とてもかわいいフエルト人形(私)を召喚したからってなめんじゃないわよ!ヨタクなんかに負けないんだから!!
猫3☆works リスッポ
第1話序編
「ここか、此処なんだな」アラタは荒い呼吸をしながらゆっくりと歩み寄った。
この広間にはもう生きている者は俺たち勇者一行だけしかいない。
俺の人生を、ここまで来るのに掛かった年月を、思い出したくも無い記憶を忘れてやる、魔王さえ倒してしまえば新しい人生を進めるんだ、無駄に過ごした青春を取り戻せるんだ。
「解析完了よ、確認、扉と床に罠はないわ」
「広間に入ったら皆の残りの魔力、体力全部アラタに転送するからね!」
「おう!俺に任せろ!」
「扉破壊後にヒールします!」
「・・・」
「よいですか、この扉も魔王本体も通常の剣ならば傷の一つも付くことはありません、されど聖剣ムリョウであれば両断することも可能であります、さあ思い切り行ってくださいね」
聖女の言葉で全員の意識が前に行く。
額の血を手の甲で拭い勇者アラタはそれに手を伸ばした、目の前にあるのは人間には絶対に理解不可能なだからこそとても異様な不気味な気色の悪い彫刻が施された、分厚い骨やどす黒い金属で作られた頑強な扉だ。
大神官に聞いたこの場所は千年前に女神に予言された、世界を滅ぼす悪の魔王が住む城の最深部「魔王の間」の扉の前なのだ。
今こそ国王のために平和のためにこれを破壊しその中にいる邪悪な魔王にとどめを刺して終わらせてやる。
勇者アラタは乱れた呼吸を整えるため大きく息を吸い込むと残りのスキルすべてを伝説の勇者の聖剣に込めた、すべての苦難は今この時のためだ。
疲労によって時折意識が睡魔に持って行かれそうになる、自分も仲間達も立っているのもやっとの状態だが覚悟を決めた、右手で柄を握り直し頭上に大きく聖剣を振りかぶり勢いよく振り下ろした、
「スキル詠唱ブッタギルン!」先ほど倒した緑色の魔族の血で濡れている切っ先が扉に接触した、大きな音とともに閃光が一行を包んだ、いや、それよりも深い闇に飲み込まれたと感じた。
そうだ、一瞬聖剣は輝いたのだ、しかし瞬時に浄化も防御も不可能な漆黒の闇が一行と武器や防具の聖遺物を包み込みそして瞬きする程の短い間に霧散した。
「トラップよ!」叫びが聞こえた・・
闇が晴れると先ほどのその扉には傷どころか何の痕跡もなく、そこには勇者も魔族の屍も血の跡でさえ何も残っておらず魔王城最深部の廊下にはただただ静寂があった。
俺たちは魔王と対峙することさえできなかった。
ここは魔王の居城だ、俺たちはもっと用心深く行動するべきだったのだ。
人間は勇者を見いだし十年の時を掛けて、ここまでレベルを上げ魔族を蹴散らすまでの力を蓄えた。
だが城内に侵入できたのは勇者一行のみ、その他の兵は瘴気と結界に阻まれて立ち入ることも出来なかった。
場内の雑兵の激しい抵抗を激戦の末一掃し魔族最強の4将軍の首を刎ね、焼き、圧殺し、粉砕し殺した
にもかかわらず、よりにもよって最後の最後に魔王の間に突入しようとしたそのとき4つの結界が発動したのだ
4将軍の死がトラップの発動条件だったことに、たとえ気がついても結局対応は不可能だったのだ。
人間の最後の希望である勇者達はここに消滅した。
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