嫁さん)が、「お疲れ様~」

と、言って花束を渡してくれた。僕は、涙が出そうになった。

その晩は、回転寿司を2人で食べに行き、大いに酔っ払った。

僕の腕を掴みながら、彼女は自宅まで僕を介護した。

しかし、この会社の悪夢はのちのち14年経っても見る羽目になる。

さて、退職したが来週から、児童福祉施設で働く事になっている。

不安が募る。何故なら、うつ病を隠して働くのだから。

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