2-2 ♂ スク水って意外とぴっちりしてるんだな ♀

「俺は石、俺は石、俺は石、俺は石……」

 

 更衣室の壁に向かって俺はぶつぶつと呟いていた。

 

 背後からは女子たちのきゃっきゃとした喋り声が聞こえる。

 彼女たちの甘い香りと、プールの消毒用の塩素の匂いが混じって空間に漂っている。俺はその塩素の方だけを吸おうと特殊な呼吸法の開発にいそしんだが無駄に終わった。どうしたって女子の香りを感じてしまう。気配を感じてしまう。それほどまでに空間は濃密だった。


 振り向けばそこに広がるのは――


 プールに入るため着替え途中の、無数のJKたち。


「そんなもの、ドキドキするなっていうのが無理だろうが……!」

 

 頭を抱えて赤裸々な心情を吐露していると、背中から声がかかった。

 

『あれ? みなたちゃん』

「ひゃいっ⁉」喉の変なところから声が出た。

『うずくまって大丈夫?』


 確か隣のクラスの女子だ。プールの授業は4クラスずつ合同で行われる。


『今日のみなたちゃん、いつもと様子が変って噂になってたけど……やっぱり体調悪い……?』

「ダ、ダイジョウブ、デス」今度はロボットみたいに返す。

『なにか手伝えることあったら言ってね――あ』

 

 ぱさり。言葉の途中で俺の頭になにかが落ちてきた。

 手に取ってみる。黒い布だ。

 広げてみる。だ。まだ暖かい。


『あっ、ごめんっ』さっきの女子が言った。『落としちゃった』

「……う、あ……!」

 

 俺は生まれたての小鹿みたいにたどたどしく震えながら、拾ったそれを渡す。

 

『ありがとー』と俺の横に手が伸びてきた。


 まずい。まずすぎる。今俺の手に彼女のブラがあるということは。

 今すこしでも横を振り向けば――

 彼女のありのままの〝女体の神秘おっぱい〟が、見えてしまう。

 

「っ⁉」


 首を不自然に下にさげていると、例のペンダントが視界に入った。心なしか宝石が淡く光っているように見える。それに同調するように中の液体が容積を増していく。

 

(ま、まずい、このままだとずっと早いペースで溜まっちまう……!)


 壁に向かって頭を押しつけるように悩んでいると、

 

「あ、みーくん! じゃなかった――みなたちゃん」

 

 急に声をかけられた。愛音だった。

 どうやら俺のことを見かねて助け船を出してくれたらしい。


「あとは私に任せといてっ」

『そうね、仲良しの白金坂さんなら安心ね』と言ってさっきまでの女子は離れていった。

「あ、愛音……!」


 思わず振り返ろうとしてギリギリのところで踏みとどまった。

 背後には興奮材料でしかない女子高生の凝縮空間が未だ広がっている。


「さ、さんきゅな。助かった」

「ううん。なんだか様子がだったから」

「じ、実は……」


 俺は愛音に耳打ちして、昼休みに龍斗から聞いたことを話した。


「えーっ! じゃあ、みーくんをさせたらいけないってこと?」

 俺は頷いて、首元のペンダントを指先で示す。「実際、もう半分以上溜まっちまってるんだ」

「うーん、分かった。そういうことなら仕方ないね」

「協力してくれるか……?」

 

 まさしく渡りに船だ。プールが合同授業で良かった。

 今の完全アウェイの状況では、愛音という事情をすべてを理解してくれる存在がいるのは最高に心強い。


「もちろん! みーくんに平常心をたもってもらえばいいんだよね? 私に任せといてっ!」

 

 と威勢よく言った瞬間に、彼女の手からはらりと何かが落ちた。

 俺の頭にぽふんと当たる。

 手に取ってみる。白い布だ。

 広げてみる。今度はだった。やっぱり暖かい。


「あっ――ご、ごめん、みーくんっ」

 

 ドキドキはさらに悪化した。


     ♡ ♡ ♡


 なんやかんやありつつも。

 そのあとは愛音の協力のもと、俺はどうにか着替えを終えた。

 準備運動ののち、プールサイドに座って足を水の中につける。


「……ん」

 

 ひやりと心地よい冷たさがある。ゆっくりと動かして水に身体を慣らしていく。

 

 というわけで。

 俺は人生で初の【女子のスク水】を着ている。


「思ったよりも、してて……圧迫感があるな」

 

 生地はぴったりと肌に張りついてる。俺のカラダは小柄な割に、出るところは出ている恵体であるため、特に胸部などはきゅうと圧し潰されて妙な息苦しさがあった。


「さすがにこのカラダにもすこしは見慣れてきたが……それでも、やっぱり、変な気分だ」

 

 水面にはそんな俺の姿が反射して映っていたが……なるべく目にいれないようにして、視線を横に背けた。それが悪手あくしゅだった。

 

『あ……やっと目があった』

 

 自分と同じくスク水姿の同級生女子たちが隣にいた。


「あ……う……」と俺はやっぱり硬直してしまう。

『あはは。なに緊張してるのよ』と肩を触られた。その勢いでぽよよんと俺の胸が揺れる。

 

『う~ん。やっぱりみなたちゃん、おっぱいおっきいねえ』

「ひゃあっ⁉」

 

 たまらず叫んだ。

 いきなり俺は胸を揉みしだくように触られた。


『ふふふ。感度もいいみたいですなあ』と悪戯な声でその彼女は言う。


 ――おい、ちょっと待て! 最近の女子のスキンシップの風紀はここまで乱れてるのか⁉

 

「あ、愛音……!」

 

 助けを求めて愛音の姿を探したが……彼女はレーンの向こう側で、先生の補佐的に他生徒の遊泳タイムの計測をしており、手が離せなさそうだった。

 

『うらやましいなあ』

『どうしたらこんなに大きくなるの?』


 女子たちによる過剰なスキンシップはやまない。


「ちょ、まっ! やめ、て……んっ」

 

 抵抗しようとしてもうまく手足に力が入らず、俺はほとんどなすがままになっていた。

 

『わ……! 今なんだかぞくぞくしちゃった♡』

『そう言われると、余計に触りたくなっちゃうかも?』

『お肌もすべすべ~! ずっと撫でてたいや』

 

「うっ、ひゃあっ⁉ ん、や……っ」

 

 背筋がぞくぞくと震える。体中が熱をもつ。

 心臓は当然――これ以上ないくらいドキドキと鳴っていた。


「だっ、だめだっ……この感覚、また――」


 そして。

 いつかと同じように。


『『……え?』』


 液体はペンダントの中身を満たし。

 どうしようもないくらいの興奮ドキドキの最高点で。


 

「う、ああああああああっ――‼」

  

 

 ピンク色の光が、爆発した。



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みんなの前で淫魔化……⁉

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